テラーノベル
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ドタバタの入学式から一ヶ月。
この大学での生活にも慣れてきて本来なら少しずつ落ち着いてくるはずの時期。
けれど―
ak「はぁ…今日も生き延びた〜」
寮の部屋に入った瞬間明那はそのままベッドに倒れ込んだ。
ru「“生き延びた”は大袈裟すぎでは笑」
ドアを閉めながら淡々と返す。
ak「いやいやいや!大袈裟じゃないって!」
ru「…まぁ俺らからすれば一大事か」
ak「だって今日、ふわっち三回だよ!?三回!!」
勢いよく起き上がる。
ru「偶然とは思えない頻度ですね」
ak「絶対わざとでしょ。あんな行く先々で出会うなんて恋愛漫画か!」
ru「まぁ……それはそうでしょうね」
あっさり認める。
ak「こやもじゃん!ローレンさんいたでしょ!?」
ru「いましたね」
ak「“いましたね”じゃないのよ!」
思わずツッコミが飛ぶ。
ロウは少しだけ視線を逸らした。
ru「……あの人も、おかしいですから」
ぽつりと漏れる。
ak「でしょ!?距離感もバグってるし」
食い気味に乗る明那。
ak「ふわっちさ!?普通に近いしパーソナルスペース無いやん!」
ru「分かる」
ak「なんか自然に隣おるし!気付いたら横おるし!」
ru「分かる」
ak「あとさ顔覗き込んでくるの何!?」
ru「右に同じ」
即答の連続。
一瞬、完璧な共感が成立した。
ak「あの2人本当にやばい。俺らの気持ちも知らずにさー」
ロウは一瞬だけ黙った。
ru「何で俺たちに構うんすかね?まだ明那さんは分かるんすけど」
二人で唸りながらしばらく考えるがピンと来る理由が浮かばない。
ak「遊び道具的な?」
ru「それだったら相当最低ですね笑」
ru「でも実際あの二人はそれも許される立場に居ますから」
ak「だったら尚更捕まらないようにしなきゃ」
ak「ターゲットにされたら絶対逆らえないし、特にこやは、ね?」
心配そうに明那はロウの顔を除き込む。
ak「体調は大丈夫?」
ru「今の所大丈夫そうです。検診も受けていますから」
小柳ロウの第二の性は特異体質だった 。
ランクは一つに定まっておらずその場の状況や関わる人により変化する。また性質もSwitchと常に不安定状態。その為一番自分を理解してくれている明那とクラスも寮も同じにしてもらっていた。
ak「やっぱり俺と居る時は似たような性質になる?」
小柳は頷く。
ru「周りの人に影響されているのは確実かと」
ak「それが分かるだけでだいぶ過ごしやすくなると思うよ」
ru「明那さんには本当に助けて貰ってます」
ak「全然頼ってよ!で、あの二人と会いすぎたらどうなるかだよね…」
正直ロウもそこら辺は未知数で怖い。 明那と常にいる為Sub性のが強くなっている。 ただ一気に強いDom性を浴びると過度なランク変化から暴走を起こす可能性があると言われていた。
ak「本当は受け止めてくれる番がいた方が一番良いんだけど」
ru「そこはお互い様ですよ」
Sub性の欲求は強い。そこが満たされないと体調不良を引き起こしたり酷い時は発情してしまう。二人はその欲求を薬で押さえ込んでいる状況だった。
明那がぽつりと呟く。
ak「あの二人が番ならな……」
ロウがちらりと見る。
ru「それはそう笑」
ru「叶えば悩み全部解決するかもですね」
明那はそれを聞いて小さく笑った。
ak「ま、無理だけどね」
ak「こやはさ、なんでローレンさん好きになったの?」
ベッドに転がりながら明那は天井を見上げ横にいるロウに語りかけた。
ru「……昔」
ぽつりと始まる。
ru「ロレさんはプロゲーマーだったんです 初期からずっとファンしてて」
ru「彼が走りたての時から俺は毎日配信を見てコメントしてその繰り返ししてたんです。そしたら一緒にゲームしませんかって誘ってくれて」
ru「そこから定期的に遊ぶネット友になってました。その頃俺はこの性質(Switch)でいじめられてて家に引きこもりがちで。」
ru「それをある日愚痴で零してしまって。 でも何も否定せず話を聞いてくれたんです、それで……」
愛おしそうにそして少し寂しそうな顔をしていた。
ru「たかが性質で本質は変わらない、
俺は”小柳ロウ”に惹かれたんだよ」って。
そこからは言わずもがな!と微笑みながらこちらに顔を向け今度はこちらに質問した。
ru「明那さんのきっかけは?」
──俺は
ak「ふわっちは幼なじみでずっと一緒に育ってきてさ、いつも俺の隣には彼がいて手を引っ張って導いてくれた。」
ak「もちろんその頃から好きでいつも守ってくれるし俺にとってのヒーローだった」
ak「でもふわっちのランクが決まってから周りに人が集るようになった。今まで当たり前のように居た彼の隣を取られた気がしてさ」
ak「隣に戻ろうとしてもがいた時もあった。でもその度にお前は”釣り合わない”とか “格を下げるから”って言われて自分に自信無くしちゃって笑」
ak「俺は弱いからそこから逃げ出した。そんな弱い俺だからさもうふわっちには見せる顔が無いんだ…」
きっと嫌な過去なのに話してくれた彼の隣にロウは静かに座り肩を抱いた。徐々に鼻声になっていた事は気付かないふりをしておこう。
同じ頃。
Sランク寮。
広い部屋で不破はソファに寝転がっていた。
fw「なぁローレン」
lr「んー?」
fw「なんであいつらあんな逃げるんやろな」
ローレンは少しだけ笑う。
lr「嫌われてるとか?」
fw「それはないやろ」
即答。
lr「そうよな」
軽く頷く。
fw「あの二人距離は取るけどいっつもこっち見てるしな」
lr「そうなんだよ!だからこそ余計に分からねぇー」
fw「ほなさ」
不破がへらっと笑う。
fw「もうちょい距離詰めてもええんちゃう?」
lr「だな」
ローレンも同じように笑った。
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