テラーノベル
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「アナタ、最近何してるの?」
そう問うエレリナに、
「見ての通り旅人じゃ。まぁ、そう言っても昔の様に誰かと組んだりはしていないが…」
「そう、なんか残念だわ。私と組んでた時に最強、
なんて呼ばれたアナタが一人で旅人してるなんて」
「…皆、何時しか別れが来る物なんじゃ。儂に別れは向いていないんじゃ」
遡る事、約五百年前。儂とエレリナはパーティを組み、伝説を築き上げた。
だが其の後、儂は昏睡状態に陥った。恐らく力を使い過ぎたのだろう。
前々から、エレリナには伝えていた。
『儂の身に何かあったとしても、心配せず先に進んでいろ』と。
先に行ったエレリナは此処でカフェを、死ね無かった儂は旅人となった訳だ。
「…提案があるんだけど、アタシともう一回組まない?」
「厭じゃな。儂はもう誰とも組まんと決めておる」
頼みをきっぱりと断り、珈琲椀を持ち珈琲を啜る。
「何故断るのよ?アタシと組むなら別れは来ないわよ?」
「……エレリナ。言ったじゃろう、『儂に別れは向いていない』と。
貴君は腐ってもエルフじゃ。エルフは儂と違って何時しか別れが来るもの。
…詰まりは、そう言う事じゃ」
「…そう、ならいいわ」
漸く折れてくれるか、と思い珈琲腕に手を伸ばした其の時、儂はエレリナに拘束された。
「説得してダメなら、無理矢理連れて行くだけよ」
「………………は???」
ゆらゆらと揺れる桃色の耳飾りの中には、薄水色の朝焼け空が悠々と閉じ込められている。
コツコツ、と乾いたアスファルトに革の長靴が打つかる音が町全体に響く。
曙町の夜明けは美しい、と聞いたが、此れ程迄とは思いもしなかった。
大きすぎる雄大な空。其処に未だ取り残される幾多の星々。追いかけ合う様に執拗に着く太陽と月の共存。実に素晴らしい光景だ。
「なァ、エレリナ」
「なんだい?」
「こんなちんけなトコロに宿なんてある訳なかろう」
「アタシを疑うと言うの?アタシは此の町の住人だよ、アナタと違って」
そう言われても、辺りには驚く程何も無い。木々も、ビルも、将又民家でさえ。其れは地平線すら見える程。だからこそ、空が綺麗に見えるのだろうが。
「………ホラ、着いた。此処が宿だ」
呆れる 儂を他所に、エレリナは手招きする。
衝撃が走った。
こんな綺麗な宿が存在するなんて、夢みたいだ。
…夢の方が、有難いとさえ感じる。
なにしろ___
周りの景色が迚もよく見渡せるのである。
「…此処で野宿しろ、と?」
「仕方無いのよ、此の町に宿は無いの」
丸で端から此処に来て野宿するつもりだった様に天幕をたてるエレリナ。
「巫山戯るのも大概にするんじゃ、儂が潰してやろうか?」
「巫山戯てなんていないわよ。唯、少しだけ開放的なだけ」
いつの間にか完成していた天幕にエレリナが入る。儂もそれに続く。
「旅する、ったって何を目的に旅するんじゃ?」
「それはアナタもじゃない、何を目的に旅してたのよ。
…アタシの目的は、『ヴェレノ・キャラメリア』よ。」
「貴君、若しや彼の…?」
「やめた方がいい、って言いたいのね?……その為にアナタを呼んだのよ」
ニヤニヤと笑うエレリナと絶望する儂。
「儂でさえ、あれには勝てる気がしない」
「気がしなくとも無理矢理にでも勝つじゃ無いの」
そうだ、儂は不老不死。
「……アシェ。明日は新たな仲間を探しに行こう」
「………嗚呼、然し条件がある。必ず…半人外か人外にしてくれ」
「…分かったわ」
コメント
4件
「儂」が好きです推せてください。
ゔぇれの?ってなんだ!!!!!!!!名前が好き!!!!!!!!