テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#現代ダンジョン
夜鐘
997
#学園
大正
5,022
裏五条
19,334
異世界・ヴァルガラ。
農耕と牧畜が盛んであり、澄んだ水と豊かな土壌。
住民の気性も穏やかな住み心地バツグンの土地である。
「ああ! バニングさん!! 今日もモンスター退治ありがとう!」
「なに。趣味でやっているだけだ。気にしないでくれ」
「大きな鳥だねぇ! うちで捌いて、あとでバニングさんとこに持って行くよ!」
「ふむ。そうか。では、お言葉に甘えるとしよう。ああ、店主。私のところに来る前に、住人で必要な量を分けると良い」
「本当にいつもすまないなぁ! バニングさんとこも新しい人が増えたのに、いいのかい!?」
「ふっ。あいつらには骨でもしゃぶらせておけば良い。ゆえに遠慮は不要だ」
アトミルカ2番。
ヴァルガラでは本名のバニング・ミンガイルとして生活している彼は、今日も住民たちと良好な関係を築いていた。
道行く彼を見かけると、多くの人が声をかける。
バニングは嫌な顔をせずそれに応じる。
そして、屋敷に帰って来た彼を3番が出迎えた。
◆◇◆◇◆◇◆◇
3番はバニングに報告する。
「2番様。人造人間の量産体制の目途が立ちました。とある異世界に工場を建造しています。数日で完成するかと」
「そうか。人造人間か……。あまり好意的には受け取れんな」
アトミルカは失っていたシングルナンバーを新しい人員で埋める事に成功。
さらに、Z3番がかつて3番だった頃に計画していた「人造人間プロジェクト」を進行させ始めていた。
3番がかつて使っていた『人造人形』や『複製人形』も、かつてZ3番が研究していた「人造人間プロジェクト」を元に作り出したものであり、その責任者が帰還したため凍結されていた計画は再始動。
アトミルカも最終形態、完成形へと限りなく近づく。
「バニング様」
「ザールか。どうした?」
「こちらが新生アトミルカの序列表です。2番様のご指示通り、この表を全構成員に配布してもよろしいでしょうか」
「……ああ。実に分かりやすい。どこかのバカが寄越して来た『古龍の戦士の秘密に迫る! 10万文字の追跡!!』とか言う報告書の50倍は良い。これで進めて構わん」
翌日には10番が新生アトミルカの陣容を発表するのだが、ここではその顔ぶれを確認してみよう。
◆◇◆◇◆◇◆◇
2番。バニング・ミンガイル。
言うまでもない、アトミルカの大黒柱である。
3番。クリムト・ウェルスラー。
技術開発局の局長であり、今も多くの『圧縮玉』を開発している。
アトミルカの頭脳その1である。
4番。ロブ・ヘムリッツ。
元Z3番である。
3番の師匠であり、アトミルカの黎明期を技術力で支えた研究者。
「番号などわたくしは気にしませんとも!」と言っていたが、「クリムトの下なのだけは少々不愉快ですねぇ」と思っている。
「人造人間プロジェクト」の責任者であり、アトミルカの頭脳その2。
5番。パウロ・オリベイラ。
ウォーロストから脱獄して来た囚人の1人。
ネガティブさはアトミルカでトップクラス。
実力も相当なものであり、専用装備を3番より与えられた今、本気を出せば2番とだっていい勝負ができるだろう。
本人は「5番とか、だいたい上位ナンバーの末席だもんなぁ。多分、最初にやられるんだろうなぁ」と日々呟いており、部下からも信頼より心配を集めている。
6番。姫島幽星。
同じく、ウォーロスト脱獄組の1人。
寡黙な武人であり、ヴァルガラにやって来て傷が癒えてからはずっと鍛錬に没頭している。
驚異的な潜在能力を持っているらしく、2番が直々に鍛錬の相手をする事も。
なお、久坂剣友監察官の報告により「下着泥棒とサドル泥棒の罪でウォーロストに服役していた」と協会本部のデータベースに記録されている。
7番。ギッド・ガードナー。
ウォーロスト脱獄組の1人で、名前が不明だった者である。
スキルは各系統をそつなく使い分ける器用さを持つが、特筆すべきはその経歴。
かつて国際探索員協会所属のSランク探索員として活動しており、作戦行動中、上官に危害を加えた事で収監されていた。
つまり、探索員協会の事情にかなり精通している男である。
8番。バッツ・ホアン・ロイ。
元Z5番である。
筋肉パワータイプを地で行く男。
対木原久光監察官要員として、現在3番と4番の開発した筋力増強剤でナイスバルクをキメている最中である。
「ボンバー」の掛け声で覚えて頂きたい。
9番。チェイス・ブラッシュ。
ウォーロスト脱獄組の1人。彼も名前が不明だった者。
このチェイスは他の脱獄囚に比べると、実力がかなり落ちる。
10番ザール・スプリングの半分程度の煌気総量しか持たない。
が、彼はZ3番とウォーロストにて「人造人間に改造されても構わない」と契約を結んでおり、既に体の8割が機械で構成されている。
最も実力の査定が難しい男である。
これが、新生アトミルカのシングルナンバー。
2番はすぐに全員の情報を覚えたが、3桁以下のナンバーたちからは「誰が誰だか分かんねぇよ!!」と抗議の声が上がったと言う。
そのため新シングルナンバーは当面の間、胸に番号が書かれたバッジを付ける事となった。
幼稚園児かな?
◆◇◆◇◆◇◆◇
「では、私は1番様に報告してくるとしよう」
「はっ! いってらっしゃいませ!!」
2番は10番に「あとから怪鳥の肉が届くはずだから、夕飯はそれを使うように」と言い含めて、ヴァルガラの最奥にある屋敷へと向かった。
強力な結界陣が構築されており、それは2番の力をもってしても突破不可能。
ゆえに、アトミルカのシングルナンバーですらその屋敷に入った事のある者は少ない。
屋敷の周りには常にハナミズキが咲いている事から「ハナミズキ屋敷」と構成員の間では呼ばれている。
「……1番様。バニング・ミンガイル、参りました」
2番が名乗ると、一瞬だけ結界が解かれる。
そのタイミングで侵入できない者に1番は用がないらしい。
「何用か。妾の退屈を埋める報告であろうな?」
「……はっ! アトミルカの軍力がかつてないほどに高まっております!!」
1番と呼ばれた彼女は、十代の少女にしか見えなかった。
だが、その堂々とした態度と2番の敬服はいずれも彼女こそがアトミルカの頭目だと証明しているようにも思われた。
「そうか。そろそろこの人生にも飽いていたところだ」
「ご冗談を。まだ19年しか経っておらぬではありませんか」
「ふふっ。そうであったか。バニング。お前を助けた時は前の姿だったか?」
「いえ。2つ前のお姿でした」
1番は「はぁ」と大きなため息をついた。
「それほどまでに時は流れたか。まったく、この世は生きるに値しない。アトミルカなどと言う組織を戯れに作ってはみたものの、そこに集まるのも俗物ばかり」
「……はっ」
「バニング。そなたは違う。そなたは、妾の退屈をいくらか解消してくれた。そなたと共に組織を作っている間は……そう。幼子の頃にした積み木遊びを思い出したぞ。それなりに愉快だった」
「……恐縮でございます」
少女は玉座に座り直し、「ふぅ」とまた物憂げに息を吐く。
「だが、もう飽いた。ならば、全てを終わらせる頃合いだと思わんか? バニング」
「この身は1番様に救われたものでございます。ならば、ご随意に。このバニング・ミンガイル、最期の時までお供いたします。……アリナ・クロイツェル様」
1番は「今日の夕食はそなたと取りたい」とだけ答える。
2番も「はっ!」と短く答えた。
◆◇◆◇◆◇◆◇
現世の逆神家では。
「うひょー! 莉子の作ったドーナツ美味しいよ! もう、何個でもいけちゃう!!」
「もぉ! 六駆くん、慌てすぎだよぉー!!」
新生アトミルカとか1番とか、そんな事をまったく知らずに、このバカップルは今日も楽しそうであった。
コメント
1件
おお、ついに1番が登場しましたね。少女の外見で「妾」と自称するアリナ・クロイツェル……しかも2番のバニングですら「2つ前のお姿」を知っているという時間の深み。彼女の「もう飽いた」「全てを終わらせる」という物言いが、今後の展開に不穏な影を落としています。個性豊かな新生シングルナンバーの顔触れも楽しいですが、ラストのバカップルとの対比がまた良いアクセントですね。次の展開が気になります!