色鮮やかできらびやかな空間。赤と緑の装飾が多いのは今がクリスマスシーズンだからだ。今日も日和は綾乃と一緒に洸夜の会社の婚活パーティーを手伝いに来ている。たくさんのケーキを前回と同様綺麗に並べると、はなやかな空間効果もプラスされてか、より一層ケーキたちが宝石のように輝いて見える。クリスマスイベントなのでシュトーレンやブッシュ・ド・ノエルなどクリスマスらしいケーキのラインナップにした。
「今日も社長のヤキモチが炸裂しちゃうのかしら~」
洸夜のヤキモチを妬いている姿がみたいらしく綾乃はすでにワクワクしている。
「何言ってんのよ、私達は仕事でここにきてるんだからね?」
「分かってますよ~。なに? 日和はもうパーティーに参加したいって言わない感じ? 運命の王子様に出会えたもんね」
「なっ、ち、違うからっ!」
「はいはい、素直じゃないんだから。もたもたしてるとすんごいセクシーダイナマイト美女が現れて取られちゃうかもよ?」
「そ、そんなことあるわけ無いじゃない」
そう言いながらもそうなってしまたらどうしようと考えてしまった。洸夜はイケメンだ。ちょと現れただけで周りにいる女性は洸夜に釘付けになるほど、男性の艷やかな色気を放っている。「油断禁物!」と綾乃に言われ、確かに油断禁物かもしれない。しれないけれど、洸夜は淫魔……なんだよね? 人間じゃないってこと……だよね? 好きと伝えたい想いもあるけれど、どうしてもあと一歩が踏み出せない。
そんな雑談をしているとあっという間にゾロゾロと会員の人が会場に入ってきた。その中に見覚えのある姿を日和は見つけた。向こうも日和に気づいたのか嬉しそうな満面の笑みで近づいてくる。
「日和さんっ! また日和さんのケーキだって聞いて来ちゃいました」
悠夜が興奮している子犬のようにキラキラした眼差しで並んでいるケーキたちを見つめている。こんなに可愛い子を警戒しろって言うほうが無理がある。
(悠夜さんは本当にケーキが好きなんだなぁ)
「今日も存分に食べていってね」
「ははっ、もう婚活というよりケーキ目当てだよね、僕。なかなかいい出会いもないし」
「人との出会いって簡単そうで難しいのよね」
そうだ、出会いとうのは難しい。だから婚活サイトだってあるし、マッチングアプリなんかも存在する。そんな難しい中で自分をこんなにも強く想ってくれる人……人なのかはハッキリしていないけど、素直に真っ直ぐ愛情表現してくれる人とはもう出会えないかもしれない。
「日和さんはいい人いないの? この前ケーキ屋に来た人とか、もしかしてそう?」
心臓がビクッと飛び跳ねた。悠夜は多分この前見せで鉢合わせた洸夜のことを言っているのだろう。あの日ものすごく洸夜に睨まれていたから。
「いい人……なのかな」
「ふーん。そうなんだ」
パタパタ振っていた尻尾がすぅっと静かに静止したような気がする。
「日和さん、ちょっと来て」
「え? ちょ、ちょっと!」
ギュッと痛いくらいに腕を強引に引かれる。いつもと違う雰囲気の悠夜に反射的に恐怖心が出てきた。
――気をつけろ。
洸夜の言葉が頭をよぎった。あれはただの嫉妬から出た言葉だと思っていたから。
「ちょっと、悠夜さん痛いからっ! 離してっ!」
日和の声に耳を傾けず突き進む悠夜。誰もいない薄暗い空き部屋に連れ込まれた。見覚えのある部屋。この前のイベントの後に洸夜に連れ込まれた場所だ。まさか、と嫌な予感が頭をよぎる。嫌な予感しか考えられない。
「あ、あの悠夜さん? 私そろそろ戻らないといけないから……っつ!」
声にならない驚きに身体が強張り、息が詰まる。日和の背は壁につき悠夜の四肢に行く手を阻まれ身動きが取れない状態に追い込まれた。
「ねぇ」
生暖かくてねっとりとした気味の悪い吐息が耳にかかり更に身体が強張る。
「淫魔とエッチすると凄い気持ちいいでしょう? 淫魔は自由自在に相手を誘惑するフェロモンが出せるからね。ちょっと流し込むだけでこの前の女なんて潮吹いてたよ」
可愛い顔がクスクスと笑いながらえげつないことを言っているこの自体を上手く飲み込めない。
「え……」
今、淫魔って? 聞き間違い?
悠夜は更にクスクスと不気味な笑みで笑う。笑っているけど瞳の奥は氷のように冷たい眼差し。いつものあの子犬のような可愛らしさはどこへ行ってっしまったのだろうか。それとも今目の前にいる悠夜が本当の姿なのだろうか。何がなんだか分からない。分からなすぎて、怖い。
「意味が分からないって顔してる。本当わかりやすいですよね、日和さんはすぐ顔に出る。言っても分からなそうなんで身体で教えてあげますよ。僕とエッチしてみたら分かると思うから、むしろアイツより若い俺の方がイイかもね。今からその綺麗な顔を快楽で歪ませてあげますよ」
足の先から頭のてっぺんまで舐めあげられるように見られゾクゾクと不快感が身体を支配する。
――気持ち悪い。
「な、何を言ってるの? 冗談はやめて、もう戻らないと」
男の人に身動きを封じられている恐怖からか手が、足が、カタカタと小刻みに震える。震える手をギュッと耐えるように拳にした。
「日和さん、冗談で自分が淫魔なことペラペラ人に話すと思う? ちゃーんと僕が淫魔だってことは黙っててくださいね」
本当なんだ。悠夜は洸夜と同じ淫魔なんだ。洸夜のことでさえ淫魔なのか疑っていたのに、二人目の淫魔に出くわしてしまうとなんだか現実味が出てきてしまう。
日和を睨み続ける瞳にさらに鋭利な刃物のような鋭さが加わった。刺されてしまんじゃないかと思うくらい鋭くて怖い。
「まぁ気づかなくて当然だよね。淫魔って言っても殆ど人間と変わらないし、自分から名乗らない限りは気づかなくて当たり前だよ。僕さぁ、どうしてもアイツが気に食わないんだよね」
アイツとは……? もしかして洸夜のことだろうか。
「あ、アイツって……?」
「日和さんの近くにいつもいるじゃん。同じ淫魔なのにアイツばっかり欲しいもの手に入れてズルいじゃないですか。だからアイツの一番大切なもの貰うことにしたんです」
……大切なもの、とは。
「フェロモンは簡単に言えば媚薬のようなもん、たくさん使って脳まで痺れるくらいのセックスしてあげますよ。僕のことが忘れられないくらいにね」
「や、やめてっ! 悠夜さんどうしたの!? っつ――」
両腕を捕み頭の上に抑え込まれた。悠夜は片腕だけで日和の両腕を抑え込んでしまう。普段ニコニコ子犬のように可愛くてもやはり男は男だ。軽々と日和を抑え込む。強く握られた手首が痛い、唇を押し当てられた。
――気持ち悪い。
今まで不感症だった日和はキスも気持いと感じたことはなかったがこんなにも自分の唇に異性の唇が触れることが不快だと思ったのは初めてだ。気持ち悪くて怖くて、洸夜以外の唇が自分に触れている事が嫌、嫌で嫌で、はねのけたいのに成人男性の力には到底叶わない。ただただ悔しくて涙がポロポロと流れ落ちた。洸夜が言っていたように気をつけていれば、でも気をつけていたところでこの力に勝てる気がしない。それでも絶対に唇を開いてたまるかと、必死の抵抗で真一文字にきつく結び悠夜の舌が侵入してくるのを防ぐが悠夜はこじ開けようと舌を伸ばして隙間から入り込もうとしてくる。
「ったく、随分強情なんだね。口の中から流し込むのがてっとり早く気持ちよくなれるんだけど、仕方ないからこっちから気持ちよくなれるように流し込んであげるよ」
「も……もうやめて……」
日和の顔は快楽ではなく恐怖の涙でぐしゃぐしゃだ。悠夜の冷たい手は日和のスキニーパンツのチャックを下ろし脚の間へと滑り込んできた。
日和は泣きながらやめてと何度も泣き叫ぶが聞いてはくれない。濡れてもいない乾ききった秘溝に悠夜の指が這った。
日和はよく知っている。濡れていない膣口に異物が入る痛みを。けれど今は痛みよりも洸夜以外の指が自分に触れていることが嫌で、気持ち悪くて、怖い。
乾いた秘部に容赦なく不快な侵入者が入ってきた。痛みと絶望で身体が悲鳴あげている。
「いたいっ……もう、やめて……」
悠夜はイラッとした表情で指の動きを早める。痛くて気持ち悪くて身体が裂けてしまいそうだ。フェロモンがどうのこうのと言っていたが全くそんなもの感じない。ただただ痛くて、涙が出る。良い人だと思っていたのに、ケーキが好きで素直な良い人だと思っていたのに、こんな……信じられない。
「僕のほうがイイって言えよ! アイツより僕のほうが気持ちいいって!」
ヒステリックに悠夜が大きな声で日和を追い詰める。
(た、助けて……)
どんなに悠夜に触れられようと、日和の頭の中は洸夜でいっぱいだ。
早く、早く助けに来てよ……いつも連絡しなくてもすぐに現れてくれるじゃない――
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