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大正
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裏五条
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とある土曜日の朝。
逆神家では六駆が庭に門を生やしているところだった。
『アトミルカ殲滅作戦』に参加する事になった逆神家三代。
報酬の交渉はまだだが、それに先立って四郎が久坂剣友監察官に相談したらしい。
それでは、回想シーンへご案内。
◆◇◆◇◆◇◆◇
久坂監察官室で新しい装備を作っていた久坂と四郎の戦うじいちゃんコンビ。
話題が次の作戦の事になったため、四郎は思い切って久坂を頼るに事にした。
「大吾の嫁さんが実は異世界人なんですじゃ。ワシは作戦の報酬を放棄しますので、一緒に暮らすご許可をもらえんでしょうか?」
久坂はまず「なんでそがいな事をワシに?」と思い、古い記憶を呼び起こす。
1分半ほどの優秀なタイムで事情を理解した。
「おお! 異世界人との婚姻にゃ、その国の探索員協会の認可がいるんじゃったのぉ! ……ちゅうことは、四郎さん。息子さんは」
「ええ。お恥ずかしい事に、無許可ですじゃ。と言うか、息子は異世界転生の周回の途中で子供を作って戻って来たんですじゃ。今はワシの妻と結界を張った場所で暮らしております」
「ち、ちぃと待ってくださいや!! 異世界転生!? しゅ、周回!?」
久坂剣友、逆神家の崇高な使命(笑)を知る。
この事情を知るのは南雲修一監察官をはじめ、ルベルバック戦争に参加した者のみで、実は協会のトップである五楼京華上級監察官にも報告されていない。
百戦錬磨、酸いも甘いも嚙み分けて来た久坂もさすがに驚きを隠しきれなかった。
「あっ。六駆が言っておるものかと思っておりましたじゃ。これ、あれですかの? ワシ、何かやっちゃいましたかってヤツですかの?」
「い、いやいや、安心してもろうて大丈夫ですけぇ。今じゃ四郎さんはもちろん、六駆の小僧も協会に欠かせん人材。今さらこの程度のルール違反があったところでそこまで大きな問題にゃならんじゃろう」
逆神大吾、欠かされる。
とは言ったものの、久坂は「ワシだけで判断すると後が面倒そうじゃのぉ」と判断し、とりあえず五楼を部屋に呼んだ。
彼女を呼びつけられるのは、協会内でも久坂と南雲の2人のみ。
すぐにやって来た五楼に四郎が事情を話すと。
「あ、あの痴れ者……!! まさか、異世界の人間と結婚していたのか!? そして、四郎殿!? あなた方の一族にそんな秘密が!? にわかには信じられないと言いたいが、もう凄い勢いで色々な点が繋がって線になっている。……そういうことでしたか」
五楼と久坂は六駆の異常なまでの強さの秘密を理解し、納得し、最終的に「ねー」と意図の分からない言葉でお互いに同意を求めた。
「事情は分かりました。痴れ者はともかく、四郎殿の奥様も一緒に別居されておられるのはさぞや寂しいでしょう。逆神も、母親が同居してくれれば常識が身に付くかもしれん。私の名で過去にさかのぼり認可を出しましょう。早速、奥様にお伝えして差し上げると良い」
そんな訳で、逆神家はついに別居を解消する運びとなったのだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇
広島県呉市の海沿い。
人があまり住んでいない過疎地域を選んで、逆神家の別宅はあった。
「うわぁー! 久しぶりに来たなぁ! 30年ぶりかー!!」
「六駆の体感ではそうなるのぉ。ばあちゃんが会いたがっておったぞい」
海風を浴びながら、六駆は昔を懐かしむ。
そんな彼の隣には、胸部と態度が慎ましい女子高生が1人。
「えっと、わたしもついて来ちゃって良かったのかなぁ? 六駆くん、お母さんとおばあちゃんの家族水入らずの方が良かったんじゃない?」
小坂莉子さんである。
「何言ってるのさ! 莉子の事もお袋とばあちゃんに紹介したいんだ! もう電話で話しておいたから、きっと喜ぶよ!!」
「しょ、紹介! 紹介されちゃうの、わたし!? ふ、ふぇぇ! 緊張してきたよぉ! わたしの恰好変じゃない!? ショートパンツで来たの失敗だったかなぁ?」
「平気だよ! いつも通り可愛いよ!」
「も、もぉぉぉ! えへへへへへへ!!!」
◆◇◆◇◆◇◆◇
その頃、協会本部のオペレーター室では。
「五楼上級監察官!! 広島県呉市の沿岸部で信じられない程の煌気が観測されました!! こ、これは、異世界の神獣クラスです!!」
「ど、どうして街中に突然!? ああっ! さらに煌気出力が上がっていきます!!」
「ほ、報告! 暴発すれば呉市が消失する規模です!!」
「緊急避難情報を出しますか!? 上級監察官!!」
莉子さんが嬉しさと一緒に溢れ出させた煌気で、大騒ぎになっていた。
「落ち着け。その件は私が承知している。少し待て。電話を一本、それで済む。……もしもし。ああ、小坂か? とりあえず煌気の放出を止めてくれるか。なに? ショートパンツ? 脚を出し過ぎた? ……ああ、いや、問題なかろう。健康的でむしろ好印象だと思うぞ」
電話の向こうでははしゃぐ莉子さんの声が響く。
「じょ、上級監察官!! 煌気出力、イエローゾーンを突破しました!!」
「よし、分かった。小坂、今度一緒に服を買いに行こう。大人っぽいヤツだ。だから、今は落ち着いてくれ。頼む。呉市がなくなってしまう」
呉市にお住いの皆様、大変ご迷惑をおかけしました。
五楼京華上級監察官の粘り強い交渉のおかげで、脅威は去りました。
◆◇◆◇◆◇◆◇
逆神家の別宅は古い家屋だが、敷地面積はかなり広い。
なんでも、四郎の先代が戦後の復興に寄与した事で、土地の豪商より譲り受けたのだとか。
「こんにちは! お袋! ばあちゃん!! 久しぶり!!」
元気のいい孫の声を聞いて背筋の伸びた婦人が玄関へやって来た。
その様子は矍鑠としており、とても年金を支給されている年には見えない。
「あらぁ! 六駆! 来たんかね! ちぃと見んうちに大きくなったねぇ! 六駆の好きないなり寿司作っちょいたからねぇ! お腹空かせて来たやろねぇ?」
「ばあちゃんの作る料理は何でも美味しいからね! もう朝から水すら飲んでないよ!!」
「嬉しいことを言うてから、六駆もお世辞が言える年になったんじゃねぇ! あっ、そっちのお嬢さんが電話で言うちょった子やね!?」
「は、はい! あの、小坂莉子と申しましゅ! ふぇぇ、申します……」
「そんな緊張せんと! あたしゃ、ただのばあちゃんじゃから! 自分の家と思って、ゆっくりしていきんさいよ!」
「あ、ありがとうございます! 優しそうなおばあちゃんで良かったぁ!!」
逆神みつ子。
四郎の妻であり、逆神アナスタシアの義理の母である。
と言うか、現世の母である。
「ちょっとお父さん! 孫が挨拶してくれちょるのに、肝心の大吾はどこにおるん!? アナちゃん楽しみに待っちょったんよ!」
「大吾はの。なんか用事があるとかでの。遅れるとか言うとったぞい」
みつ子は「仕事が忙しいんかねぇ」と言って、とりあえず六駆と莉子を家に招き入れた。
すぐに氷の入ったカルピスを差し出すのがばあちゃんの流儀である。
「あー! この濃いカルピス飲むと、ばあちゃんの家に来たなって感じがするよ! 懐かしいなぁ! ……ん? あ、親父が来たみたいだよ!」
別宅の駐車場に生やしている門をくぐって、ダメ親父が参上する。
「いやー! 遅れちったわ! もうね、確変が止まんねぇの! 4万も勝っちゃった! 母ちゃん久しぶり! オレのカルピスは?」
「大吾!! このバカ者が! あんたぁ、まーたパチンコ行ったんかね! ヤメろって何回も言うちょるのに! さぁぁぁぁぁっ!! 『餓狼砲』!!!」
「おぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! か、母ちゃん!! 痛い痛い! あだだだだ!!!」
逆神みつ子。
彼女は恐らく日本で最も強いおばあちゃんである。
「ろ、六駆くん? おばあちゃんってスキル使えるの!?」
「えっ!? どこのばあちゃんもスキル使うんじゃないの!?」
逆神家の洗礼を久しぶりに受ける、莉子さんであった。
コメント
1件
おばあちゃんの『餓狼砲』には笑いました!(笑) まさかカルピス出してくれる優しいばあちゃんが、パ♡♡♡の大吾さんにあの技をぶっ放すとは…逆神家の洗礼、莉子さんが受けてるのも可愛かったです。それにしても五楼監察官、莉子さんの煌気を止めるために「今度一緒に服を買いに行こう」って必死すぎて笑いました。呉市を救った英雄ですね。