テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
その後、時刻も遅くなってきたことで自然と帰る雰囲気に。
駅まで歩く道で、他愛もない話をしながら全員が笑顔をみせる。
そのなかで、らんはこさめとみことの変化に気づいていた。
正確なことはわからないが、ふたりともそれぞれ好きな人と進展があったのだろうということは確信していた。
「いやもう…顔付きが違うんだよなぁ…」
ぽつりと呟いて、小さく笑みをもらす。
羨望なんてひと欠片も無いような、純粋な喜び。
自分が幸せであるよりも自分の大好きな友達が幸せでいるほうが嬉しいタイプのらんにとって、これ以上ない朗報だった。
視線を感じたらしいこさめが振り返り、不思議そうに首を傾げてくる。
それに頷いて返せば、なんとなくらんの思いが伝わったのか、声には出さずに「ありがと」と口が動いた。
「じゃあ…こさめたち、こっちだけど…」
いるまとらんだけ方面が違うということで、さみしげな顔をみせるこさめ。
みこともギリギリまでらんの元を離れず、らんにぴったりとくっついている。
ひまなつとすちは何か言いたげな顔をして口を開きかけ、結局首を振った。
代わりに無言でいるまの肩をぽんと叩く。
「さみしいけど。またね!楽しかった!」
らんが明るく声をあげると、みんなが笑顔で手を振る。
いるまも、「じゃ」と軽く手をあげて笑みをみせた。
電車に乗ると、思ったよりも人が少なくすぐに席に座ることができた。
隣同士に腰掛けると、なんとなく無言が続く。
しかしそれは辛い沈黙ではなく、同じ時間と空間を共有する落ち着いた沈黙だった。
二駅過ぎた頃、ぽつりといるまが話しかけた。
「らん、遠いだろ。疲れてたら寝てていいよ」
らんがぱちりと瞬きをした。
隣をみると、いるまもいるまで眠たそうな目をしている。
こっそりくすっと笑いつつ、ふたりのときくらい甘えてみようかと、勇気をだしているまの肩にもたれかかった。
ちょうどいい高さにあるのと、いるまの体温を感じるようで、すぐにうとうとし始めるらん。
それに気づいたいるまは、眠りを邪魔しない程度に肩を抱き寄せた。
らんが電車が揺れてもドアが開いても反応しなくなったのを確認して、いるまは小さくため息をついた。
いるまも、ひまなつとすちが告白したんだろうということには気づいていた。
それが実ったんだろうということにも。
いるまにも焦りがないわけじゃない。
けど、やっぱり関係が悪くなると…と考えるとなかなか踏み出せない自分がいた。
「好きって…言えたらな…」
静かにらんの頬を撫でた。
「ほんとにいいのに…」
らんの最寄り駅に着くと、いるまは送ってく、と一緒に電車を降りた。
らんは申し訳なさで一応遠慮するものの、本心はもう少しだけ一緒にいられることにドキドキしていた。
らんの家までのんびり歩きながら、普段はなかなかないふたりきりの時間を楽しむ。
街が飾られライトアップされているのをみて、「クリスマスらしいね」なんて言っていると、唐突にいるまが立ち止まった。
何があったのかと不思議な顔をするらんを前に、ひとつ息を吸い込むときりっと顔を上げた。
いつもの気だるげな感じはなく、なにか意思がはっきりしている強い瞳。
こんなとこで言うもんじゃないけど、と前置いて、はっきりと告げた。
「らん、好き。」
一度言葉にしたら、今までためらっていたのが嘘みたいに、もう想いは止められなかった。
「うまく言えねーけど。さっき別れたばっかりなのにまたすぐ会いたくなるのとか、話しかけるとき平静装わないとやばいほど緊張するのとか、俺のことだけ考えててほしいって思っちゃうのとか…らんだけなんだよ。 」
らんはどんな顔をしたらいいかわからずに立ち尽くす。
瞳が切なげに揺れるほどにいるまが自分のことをそんなふうに想っていたなんて…知らなかった。
けれど好きな人に好きと言ってもらうのはやっぱり嬉しいような、恥ずかしいような…なんとも言えない気持ちになる。
らんはあとに続く言葉を期待して、まっすぐ目をみつめた。
「好きだ。俺の彼女になってくれますか…?」
いるまもらんの目を見返して、わずかに緊張を含んだ声色で言い切った。
らんの目からひとすじ、涙が零れた。
その言葉を待っていたかのように、ほんとうにうれしそうな笑顔をみせる。
「よろこんで…!」
返事を聞いたいるまは片手で顔を隠し、バッとしゃがみこんだ。
「まじか…//やば、しあわせ… 」
隠しきれていない耳は真っ赤。
その赤さと、いつもなら言わないセリフが気持ちの本気さを物語っている。
らんもそれをわかっていて、余計に心臓が騒ぎ出した。
ようやく立ち上がったいるまはすっかり元通りの表情をして、だけど瞳だけは甘くやさしい光を宿して、ぽんぽんとらんの髪をなでた。
「行くか」
こくんとらんが頷くと、自然に繋がれる手。
一瞬驚いたらんは、すぐに目を輝かせてぎゅっと力をこめた。
見上げると、ふんわりと、らんの大好きな笑顔でほほえむいるまが甘く囁いた。
「かわい。もう俺以外見んなよ」
___Fin.
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!