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あれ、自分、歩いてる。
久しく忘れていた感覚。ああ、自分の足で、歩いてる。こいつと共に。
そっか。そうか、
隣の顔を見れば、やんわり笑った。もう何も話さなくても、いい。話そうとは、ならないのかも。
捨ててきた、何もかもから、逃げてきた。
ここには、自分と、こいつ。2人だけ、2人だけの世界。幸せを、確かに感じていた。
「海だよ。」
「綺麗、だね。」
カメラも置いてきたから、綺麗なその景色を、目に焼き付けた。こいつとの世界での、綺麗な現実。最後の、現実。もう綺麗なのが隣の笑顔なのか海なのか、自分たちの過去なのか、分からない。
ただただ、逃げてきた。ひたすらに。こいつと2人だけで。2人だけの世界に、逃げてきた。篭って、もう出ない。出れない。戻れない。戻りたくない。戻る必要なんてない。
「来れてよかった?」
「ヨーロッパに行くっての、無理じゃんやっぱ。」
「でも幸せ?」
「当たり前。」