赤side
夕日が差し込む部屋の中、ぼーっと外の景色を眺める
赤「もう昼かぁ…..」
ぼそっとつぶやいた一言に、頭の中で、誰かがつぶやいた
?『今かよw』
落ち着いた低い声で、俺にそう言ってくる桃色髪の彼。青い瞳は、サファイアを思わせるように美しい。そんな彼の顔も必然的に整っていて、たまに直視できなくなる。俺は、机に突っ伏したまま、静かに目を閉じた。頬が火照っていたなんて、認めてやるもんか……
桃side
?『もう昼かぁ…..』
授業終わりの放課後、ボソリとつぶやかれた言葉を思い出す。少しズレたことを言いながらも、赤い髪をふわりと揺らし、寂しそうに微笑む、整った顔立ちの彼。赤い髪からは赤い耳、青いズボンからは、尻尾がぴょこんと飛び出ている。寂しげに細められた黄色と紫色のオッドアイが、キラキラと光る。可愛らしいというより、美しく、儚い表情をした赤髪の彼に、笑いながらもこぼした一言
桃「今かよw」
1人の静かな部屋に、俺の乾いた笑い声と、低い声が響く。口元は弧を描いていたが、やがて、静かに消えていく。あの時、君はえへへと笑いながら言った
?『えへへ…..。そうだった…..』
可愛らしく微笑んでいたのに、急に寂しげに瞳をゆらし、儚く、苦い表情をした君から、そっと目をそらした
(俺、何やってんだろ…..)
静かで深いため息が、部屋に溶けて消えていった。そして、心の中で、彼の名を呼んだ
(…..赤…..)
赤『桃くん!』
赤『桃ちゃん!』
明るく笑顔をこぼす君は、いつもいつも、違う呼び方で俺を呼ぶ。そして、いつもいつも違う表情で、俺を呼ぶ。ああ….。やっぱり…..
(….赤が、好きだ…….)
赤の、高く澄んだ声が、鈴を転がすように響く綺麗な笑い声が、毎日毎日、コロコロと変わる可愛い顔が、演技派な赤が、嘘をついた時の、俺しか知らない癖も……
(全部全部、好きなんだ……)
火照った頬は、赤が好きだという事実を、明白にしてくれる。俺は、静かに、その熱が冷めるのを待った
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赤side
医者「あなたは、《*勿忘草症候群*》だと思われます」
白衣をまとった医師が、一言そう言った。《*寝たら記憶がなくなる*》
その症状に、少し、違和感を覚えた俺は、病院へと向かった。自分のこと以外は、全て覚えていない。でも、一人だけ、おぼろげに思い出せる人がいる。桃髪がサラリと揺れ、青い瞳がキラリと光る。彼の声は透き通り、俺の耳に届く。でも、大事な、彼の名前がおもいだせない。ノイズのかかったような音と、霧が広がっていくかのような不快感
(君は、誰なんだ…..?)
疑問が頭を駆け巡る。その際に、ふと、医者のある言葉が、頭をよぎった
医者『この症状にかかった方で
記憶を取り戻した方は、一人もいらっしゃいません』
続く__
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