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「もういい!!!」
そう言って勢いよく家の扉を開いて白い雪が積もる方へと進んでいった。
出ていったのはいいものの、やることがなく歩くスピードが落ちる。
「はぁ…」
ため息とともに空気の一部が白く染まる。
「あ…すみません…」
「いや、こっちこそごめんね」
突然ぶつかったのは5歳ぐらいの男の子だった。
「あ!すみません!」
「いえいえ!こちらの注意不足でもありますし…」
「では…失礼します。」
「ばいばぁ〜い!」
「ばいばい」
いいな
ふとそう思ってしまった。
いつまでだったけ。お母さんとあんなふうに歩いたの
今は12月22日そう、クリスマスの4日前だ。
だから街を歩けばいたるところで笑い声が聞こえる。
ひゅ〜
「さむ…」
口を手で覆って息を吐く。
家に帰ろうと思ったがやっぱりまだ気まずいので公園によることにした。
ストン
「ふぅ」
公園のベンチに座り一息ついた。
冬の公園のベンチなので少しひんやりしていた。
今は真冬なので夏には人がいっぱいいる公園でも猫の気配さえ感じられなかった。
でも、少し一人になりたかった自分にはちょうどよかった。
そろそろ帰ろうかな…。
少し寂しくなった。
この公園は大きいくせに今は誰もいなくて、街からも少し遠い場所にある。
なので、ずっとここにいると広い世界の中で自分一人だけの気がしてきて寂しくなった。
そう思い公園から出ようとベンチから起き上がり進むと茶髪の男とすれ違う。
「あ、こんにちは…」
何でここにきたんだろう?
そう不審に思いながらも一応挨拶をした。
しかし、振り向いた先には木の葉から雪が落ちているだけだった。
見間違いかもしれない。ということにしてその場を去った。
「た、ただいま〜…」
「ん、おかえり。」
「お兄ちゃん…」
「お母さんは?」
「今買い物行ってる。」
「そっか…」
正直ホッとしている。
もしここであったのがお母さんであったと思うと少し怖くなった。
「ま、早く仲直りしろよ」
「….うん」
そう言い残してお兄ちゃんはどこか行ってしまった。
(部屋に行こ…)
そう思って部屋のドアを開けた。
ガチャ
「はぁ…」
「疲れた」
ポフッ
そう言って目の前のベッドに飛び込む。
今日は色々あったな…
それにしてもあの茶髪の人、なんでいなくなったんだろ。見間違いだったのかな。
色々考えていたら眠くなってきた…。
ガチャ
「!?」
あれ…寝てた?
「おかーさん、おかえりー」
あ、お母さん…
…
ガチャ
怖い。
お母さん起こると怖いからな。
怒られるかな。
トン トン トン
一歩ずつ着実に階段を降りていく。
「あ、おかえり。」
「…ん」
…
やっぱり怒ってる?
「あ、今日の晩ごはんカレーだからね。」
「あ、うん…」
びっくりした。
カレーか…久しぶりだな…
そんな事を考えていると電話がなった。
プルルルルルル
ガチャ
「はぁーい」
電話に出たのはお兄ちゃんだった。
「うん」
「分かった。」
ガチャ
「誰だった?」
お母さんがお兄ちゃんに聞く。
「お父さん」
「今日、早めに帰れるってさ。」
「そう…」
お母さんはそっけなく返事をしたつもりかもしれないが
お母さんの口角が少し上がったのは見逃さなかった。
「あ、食器洗うね。」
「うん」
ガチャ ガチャ
「よし。」
「ご飯できたよー」
「はーい」
そう言って食卓を囲む。
いつも空いているお父さんの席も今日は埋まっている。
『いただきまーす』
そう言って一斉にカレーを食べ始める。
いつもと変わらない味なのに今日は少し美味しく感じた。
でも、一つ気がかりなことがある。
お母さんのことだ。
まだ謝れてないし、そもそもまだ怒っているのかすらもわからない。
「あ、えっと、お母さん。」
「なに?」
「その、今日…」
「ごめんなさい」
「あぁ、あの事?」
ビクッ
「別にもう気にしてないよ」
「私も悪かったと思ってるし。」
「?今日何かあったのか?」
何も事情を知らないお父さんは不思議そうに聞いてくる。
「んーまぁ、そんな大したことではないんだけどね」
「ふぅーん」
「なら、いいけど」
「仲直りできてよかったな」
「うん」
よかった。
怒ってないっぽい…
「あ、そういえば、クリスマスツリーそろそろ立てないとね。」
「確かにお兄ちゃんナイス」
「このままだったらクリスマスツリー立て忘れちゃうところだったね」
家族の間に笑いが起きる。
久しぶりだなこの感覚。
最近はお父さん夜遅くに帰ってきてたし、会社に行くのも早かったから、こうやってまともに話したのも久しぶりだ。
やっぱり家族っていいな。
どこか胸の奥が熱くなってきた。
あれ…?カレーってこんなに熱かったっけ…