テラーノベル
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帝都で最も美しい令嬢は誰か。
そう尋ねれば、十人中九人が同じ名前を口にする。
――リリア・エヴァンス。
淡いピンクブロンドの長い髪。
光を受けるたび、花びらのように柔らかく輝く。
透き通るような白い肌に、宝石のようなローズピンクの瞳。
そして、誰に向けても優しく微笑むその姿。
社交界では、彼女をこう呼ぶ。
**「帝都の天使」**と。
「リリア様、本当にお美しい……」
「まあ、ありがとうございます」
リリアは頬に手を添え、恥ずかしそうに微笑んだ。
完璧な令嬢の笑顔。
その裏では。
(今日もよく褒めるわね、この人)
(昨日は私のことを『地味な伯爵令嬢』って言っていたくせに)
(まあ、今は笑っておきましょう。人間関係なんて、利用できるうちは利用したほうが得だもの)
にこにこ。
「リリア様?」
「はい?」
「何か嬉しいことでも?」
「ふふ。皆様とお話しできることが嬉しくて」
(あなたたちが勝手に情報を喋ってくれることも嬉しいわ)
「まあ……!」
令嬢たちは一斉に頬を緩める。
――今日も完璧。
これが、現在のリリア・エヴァンスだった。
けれど。
彼女は昔からこんな性格だったわけではない。
むしろ、昔の彼女は正反対だった。
困っている人がいれば、迷わず手を差し伸べる。
騙されても人を疑わない。
誰かに褒められれば、その言葉を素直に信じる。
そんな少女だった。
だが、ある出来事が彼女を変えた。
両親が、ある貴族に騙されたのだ。
家の発展のためにと持ちかけられた投資話。
両親は人を疑うことができず、言われるままに財産を差し出した。
結果――エヴァンス家は莫大な借金を抱えた。
そして母は、その騒動の後に病を患い、この世を去った。
まだ幼かったリリアは、その時初めて知った。
優しいだけでは、大切なものを守れない。
だから、笑顔を覚えた。
人の言葉の裏を読むことを覚えた。
自分が弱いなら、頭を使えばいい。
利用される前に、利用すればいい。
そうして彼女は、「天使の仮面」を被るようになった。
「リリア」
背後から父の声がした。
「お父様?」
振り返った瞬間、父の顔色が目に入る。
いつもより青い。
「どうされたのです?」
「……皇宮から、使者が来た」
「皇宮?」
リリアの笑顔がわずかに固まった。
父は震える手で、一枚の封書を差し出した。
王家の紋章。
それを見た瞬間。
リリアは直感した。
(……嫌な予感しかしない)
封を切る。
そこに書かれていた一文を見て――
彼女は絶句した。
『第一皇太子カイル・アステリア殿下との婚約について、皇宮にて話し合いたい』
「…………」
沈黙。
そして。
(いやいやいやいや)
(なんで私!?)
天使の笑顔が崩れそうになる。
(皇太子って、あの『冷酷皇太子』!?)
(無理。絶対無理)
(でも……)
リリアは手紙をもう一度見る。
(王太子妃になれば……)
脳裏に浮かぶのは、借金に苦しむ父親。
没落の危機にあるエヴァンス家。
そして。
(……家を、救える)
リリアは静かに微笑んだ。
「お父様」
「……なんだ?」
「皇宮へ参りましょう」
「リリア……?」
「私、王太子殿下の婚約者になってみせます」
父が目を丸くする。
その娘の心の中では――
(皇太子妃という地位があれば、誰もお父様を騙せない)
(借金も整理できる)
(家も守れる)
(……よし。絶対に逃がさないわ)
こうして。
帝国で最も美しい「天使」は、皇太子の前に姿を現すことになった。
――そして彼女は、まだ知らない。
その皇太子が。
幼い頃、自分が助けた少年だということを。
⸻
#恋愛・ロマンス
mia
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#下手注意
꒰ঌ天猫໒꒱
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32
#この物語はフィクションです
音色*【限界ヲタク】低浮
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コメント
1件
あ、このお話めっちゃ好みかも……! リリア、表向きは完璧な天使なのに、心の中ではクールに計算してるっていう二面性がたまらない。 「優しいだけじゃ守れない」って過去があって、仮面を被るようになったっていう背景も刺さる。 そしてラストの皇太子=昔助けた少年フラグ、これからの展開が気になりすぎる…! 続き、絶対読みます🥀