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びゃ
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どうやら俺は死んだようだ。
そこそこの大学へ行って、働いて、彼女だって居た。
ごく普通で平凡な人生。
死んだところで後悔は特になかった。
目覚めたら真っ白な空間に1人。
「あぁ、ここが天国ってやつなのか?」
すると、顔を覆い隠した、到底人間には見えない長身の女性らしき人物が現れた。
『ようこそ!天国へ!ここでは、生前の善い行いの量や度合いによって獲得したポイントが変わります!』
『そしてそのポイントで来世に生まれ変わる生命体と交換することができます!』
『植物や虫などから聖人やメガロドンなど、必要なポイントはそれぞれ異なりますが様々な種類がございます!』
『…おや、あなたは少し少ないようですね。でも大丈夫!この天国で働いたり善いことをしたりするとポイントが貰えます!そして、ポイントの譲渡も可能です!』
『では、よい天国ライフを!』
そう言い残して長身の女は消え、俺は眩い光に包まれて思わず目を瞑った。
そして再び目を開けると、まるで現代の東京のように人で溢れかえっていた。
幼い子供や女子高生。鳥や蝶。
一見すると植物も沢山あって綺麗な場所に見える。
しかし、ここにいる者が全員死者だと考えると、なんだかゾッとする。
しばらく街を適当に歩いてみた。
ポイントに関する広告や、働いている人々。
こうしてみると現世とさほど変わらない気がする。
ただ1つ違いがあるのならば、この場所ではお腹が空かないし、痛みもない。
俺は人間の姿をしているが、全部が全部人間のままってわけじゃないただの魂らしい。
まぁ天国だから当たり前っちゃ当たり前か。
「ん〜、来世かぁ、やっぱ人間がいいよなぁ…。働かないだな〜」
俺の現在の所持ポイントは230ポイント。
対して、来世で人間になるために使うポイントが7000ポイント。
全然足りない。
えぇ…
途方に暮れながら歩いていると、自分よりも少し年上な男性が声をかけてきた。
『おーい、君、最近来たやつか?』
「え、あ、はい?」
『じゃあ行く当てもないだろ。俺のところで働かないか?』
男は感じのいい笑顔でニカッと笑っていた。何となくだがいい人のような気がする。
結局俺はその人についていくことにした。
――
そして向かっている間に色々教えてもらった。
男はハルという名前だということ。
ポイントは現世で言う所の通貨とほぼ同じ役割をしているということ。
そして、この天国のこと。
この天国には終わりがなくて、どこまでも続いているらしい。
『知っての通り、ここではお腹が空かない。だが、味覚はちゃんとある。みんな働いてばっかじゃ疲れちまうんだ!だから、食べることを娯楽にする!俺の店はここらじゃ人気なラーメン屋なんだぜ?』
『わかったな?じゃあお前さんにはしっかり働いてもらうから覚悟しろよ〜!』
…そこからはのらりくらり日々を過ごした。
流石は天国!
景色も綺麗だし、空気も澄んでる!
まぁ、まさか働くとは思ってなかったけどね…笑
ある日、ハルに買い出しを頼まれた。
いつもは道に迷わないのに、今日はなぜか迷ってしまい、知らない路地に着いてしまった。
「あれ、ここどこ…?」
なにかヤバい予感がした。
でも進むしかない。
…薄暗い路地で見た景色は、目を覆いたくなるような光景ばかりだった。
恐喝。
賭博。
麻薬。
廃人。
売春。
物乞い。
下卑た笑い声に轟く悲鳴。
なんだ、何なんだここは。
俺は、とにかく走った。
だが足を掴まれた。
「っ…なんだよっ!!」
強い勢いで蹴飛ばそうとするが、なかなか足が離れない。老人が俺の足を掴んでいる。
『なぁ…お兄さんや、ちょっとでいいんだ…
ちょっとでいいからポイントをくれんかのぉ…。』
まるで今すぐにも死にそうな声だった。
だがあいにく、死後の世界である天国に寿命という概念はない。
老衰で死んだ老人に働くのは厳しかろう。
死んで天国に来ても、生まれ変われるだけのポイントがなければ、まるで死に続けているただの死体のようだ。
ゾッとした。
これが天国??ふざけんな。
こんなの、こんなの…!
「こんなの、あの醜い現世と何が変わるっていうんだよ!!」
俺は、無我夢中で振りほどこうとした。
他人のために俺が痛い目を見るなんて生きていても死んでいてもごめんだ。
だが、何本もの醜い手が俺に忍び寄り、闇に呑まれそうになる。
その時、人影が見えた。ハルだった。
『あー、こんなところにいたのか。』
ハルは、老人たちを蹴り飛ばして俺を助けた。
いつも笑っているハルの表情が、この瞬間だけひどく苦しく見えた。
「ハル、ここは天国じゃないのか…?」
天国とは何なのか。俺はその答えを知らない。
『ここが天国だ。名目上はな。』
「そんなのおかしい!天国ってのはみんなが幸せで、温かくて、希望に満ちた世界のことだろ…?」
『…駄目なんだ。生物ってのは死んでようが生きてようが自分の欲望にまっすぐだ。ただ、みんな自分の為だけに生活している。たとえ天国だとしても。』
――『本物の天国はどこにもないんだよ。』
その最後の一言が静かに地面に落ちた。
コメント
1件
うわっ、この話めっちゃ重いし深い…!「天国」って聞いてどんな理想郷かと思いきや、ポイント制で格差があって、現世と変わらない闇があるの、想像以上にシビアやった😭💦 特に老人が「ポイントくれ」ってすがりつくシーンと、ハルの「本物の天国はどこにもない」って台詞、胸にグサッときた…。死んでも救われない世界観、すごく考えさせられるよ。続きが気になる…!✨