御伽話の散った夢
主人公……綾瀬 彗♂︎
小さい頃液晶の前で見ていた映像
それは全てがキラキラしている御伽話だった
姫様がいて王子様がいて,可愛いお菓子や綺麗なドレス,格好いい剣もあった
みんなが幸せそうで笑顔で……
でもそこには魔物っていう邪悪なみんなの幸せを壊すものもいた
だけどそれは王子様が退治して結局はみんながまた笑顔になっていた
僕はその王子様が好きだった
……小さい頃は現実と夢の区別すらつかないほど純粋で綺麗な心だった僕はその御伽話の王子様になれると思っていた
だけど僕はもう15歳…高校一年生まであと少し
すっかり純粋な心なんて持っていない
そんな僕の夢はもうとっくに消えた
何故消えてしまったのか……
それは小学二年生の頃
自分の夢を発表する時間だった
前の人の発表に拍手し終わると僕は胸いっぱいに希望を持ちながら語った
「ぼくの夢は王子様になることです!」
「みんなのことを幸せにできるようなかっこよくて強い王子様になりたいです!」
僕はこの後も語った
語り終えた後,みんなからは暖かい拍手が貰えると思っていた
だが,貰えたのは批判ばかりだった
「ばっかじゃねーのー?」
「ぷぷっ…王子様なんてほんとーはいないんだよー??」
「変な夢ー」
「おもしろくねーなー」
そんな子供たちの言葉が僕には何度も突き刺さった
僕はもう泣き出してしまいたかった
夢を馬鹿にされた怒り,王子様が本当は存在しなかったという悲しみ,みんなから責め立てられる恥ずかしさ,
…色々な感情が混ざって苦しくなってしまった
だけど僕はなんとか涙を堪えて席に座った
そうしたら必然とその批判は終わると思っていたからだ
だけど現実はそんなに甘くなかった
一度普通の人間が集団で異端な部分を見つけ出されてしまってはそこから普通ではなくなる
そんなことがあり、僕は小学四年生まで虐めまでもはいかないが色々なことをさせらていた
王子様になるための修行だと嘲笑いながら
掃除や当番,宿題まで偶にさせられた
何せ小さな学校だったので王子様になりたい人がいる,という噂は発表から一週間ほどで広まった
僕は上級生や下級生からも偶に小馬鹿にされていた
辛かった,屈辱だった
けれど五年生の夏に僕は少し変わった
クラスが複式学級になり,転校生が来たのだ
名前は冴姫 湊
明るく元気な短髪で自信満々な女の子だった
彼女は一つ先輩の六年生だった……
コメント
2件
『 綾瀬 彗 』くんめっちゃ名前好きすぎるよ . . . ねぇホント書くのうまくなったよね ! 💝 尊敬だよ 🫶💓