コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「・・・お前のようなヤツは、刑務所に入るべきだ!鬼龍院!」
「兄貴!」
直哉が驚いてチラシを落とし北斗に走り寄った
喉を締められている鬼龍院は顔を真っ赤にして、北斗を押しのけようとした
「はっ・・放せ!成宮!なんのつもりだ」
「北斗ったら!まずいよ!」
止めに入った正勝の声も虚しく、北斗の耳の奥では怒りの血液が脈打ち、鬼龍院の声も正勝の声も聞こえなかった
ギリッ・・・・「彼女を侮辱することは許さんっ!」
北斗は鬼龍院に顔を近づけいっそう怒りが募った
この梅毒ヤロウの顔を殴りたくて仕方がないが、紙一重の理性で思いとどまり、鬼龍院の喉元を締め上げる手に力を込めた
「て・・・手を放せ・・っさもないと暴行罪で訴えるぞ! 」
鬼龍院の最後の言葉が裏返る
「訴えてみろよ!こっちだってお前の悪事の証拠は山ほど、揃えられるんだ!兄貴!とにかくやめろっ!」
すかさず直哉が二人の間に割って入った
「やめろって兄貴!」
その時北斗は二人の周囲に人だかりが、でき始めているいることにハッとした
北斗は鬼龍院のジャケットから手を放したが、体は放さなかった
「彼女の話をする時は言葉に気を付けろ・・・・俺に殺されたくなければな、口を開く前によく考えるんだ」
ゼイ・・ゼイ・・「ふん・・・・偉そうに・・」
あたりでヒソヒソと囁き声がし、何事だと野次馬達が集まって来た
白いワゴンに乗っている、学生ボランティア達が車の中から、子猫のようなウルウルした目でこちらを見ている
そして駅員も慌てて二人の所へ寄って来た
「どうしましたか?何か問題でもありましたか?候補者のお二人?」
鬼龍院の鼻の穴が広がり汗ばんだ顔が赤くなった
「私は演説の為にここにいる正当な理由があります、問題など起こしていません、そっちが私に暴行したんだ!」
「北斗!とりあえず他の場所を探そう!」
「なんで探さなきゃいけないんだ?」
頭に血が登りまくっている北斗が、鬼龍院を殺す勢いでまだ睨んでいる
「1ブロック区の歩道に行こう!昨日あそこは反応が良かった!」
必死で正勝が北斗の肩を抱いて、無理やりくるりと向きを変えて、自分達の選挙カーに引っ張って行った
なんとか場は丸く収まったものの、北斗の頭の中はまだ怒りでカッカッしていた
そのせいで北斗の体からは汗が吹き出し、眩暈までしてきたが、しっかり気持ちを引き締めてワゴン車に乗り込み、学生ボランティアの子達に謝罪した
直哉もあれほど怒りをあらわにした兄は、ずいぶん久しぶりに見たので、動揺しながら落としたチラシを慌てて広い集め、すぐさま自分の車でワゴン車の後に続いた
レコーダーを片手に近くに立っている記者の一人が、嬉しそうに目を輝かせていることにも気づかずに
「おかえりなさい!あなた 」
北斗は玄関のドアを開けた瞬間に、可愛い妻が出迎えてくれたことに、胸が締め付けられた
なのでついさっきまで頭に血が登っていた原因の、鬼龍院との対決がどこかへ消し飛んでしまった
彼女は新しいとても可愛い花柄のキャミソールとショートパンツ・・・そしてその上に同じ柄のガウンを羽織っていた、まるでプリンセスがお城でくつろいでいるようなカッコだ
「お疲れでしょう?母屋にご飯食べに行ってもいいけど、今夜はくつろいでほしかったから、ここに運んだの二人でゆっくり食べようと思って」
「あ・・ああ・・・ 」
北斗は深い息をもらし、一日中履いていた窮屈な革靴を脱いだ
「お風呂湧いてますよ 」
疲れた北斗に優しい気遣いを見せるアリスを眺めていると、途端に心に穏やかな風が吹いて、気持ちが楽になる
こんな優しい善のα波が出ている人間相手に、いつまでもピリピリしていられない
アリスを見つめているとみぞおちで、不思議な優しさがうごめく
恋人など探していなかった、誰かを求めてなどいなかった
けれど彼女を見つけてしまった
なぜ彼女がこれほど早く大きな存在になったのだろう、彼女は北斗の人生でなくてはならない存在だ
アリスに勧められるまま脱衣場で、ポイポイと一気に忌々しいワイシャツも、スラックスも剥ぎ取るように脱ぎ捨てて
良い匂いのする泡風呂を眺めた、ザブンッと北斗は湯船に飛び込んだ
ああ・・・なんて気持ちがいいんだ
炭酸泡ガスのぬくもりが、凝った筋肉をほぐしていく
選挙が始まってから今までの肉体労働とは、違う疲れがある
北斗は肺一杯に良い香りのする、バスボムの匂いを吸い込んだ、その時ガチャっといきなり風呂のドアが開いた
「お背中お流しますわ、成宮候補(はぁと) 」
そう言って髪をクリップでアップに止めたアリスが、タオルで体の前を隠して全裸で入って来た
いったい自分は前世でどんな善行をしたのだろう、北斗の心臓は終始ドキドキしっぱなしで、思わず顔がニヤつく
向かい合わせに北斗の脚の間にちょこんとおさまり、アリスが手でお湯をすくって、肩にかけてくれている
「・・・その頭、ずいぶん思い切って切ったんだな・・・」
北斗が耳のアリスのおくれ毛に、人差し指を絡ませて言う
クスクス・・・「まぁ北斗さん・・・頭は切ってないわ、切ったのは髪の毛よ・・・・このヘアスタイルを話題にしてくれるのに、3日もかかったわ」
「そうだった?」
北斗は顔を両手でバシャッと洗って言った
「そうよ!アキ君なんかヘアサロンから帰ってすぐ、かわいい、かわいいって言ってくれたんだから、ナオ君だってとても似合うって褒めてくれたのよ」
なのにあなたは何も言ってくれないのねと、アリスがめっと睨んで言う
「お・・・俺だって気づいてたよ!でも・・何て言っていいか分からなかったんだ」
慌てて北斗がうろたえて言った
「あら?どうして?」
「き・・・君があんまり素敵だから」
アリスは大いに照れて、ほんの一瞬しか目を合わさず、ダラダラと汗をかいて頬を染めている北斗にキュンキュンした
「う~ん・・・・今のはぐっときたわ、よろしい!背中だけと思ったけど、頭も洗ってあげましょう! 」
「うわぁっっ!」
途端にアリスに桶でザブンと頭にお湯をかけられて、北斗の声はひっくりかえって大笑いをした
アリスのシャンプーの手つきは意外と力強く、10本の指でぐいぐい頭皮を揉んでくれる、う~ん・・・とても気持ちがいい
「馬を洗うみたいだわ!北斗さんが寝たきりとかになったら、絶対大変!」
「湯船に浸かりながらか?アメリカンスタイルだな 」
そう言いながらブラシで北斗の体を、ゴシゴシ洗ってくれる、北斗はバスタブの淵に両腕をかけて、アリスにされるがままになりながら鼻歌を歌った
まるでアラブで何人もの召使にかしづかれる、国王スルタンになった気分だった
アラブの王北斗はすっかりガチガチになった、自分のモノを彼女の柔らかい尻に擦りつけた
「ここは?洗ってくれないのかい?にゃんこちゃん?」
「そこは自分で洗ってください」
「え~~にゃんこちゃ~ん(泣)」
「そんな悲しい声を出してもダメです。ごはんの用意して待ってるね」
彼女はウィンクして無情にも去って行った、大いに期待していたのに北斗はガッカリした
でもまだまだお楽しみはこれからだ