テラーノベル
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瀬名 紫陽花
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☆最終話☆
いつまで経っても素直に開いてくれるゴミ箱は見つからなかった。
人がいなさそうな家にも全て、重そうな鉄扉に鍵がかかっている。
昼間に騒ぎを起こすわけにはいかない。しかも昨日と違って住宅街だ。
彼は食べ物のために歩く。
乾いた。水、水が飲みたい。
腹が減った。食べ物、食べ物が欲しい。
ただ足りない物を埋めるために、歩く。
やがて彼はたどり着く。
諦めを含んだ眼差しで彼は前を見る。
「…!」
そこはただの道であった。だが、彼にとっては誰よりもよく知っている道だった。
そこは彼の家に続く道であった。かつて由喜と過ごし、笑い声に満ちた家に続く、道だった。
彼はたまらなくなった。由喜を抱きしめたくなった。
彼は走る。もう気力も尽きて棒の様にそこに立っているだけの脚を、彼は必死で動かす。
もうすこし。あともうすこしなんだ。
もうすこしだけでも、由喜と一緒に。
やがて彼は家を目にかける。懐かしい、あの家。
会いたい。帰りたい。家に。
その時、彼は身体に何かが刺さったような感覚を覚える。
なんだこれは。身体が動かない。
立て続けに、彼の目の前を何かが超速で掠める。
考える間も無く、彼は確信した。
俺は撃たれている、と。
それからどうしようと考える間も無く、1発のライフル弾が彼の頭を無慈悲に抉った。
経験したことのないような鈍い痛みが走る。
耐えられなくなり、その場に倒れる。
彼はどうしようもない感情をあてもなく虚空にぶつける。
彼はひとつのことに気がついた。
もう彼は大地ではない、ただの人喰い熊になってしまった。
彼は余計由喜が恋しくなり、身体を起き上げようとする。
グアァ、とうなり声を出した瞬間、左から弾が彼の頭を貫通した。
彼はそのまま倒れ、自分の血に溺れ、うなり声さえ発することはできず、血がぶくぶくと泡立つ。
あぁ、くそ。
(結局、人間も熊も同じかよ…)
消えかけの炎のように不安定だった眼の輝きもやがて消えていった。
************
☆あとがき☆
こんにちはらいすぼーるです!
「熊」どうだったでしょうか?
まず今までの私の作品を読んでくれている方でしたら…
んん???作風変わりすぎでは?????
え、こいつ今百合物語書いてるよな??????
と思ったのではないでしょうか。
書いたきっかけですが、熊の被害についてのニュースを見た時、この物語のインスピレーションが沸きました。
ですが書いてみたら物語性を上げすぎて、現実性が失われてしまいました。多分どこかしらおかしいと思います。
ちなみに私は熊の駆除には賛成です。怖いので。でも後先考えずにやらないで欲しいとは思います。
ここまで読んでいただきありがとうございます。ぜひ楽しんでいただけたのなら幸いです。
現在更新中の「わたしのせんぱい」もぜひ読んでみて!!!!
それではまた!!
追記
今気づいたんだけど、プロローグ書いたのにエピローグ書いてない!
まあ書きようないので仕方なし。
コメント
1件
読み終わりました……。重かったです。 「人間も熊も同じかよ」って言葉が、すごく刺さりました。人じゃなくなっても、それでも由喜に会いたくて、ただ必死に歩いてたんだなって。最後、自分の家の前で撃たれるっていうのがあまりにも切なくて。ライスボールさんの描く「喪失」の描き方、本当に胸が締め付けられます……。 あとがきで「作風変わりすぎ」って言ってましたけど、こういうダークな話もすごく好きです。読ませてくれてありがとうございます…!