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そう思っている時だった。
先生のその一言で、みんなはざわめいた。
「は〜い、今日は転校生を紹介します!」
「え〜、男の子かな〜?」
「イケメン希望(笑)」
「いや、美少女だろ〜?」
私はその姿を見ながら心の中で毒づいた。
どうせ自分には関係ないのだ。
なのにーーーーーー
「入ってきていいよ〜!」
私は目を見開いた。
そこには、世界で一番大っ嫌いな、君がいたんだから。
教室のざわめきが散る。
目つきは少し鋭くてメガネをしている。背も高い方だろう。
そんな、どこにでもいそうな少年を見たクラスメイトは少し残念そうな顔をしていた。
みんなは、あーあ、と言わんばかりのため息をついているけれど、私はむしろ息を吸い込んでいた。
まさか、君がまた私の前に現れるなんて、思ってもいなかった。
最悪な悪夢だ。
彼は口を開いてこう言った。
「千堂 玲です。特技は特にないです。静かにするのが好きなんで、話しかけないでください。」
みんながまた息を呑むのがわかった。
私も驚いた。
自己紹介で話しかけないでという馬鹿がどこにいるだろうか。
ああ、でも、私の自己紹介の方がひどかっただろうか?
「さ、さ、桜、なーのは、でーすー。よー、よよ、よろーしーく」と言った私はみんなに笑われたが彼の自己紹介は誰一人笑っていない。どっちもどっちかもしれないが。
彼の自己紹介に顔をひきつらせながら、小川先生は席へ席を伝えて、
「みんな、千堂くんと仲良くしてねー!」という絶対無理なお願いをしてから、「では解散ー!」と元気よく解散を告げた。
「ねえー、千堂くんってどこ住んでんのー?」
話しかけるな、と言った少年にも一応話しかける奴っているんだな、と思って目を向ける。
話しかけた勇者は、夏影 ひなた。
どこが影なのかわからないくらいの陽キャだ。
それのいつメンが3人。
春川 みずき。
秋月 翔太。
冬月 樹。
春夏秋冬のあの4人組は、いつだって最低で大っ嫌いだ。
嫌いな人には容赦ないから。
「…………………」
そんな人たちに、玲は歯向かって、黙っていた。
歯向かっていた、は違うだろうか。
周りが見えていない、もちょっと違う。
わざと、見ないようにしている気がする。
そして、そんな少年の背中はすごく怯えているみたいな、自分を必死に守っている背中だった。
でも、実際、春夏秋冬には関係ないわけで、
「なんで黙ってんのー?ひなた悲しいんだけどー」
「ひなたちゃんが泣いちゃうよー?いいのー?」
「ひなた泣いてもこいつ困んないんじゃねー?」
「ひなたが後々困るだけだな。」
「えー、ひなたもう泣きそうなんだけどー!!」
と、喚いている。
そんなときだった。
「ひなた、ひなた、ってうるさい。
僕は静かにしていたいんだよ。
黙っててよ、君たちには僕を構う権利はないでしょ。」
そう、彼がひどく無感情な声でそう言った。
シーンとした空気が流れる。
でもそれはひなたの「チッ」という舌打ちを合図に攻撃が始まって、途切れることとなった。
「はー?なんで話しかけてもらえたのにそんなこと言うわけー?」
「意味わかんねー」
「調子乗んなよ」
それだけならまだ良かった。
ひなたがこう言ったのだ。
「なのはみたいにされたいのー?」
その言葉は、黙ってた人が話題に入れるきっかけだったらしい。
「あはは、確かに。」
「あ、ああ、ああーのとか言って話しかけにくるかなー?」
「ヒーロー気取りで?(笑)」
「ひひひ、ひーろろ、でしょ。」
そう、口々に言い出した。
そして誰かがこう言った。
「なのはコールしようぜ!」
え、と思った時にはもう遅かった。
「「「「「「な、ななな、のーは!」」」」」」
耳を塞ぎたくなったけれど、でもここで耳を塞いだら気にしてるって、聞こえてるってバレてしまうから、下を向いて堪え続ける。
泣くな、弱虫みたいだろ。
それに、認めたくない。
こいつらに泣かされたなんて、死んでも嫌だ。
そう思った時だった。
バンっと大きな音がして、その方を見ると、君が、玲がいた。
「ねえ、黙っててよ、って言ったでしょ。
何?そんな簡単なこともわかんないの?
静かにしてて。僕の視界の端でいじめとかやめてくんない?」
玲はそう淡々と、でも睨みつけながらそう言った。
ひなたたちは言葉に詰まっているようだった。
そんな彼女たちを見たのか、彼は私の手を取って廊下に連れ出した。
お互い喋るのが苦手なだけあって、気まずい空気が流れた。
何を喋ればいいのかわからない。
でも、でも、でもこれだけは伝えたい。
「………………っあー、ありーがーと」
やっぱり上手く言えなかったけど、伝わっただろうか。
そんな私の思いごと受け取ったのかはわからないけど、
「頑張ってよ。」
と一言言って君はさっていった。