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ドライブデートする水赤の話
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赤side
透明の窓から見える景色は速く、一つ一つ離れているはずの白いポールたちが、一つの線になる。
隣でハンドルを握っているペーパードライバーは、久しぶりの運転に慣れてきた様子で、大好きなバンドの歌を、俺と一緒に気合を入れて口ずさんでは、「上手く歌えない」と笑っている。
今日はほとけとドライブデートに来た。
ドライブデートは、りうらがずっとしたかったデート。
車を持っていないのでレンタカーを借りて、運転免許を持っているほとけが運転をしてくれた。
いまは、家がある東京へ帰る道を走っている。
「りうちゃん、次の旅行どこ行く?」
りうらに気軽に問いかける声色とは裏腹に、白くて細い割に筋がくっきり浮き出た腕は慎重そうに両手でハンドルを回す。
「んー、もう全国行き尽くしたしなー」
いむと付き合ってからというもの、恋人になりたててで浮かれた二人は、全国各地、旅行に行きまくった。そもそも、大体の観光地はいれいすのライブのついでて行ってるし……。
ほとけから返ってきた返事は、予想外の方向へだった。
「あと行ってないのは天国くらい?」
まさかの雲の上。「2人で行ってないのは天国ぐらい」って、なんか前に配信でもそんな話をしたような気がする。
「天国は行ってないよね。りうら達まだ生きてるもん」
ほとけは、至って真剣に、うっとりとした様で言葉を続ける。
「僕、いつか、りうちゃんと一緒に天国に行きたいな」
それはやだ。まだ歌い手のりうらとして生きてたい。それに、天国じゃお互いの身体に触れられるか分からないし。
でも、人にはいつかは終わりがくるから、……そのときは、ほとけと一緒がいいに決まっている。
「”いつか”ね。今は一緒に地上で暮らそ」
「ふふっ、そうする」
しばらくは地上に居てくれるみたいで、ほっと息をついた。
「いむとなら天国でも楽しそうだけどね」
「そうだよ、りうちゃんと行って楽しくないとこなんて相当だよ」
普段よりテンポが遅いふたりの会話の間に、心地よい沈黙が流れる。息を吸う音まで聞こえるくらいに、静か。
りうちゃん、とわざと低くした声で名前を呼ばれた。
「愛してるよ」
抱きかかえきれないほど大きくて、じんわりと熱いものが、胸に広がった。
不可抗力で、心臓はさっきと比べ物にならないくらい速く脈打ち始め、ほっぺたに熱が集まる。
それと同時に、心、身体ぜんぶ、たまらない幸福感で包まれる。
人を愛し愛されるって、なんてしあわせな事なんだろう。
「俺も愛してる」
照れ隠しに、ほとけの小さな肩に頭を預けた。
どうか、この、穏やかに微笑んでいる、愛しい人との時間が、永遠に続きますように。
ね、愛してるよ、ほとけ。
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水side
変わらぬ表情のままハイウェイを飛ばす車内に、柔らかい暖色の光が振り注ぐ。もう、すぐに夜が来て、一日が終わってしまう。陽が沈み始めたらしい。
りうちゃんが、僕の肩で、すぅすぅと寝息を立て始めた。少し開いた口は無防備で、ちょっとだけハンドルを放ったらかしてキスしちゃいたいくらいかわいい。
「今日はずっと[[rb:燥 > はしゃ]]いでたもんね」
遊び疲れて寝ちゃう、なんて、もう立派な成人男性のはずなのにちっちゃい子みたいでかわいくて、思わず頬が緩む。睫毛の長い、端正な寝顔を起こしてしまわないように、そっと呟いた。
りうちゃんと過ごす日々は、世界が驚くほど鮮やかだ。
いつも僕を助けてくれるところに、たまに奇想天外でかわいいその言動に、何にでも素直なところに………。
ああ、もう。どうしようもなくゾッコンなんです。
りうちゃんにとってはただの出会いだったかもしれないけど、りうちゃんと出会えた事は、
僕にとっては最高の出会いだったんだから。
僕とりうちゃんだけの、2人きりの世界で暮らしたっていい。 でも、職業上、それは叶わないから。
…本当に天国に行く時まで、それまで、ずっと一緒にいようね。
愛してるよ、りうちゃん。