TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

side黒子③


一安心…と思ったのもつかの間。こんなの全フロアから丸見えじゃないか、とふと気付く。さて悲しいかな、黒子の予想通り下の階にいた人々も赤司に気付いたようだった。「赤司サマ?!」(さっきから気になってたが、その呼び方は一体なんなんですか)という歓声に、黒子はまたゲンナリとする。彼はどうしているのかと後ろをちら、と振り返る。__なんとそこにはひらひらと手を振っている彼がいるではないか。

…そんなの目立つにも程がある。ふざけないでほしい。サービス精神が旺盛なのは別にいいんだが、今はホントにやめてほしい。だがエレベーターの下がる速度をあげることは出来ない。黒子は、僕は存在していません、といったような顔で、目指しているフロアに着くのを待つことしか出来なかった。


「はーーーーー……」

「ほら、あんなに早く歩くから疲れてるんだ。俺は忠告したのに」

眉をひそめて、彼は重厚なコートをハンガーにかけた。「君のせいですよ」という反論すら今は言う気が無かった。精神的にも、身体的にもどっ、と疲れた。

_あの地獄の時間を過ぎ、やっと店に着いたかと思えば、そこにあったのは”満員”という文字。「終わった」と思った矢先、何人もそのような客が来ているのか、断りの言葉を言いに髪を纏めた女性が店から出てきた。

「すいません、お席が空くのはあと1時間後ほどになります…」

申し訳なさそうに黒子を見つめ、そしてその奥にいた人物にも目を向け、テンプレート通りの言葉を紡ぐが…

「あ、赤司様!?」

デジャヴ。店員の女性は忙しなく、顔を青くしたり赤くしたりしながら焦りだす。どうしよう、といったところだろうか。黒子もそんな彼女に同情し、それと同時に赤司を憎みもした。

すいません!お待ちください!と彼女は零し、店の中へ消えていく。扉を閉め忘れたのか中の会話がダダ漏れだった。…まあ、このように。

「あの、その」

「なんだ?今は手が回んないんだ、断ってきてくれ 」

「あ、あ、赤司、様が」

「え?あかし?」

「その、来られてて」

「なんだって?あかし…って、あの赤司か!?!」

「はい、あの…」

そんな会話が聞こえたかと思えば、ドタバタと店内は騒がしくなり黒子は頭を抱えた。騒ぎの種である赤司を見れば、彼はけろりとした顔で口元に手を寄せていた。そんな黒子の視線に気付いたのか、彼は「どうした?」とでも言うかのように微笑み、首を傾げた。あぁ、本当にその顔に弱いな、僕…。ぐう、と声を漏らすことしかできなかった黒子は、元の位置へ視線を戻す。ふと、ガンッ!と激しい音を立てて目の前の扉が開いた。

「…いらっしゃいませ、赤司様!お待ちしてすいません、どうぞ!!」

「…いや、しかし混んでいるんでしょう?私のために無理に空けなくていいですよ」

「いえいえいえ、赤司様を招かずに誰を招きますか…!是非!」

「あぁ、では。お言葉に甘えて」

行こうか、黒子。と変わらぬ声色で彼は微笑みかけ、店主と思われる男性の後を着いて行った。それに、重い足を動かしてやっとのことで黒子は彼らを追いかけたのだ。

_それがさっきまでのこと。

調べた通りの落ち着いた雰囲気のここは、ピザやパスタなどイタリア料理専門店だった。パッド注文、というのも黒子にとってはとてもいい条件だった。適当に、ピザを1枚とよさげなサラダをリストへ加え、赤司へそれを手渡す。悩むかと思っていたが、彼は先程と同じようにパッと選び端末をもとに戻した。

「…で、なんで黒子は保育士を選んだんだい?」

「えっ」

「別に他意はないよ。ただ気になっただけさ、昔そんな素振りはなかったからね」

彼は水を喉へ流してそう言った。多分本当に他意は無いんだろう。彼の瞳から悪意は感じなかった。

「その、実は高校で職業体験をして。それが始まりですね。それまでは子供が好きっていう思いはなかったんですが、その時初めて感じて…って流れです…かね」

「ふうん、いいね。楽しそうだ」

にこ、と笑って彼はそう言った。今同じ場にいるのは知人である僕だけ、だからか、彼の瞳は先程よりも柔らかく溶けて、優しい色になっている……ように感じた。そんな彼の目は久しぶりにみた。思わずじっ、と見つめてしまう。そんな黒子に疑問を抱いたのか、ぱち、とゆっくり瞬きをして赤司はこちらを見つめ返した。

「もし、困ったことがあったらすぐ俺に相談してね。なんでもするから」

「なんでもですか?」

「あぁ、”なんでも”」

彼の言葉に嘘はないだろう。僕らが彼へ助けを求めたら、なにをどうやってもそれを解決するんだろう。彼はそういう危うさがある。それは、ずっと前から、だが。

…ふと、あ、と思いついて今1番の悩みを彼へと話す。

「…その、僕住む所決まってなくて、ですね。もしよければ物件探し手伝ってくれませんか?」

「おや、実家通いじゃないんだね」

「はい、帰りが不定期になりそうなので迷惑はかけたくなく…。けどこの辺りは街中ですから部屋が空いていないかもな、と」

「ふむ……なら…」

目の前の彼は口元を触って、少し思考した。…かと思ったが次にはもう口を開いていた。さすが赤司君、我らが頭脳_

「…し、失礼します」

「俺と一緒に住もうか」

ふたつの声が重なる。少し脅えた見知らぬ声、それとよく通る見知った声。息が詰まった。あぁ、最悪だ。焦りを通り越して、もう疲労しか湧いてこない。否定をするのも、弁解するのもめんどくさくなって、僕は目の前に釣らされた餌にまんまと食いついたのだ。







やっと終わった。これがあと5人も続くんですか?!!!?!無理ー!!!!?!!こうなったら、こういう始まりのお話と書きたいだけの日常のお話で分けるかも。death…

loading

この作品はいかがでしたか?

3

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚