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絵「…それで、話したいことってなに?」
瑞希は息を飲んだ。ついにこの時が来てしまったと。そう思うと息が荒くなる。
瑞「はぁはぁ……」
小さく息を吐いているつもりだったが、絵名にはお見通しだったみたいで「大丈夫?」と聞かれた。瑞希は「大丈夫」と返事をしたがそれでも息はまだ荒い。
絵「…無理に話さなくてもいいわよ?」
瑞「…いや、覚悟して決めたことだからちゃんと話すよ」
こんなところで弱くなってどうする、と自分に言い聞かせて口を開いた。
瑞「…じ、実は……」
声が震える。こんなに緊張するものだっただろうか。クラスメイトに言う時は覚悟もせずに言っていたというのに。
瑞「実は…ボク、お、男なんだっ…」
……
瑞「実は…ボク、お、男なんだっ…」
瑞希は泣いているかのような声でそう言った。絵名は驚きを隠しきれなかった。
頭の中で今までの記憶が蘇る。え、え…??あの時も、あの時もあの時も、ずっと男だった…?血の流れが早くなるかのように頭の回転が早まっていく。
瑞希は顔を上げて様子を伺った途端、顔が青くなっていった。絵名の顔は驚きで埋め尽くされていたからだ。
瑞「………びっくりしたよね?」
衝撃の事実を聞いたせいか、何も答えれなかった。違う、何も言いたくなかっただけだ。
沈黙の後、瑞希は走り出して屋上の扉を勢いよく開けた。階段を駆け下りる音がした途端に絵名は全力疾走で走り出す。階段を駆け下りながら瑞希の背中に向かって声を上げる。
絵「待って!!瑞希!!!」
瑞希の背中を追いかけるが中々追いつけない。
瑞希が運動神経がいいのは知っていたけど、ここまで走るのが早いなんて思いもしなかった。いや、今まで抑えていたのかもしれない。
追いかけている最中、瑞希との思い出が頭の中で過っていた。初めて言葉を交わした時。初めて姿を見た時。元気な人だと思った。でも本当は、瑞希にも苦い思いがあってずっと苦しかった。それが、今やっとわかった気がする。
私がかけるべき言葉は__
……
瑞希は息を上げながら全力で走っていた。
絵名の顔を見た時、かなり驚いていたようだった。なのにボクはそれに耐えきれずに逃げた。
後ろから足音が徐々に大きくなっていた。絵名が近づいてきている。またあの時みたいになってしまうのだろうか。瑞希は諦めたかのように立ち止まった。
絵「瑞希…!!!!」
絵名が抱きついてきた。絵名は抱きついた瞬間息を飲んだかのような音を出して、後退りした。
絵「瑞希…私…!!」
その言葉を聞いた瞬間瑞希は知らないうちに開いていた。
瑞「わかってる!!!……わかってるから…もういいよ、絵名」
絵「み、瑞希…?」
絵名の顔は心配と驚きの色を見せていた。普段こんなことを言わないからだろう。
瑞「絵名の優しさが…みんなの優しさが!!…ボクは怖いんだ」
絵「そんなこと…!!」
瑞「どうしてもダメなんだ…!!!」
絵名は瑞希の大きい声に驚き、口を開かなかった。
瑞「…だから、ボクの事を話したら、みんなとの関係が…全部変わっちゃうんじゃないかって…そんなのは嫌なんだ!!」
絵名は何も言わなかった。いや、何も言えなかったのだろう。
瑞「そんな事になったら、ボクは絶対耐えれない…!!」
瑞希は背を向けた。絵名の顔を見たら辛くなりそうだったから。いつになれば向き合えるのだろうか。ずっとこのままなのかもしれない。
瑞「……ずっと黙っててごめん…向き合えなくて、ごめん」
そう言い残して瑞希は走ってその場から逃げた。結局、結末は変わらないままになってしまった。
絵「瑞希っ!!!!なんでっ……」
絵名の声が聞こえたが瑞希は耳を塞いで走った。その後の言葉は聞きたくない。
もう、嫌だ。消えて みんないなくなれ。
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〜 end 〜 「ずっと結末は変わらないまま」