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ご本人様とは全く関係ありません
一応R入れました!!←大事
全然想像してたのと違いますけど!!
Rでもなんでもなくなりましたけど!!
これが自分の精一杯でした……😭😭
勉強します、もっと。
あと、これ中編になりました。
前回の続きからです。
10年後。
森の空気は、今日も澄んでいる。
鳥の鳴き声も、葉擦れの音も、
何ひとつ変わらない。
「あ、こら。よそのパンくず取らないの」
……変わったのは、俺だけだ。
俺はいつもの椅子に腰を下ろし、
わざとパンくずを散らばらせてから、
湯気の立つカップを指先で転がしていた。
10年なんて、
魔女にとっちゃ一瞬で。
実際、季節は10回巡っただけだ。
春が10回咲いて、夏が10回燃えて、
秋が10回色づいて、冬が10回眠っただけ。
ただ、それだけ。
なのに。
一日一日が、
やけに長かった。
俺は10年間、約束を守った。
人間とは話さなかった。
森の奥で、動物たちとだけ言葉を交わして、
誰にも見つからないように息をした。
まろがいないだけで、
森はこんなに静かだったか。
笑い声がひとつ消えただけで、
世界はこんなに広かったか。
……馬鹿みたいだ。
俺はローブの内側を指で押さえる。
そこに、青薔薇はもうない。
枯れたわけじゃない。
枯れるはずもない。
魔力で、時間を止めていた。
あの日の青を、
あの日のまま閉じ込めていた。
まるで、
そこにまろまで閉じ込められるみたいに。
「ピュイッ」
不意に、
ぱたぱたと小さな翼をはためかせる音と、
小鳥特有の甲高い声が聞こえて、
俺は振り返った。
「なんだ、お前。
また来たのか」
家の塀に首を傾げながら乗る、
青薔薇と同じ色の小鳥。
まろがいなくなってから、
俺の庭に懐き始めた新入りだ。
新入りって言っても、
10年ほどはこの庭に通い詰めているけどな。
小さい頃のまろと同じように、
俺の後ろをちょこちょこついて回るから、
俺はその小鳥を、
まだ幼かったまろみたいに可愛がっていた。
小鳥が塀の上で羽を震わせる。
「……お前、今日やけに落ち着かねぇな」
返事の代わりに、青い影がひゅっと跳ねた。
俺の肩に乗って、
首を伸ばして、
森の外……道のほうの何かを見ている。
いや、見張っている。
俺はカップを置いた。
音を立てないようにそっと置いたが、
陶器同士の触れる音がカツンと
やけに硬く響く。
湯気はまだ立っているのに、
空気だけが冷えた気がした。
小鳥の爪が、俺の肩をきゅっと掴む。
逃げろ、とでも言いたげに。
俺は息を潜めて、耳を澄ませた。
その瞬間。
遠くで、枝を踏む音がした。
ひとつじゃない。
複数。規則的で、重い。
動物たちが一斉に息を潜める気配。
風が、ほんの少しだけ止まる。
森の奥に踏み込んでくるのは、
野蛮な獣でも、
何も知らない旅人や迷子でもない。
……覚悟と目的を持った人間だ。
俺はゆっくりと立ち上がる。
「……まったく」
10年間、守ってきたものが、
たった数歩で踏みにじられる音がする。
玄関へ向かう途中、
棚の奥に隠していた小さな結界札を指で弾いた。
ぱち、と空気が弾ける。
家の輪郭が少しだけ曖昧になり、
ここにあるという存在感が薄くなる。
隠蔽。
見えないようにするんじゃない。
気づかれないようにする魔法だ。
……遅いかもしれないが、
やらないよりはマシだ。
扉の前で、俺は息を吐く。
そして、ノック。
どんどん、どんどん。
硬い音。
遠慮のない叩き方。
「失礼する。森の管理者はいるか」
男の声。
鎧越しの響き。
命令する声だ。
俺は扉を開けなかった。
代わりに、内側から声だけ落とす。
「いねぇよ」
間が空いた。
「……返答があるならいるだろう」
「帰れ」
即答。
すると外の空気がざわつく。
数人の息遣いが重なった。
「我々は王都の警備隊だ。
この森の奥に、
魔女が潜んでいるという通報があった」
……あぁ、来たか。
俺は目を細める。
10年も静かにしてりゃ、
忘れられると思っていたわけじゃない。
「魔女?知らねぇな」
「この周辺で、
異常な魔力反応が定期的に観測されている。
住居があることも把握している。扉を開けろ」
命令口調。
俺は舌打ちしそうになるのを飲み込んで、
ゆっくり扉に手を掛けた。
ここで拒み続ければ、
結局は力ずくで踏み込んでくる。
踏み込まれたら終わりだ。
森も、俺も、まろの帰る場所も。
扉を開ける。
朝の光が差し込んで、
そこに立っていたのは鎧を着た男が3人。
先頭の男が、俺を見て目を細めた。
「……若いな」
「23だからな」
「名は」
「ないこ」
適当に答える。
男の視線が、俺の足元から肩までをなぞった。
武器は見えない。
魔法の触媒も見えない。
生活の匂いはある。
普通の人間に見えるように整えてある。
だが。
「……この家、妙に静かだな」
「一人暮らしだ」
「森の奥で?」
「暇だからな」
男が一歩踏み込む。
俺は動かない。
ただ、玄関の境界線に張り付いている結界を
指先で撫でるように触れた。
これ以上入るな。
そう言葉にしなくても、
魔力が拒絶を伝える。
兵士の足が、
ほんの一瞬止まった。
気づいたか。
「……失礼する。家の中を確認させてもらう」
「やめとけ」
「拒否する理由があるのか」
「俺が嫌だから」
兵士の眉がぴくりと動く。
後ろの2人が、剣の柄に手を掛けた。
……めんど。
俺はわざと、疲れたように肩を落とす。
「なぁ。魔女魔女って騒ぐ前にさ」
兵士を見上げて、笑ってやる。
「この森に入って
何も気づかなかったの?」
例えば。
お前らの足元にある境界とか。
空気の重さとか。
踏み込んだ瞬間、
皮膚の裏を撫でるみたいな違和感とか?
……まぁ、それに気づいてたら、
こんなふうに大声で騒がずに、
もっと静かに俺を捕まえに来るか。
その言葉に、
兵士たちの喉が鳴った。
「……脅しか」
「忠告だよ」
その瞬間。
塀の上にいた小鳥が、
甲高く鳴いた。
「ピュイッ、ピュイッ!」
まるで、何かを知らせるみたいに。
兵士たちの間に目を凝らす。
森の奥。
木々の隙間に、
〝青〟が揺れた気がした。
ほんの一瞬。
幻みたいなあの色が見えた。
あれは――
「隊長」
それを確かめようとする前に、
後ろの兵士の低い声が俺を現実に引き戻した。
「この家……結界の匂いがします」
隊長の目が鋭くなる。
「やはり、お前」
俺は笑った。
笑うしかなかった。
あーあ、
面倒なことになったなぁ……。
せっかく
静かに生きていけたのに。
こいつらちゃっちゃと眠らせて、
別の場所へ引っ越すか。
居心地よかったんだけどな、この森。
そう考えていた時だった。
「なぁ、お前ら。
何しとるん」
目の前に、
懐かしい声と一緒にさっきの〝青〟がいた。
その声が落ちた瞬間、
兵士たちの空気がぴんと張り詰める。
森の奥から現れたのは、
青い髪の青年。
いや、まだどこか、少年の名残を残した顔。
けれど、纏っている魔力だけは大人だった。
重い。濃い。鋭い。
……まろ。
俺の喉が、音を忘れる。
「魔導師さま!」
目の前にいた兵士たちが、
揃ってまろの前で跪いた。
今、こいつら……
まろのことを魔導師って言ったか……?
『魔導師』
魔法使いの中でも、
魔法の扱いが〝頂点〟に達した者だけに
与えられる呼び名。
魔力量、技術、判断力。
それに、現場での俊敏さと制圧力。
どれか1つじゃ足りない。
全部が揃って、ようやく届く場所だ。
それを、たった10年で……?
しかも、在学中にだろ。
普通なら、
卒業してから何年もかけて
ようやく辿り着く場所だ。
……冗談みたいな話だ。
こいつ、
とんでもない偉業、成し遂げてんじゃん。
「ただいま、
魔女の末裔と見られる者を発見いたしました」
兵士たちは誇らしげに告げた。
まるで、
褒美を貰えるとでも思っているみたいに。
……あほらしい。
しかし、まろはその期待を、
息をするみたいに裏切った。
「そ、でもな」
柔らかい声。
「この人、魔女やないよ」
「……と言いますと?」
隊長が、戸惑いながら顔を上げる。
まろは迷わず、
俺の隣へ歩み寄った。
兵士三人が揃って口をぽかんと開ける。
理解が追いついていない顔だ。
「やって、この人……ないこは」
そこで一瞬だけ、まろの視線が俺に触れる。
懐かしい、はずなのに。
胸の奥が冷える触れ方。
「俺の師匠やもん」
にこり、と笑って言った。
その笑顔は、
確かにまろのものだ。
入学式の朝、
照れて笑った時と同じ形をしている。
……なのに、別人に見えた。
優しいのに、冷たい。
嬉しいはずなのに、怖い。
「そ、そうでございましたか!」
「大変無礼を働きました。
申し訳ございません!」
兵士たちは慌てて頭を下げる。
さっきまでの剣呑さが嘘みたいに消える。
まろは軽く手を振る。
「師匠との感動の再会やからさ、
君ら、どっか行ってくれん?」
「かしこまりました!」
兵士たちは素直に従い、
玄関から距離を取ろうとする。
その背中を、見送る前に。
「あ、ちょっと待って」
まろが、もう一度だけ呼び止めた。
兵士たちの動きが止まる。
空気が、ひとつぶん重くなる。
「君ら、師匠と話したんよね?」
……何が言いたいんだ。
俺が問いかけるより早く、
まろが続ける。
「じゃあ、いらないや」
あまりにあっさりした声。
まるで、
要らなくなった紙くずでも捨てるみたいに。
まろは指先を、空中にすっと滑らせた。
その瞬間。
兵士の足元に、淡い光が円を描く。
幾重にも重なる魔法陣。
美しくて、正確で……
吐き気がするほど冷たい。
「……っ」
声を上げる暇もなかった。
瞬きをするより先に、
兵士の膝が崩れる。
どさり、と鎧が地面を叩く音。
続けて、二人、三人。
まるで糸を切られた人形みたいに、
次々と倒れていった。
まろは倒れた兵士たちを一度も見ずに、
俺のほうだけを見て笑う。
「師匠、これで誰もおらんくなったな」
その言い方が、
昔のまろと同じ関西弁なのに。
「……まろ……?」
喉から出た声は、
情けないほど掠れていた。
「なぁに? ないこ」
その呼び方だけで、胸の奥が冷える。
師匠、って呼んでた。
あの可愛い面影が、どこにもない。
俺は反射で、一歩だけ距離を取った。
「なんで……そんなこと……」
声が勝手に震える。
怒りじゃない。悲しみでもない。
恐怖だ。
まろは首を傾げて、笑う。
「なんでって。そんなん決まっとるやろ」
そして、まるで当然のように言った。
「ないこが好きだから?」
背筋が凍った。
「……そんなんで、
まろはこんなこと……しなかったろ」
言葉を選ぶ余裕なんて、
もう残っていない。
「お前……誰だよ……」
まろは少しだけ目を丸くして、
すぐに柔らかく笑う。
「まろだよ、まろ」
その声の温度だけが、昔と同じで。
余計に気持ち悪かった。
「本名はいふ。ないこの弟子だよ」
「……違う」
俺は首を振る。
「お前は、そんなやつじゃなかった」
まろは、
もっと
優しかった。
そう言い切る前に、
まろが小さく息を吐いた。
「あぁ……もう面倒くせぇな」
その口調は、
俺の知らないまろのものだった。
そして、静かに刺す。
「約束破ったんは、ないこやろ?」
心臓が跳ねた。
「……は?」
意味が分からない。
いや、分かりたくない。
俺は10年間、誰とも話さなかった。
森に籠もって、息を殺して。
待っていた。
ずっと、待っていたのに。
「俺は……」
言い返そうとした瞬間。
まろの指が、ふわりと宙をなぞった。
視界が、黒に塗り潰される。
「……っ」
声も出ない。
体が言うことをきかない。
床が遠ざかっていく感覚だけが、妙に鮮明で。
最後に聞こえたのは、
甘い声で落とされた、ひどく優しい言葉。
「大丈夫。怖くないよ、ないこ」
その言葉が、何よりも怖かった。
「ごぇんなざっ、もっ、むぃ!!」
「無理ちゃうやろ?
あ、ほらまだイケるやん」
どうしてこうなったのだろうか。
快楽に溺れる頭を動かして、
遡るのは数時間前――
目が覚めた時には、
俺はベッドの上にいた。
手首と足首が、
冷たい拘束具で固定されている。
逃げられない。
身体は、何も纏っていなかった。
布一枚ない。
肌に触れる空気がやけに冷たくて、
その冷たさが、現実を突きつけてくる。
「……っ、まろ……やめ……」
言葉にしようとした声が、途中でひしゃげた。
まろは、俺のすぐそばにいる。
近い。息がかかる距離。
「ねぇ、ないこ」
名前を呼ぶ声だけは、
あの時のまろで。
たがらこそ、逆に怖い。
「俺、10年間寂しかったんやで?」
片手で、頬を撫でながら
眉を下げて話す。
「それなのに、帰っきてみたら
ないこ、ごついやつらと話しとるしさぁ……」
まさか、約束破ったって、
あの兵士のことだったのか……?
「やからさ、10年分の愛情、注いだるな?」
その言葉と同時に、
身体の奥が熱を持つ。
知らない感覚が、勝手に広がっていく。
何、これ。
熱い、熱い。
こんなの、耐えられない。
「ふはっ、ないこ、可愛え〜。
自分で腰振っちゃってさぁ、
そんなに欲しいの?」
軽く持ち上がった俺の腰を
するりと撫でる。
「ひっ」
それだけで、
俺の身体はまた興奮した。
「ええよ、お望み通りあげるわ」
ぞくり、と背中が粟立つのと同時に
秘部に指が入った感覚がした。
そのまま
指を奥へ奥へと進められる。
「あ、ぁ……んぅ」
口元に、頬に、首筋に。
落とされるキスが、やけに丁寧で。
それが余計に、逃げ場を奪った。
その指がピタリと止まり、
「……見つけた」
そうまろが呟いた瞬間、
強い刺激が走った。
「あ゛っ……!?」
まるで、
身体の奥を、狙い撃ちされるみたいに。
逃げたくても、手足は固定されている。
声を上げるしかない。
「あ……やっ、まぉ、
なんか、へんっ……だからぁっ」
まろは、奥にある
小さなしこりのような場所を
集中的に狙ってくる。
「前立腺、
とんとんすんの気持ちいねぇ」
「やっ、やら……っ、抜けっ」
「こっちもいじってみようか」
俺の声もお構いなしに、
まろは、
もう一方の手で胸の突起をいじり始めた。
「んぃ……!?」
「胸でも感じるんだ。この淫乱魔女」
両方いじるなんて、聞いてない。
頭の中はほぼスパークしてる状態に近しい。
「ぁ、あ゛、やらっ……っ」
「気持ちいいの間違いやろ?
からだは正直やで?」
ふざけた口調。
なのに、触れ方だけは妙に的確で。
俺の中の何かを、壊してくる。
感覚を鈍らせる魔法を使おうにも、
手は動かせないし、
呪文は矯声に遮られる。
詰んでいる状態だった。
この状況を生み出しているまろは、
胸の突起を引っ張ったり、
まわりをくるくるなぞったり、
カリカリ引っ掻いてみたり。
俺に
さらなる快感を与えていた。
そんな初めての快感に
俺が耐えられる訳もなく
「むぃ゛っ、むぃ!!
ィく、イッちゃあぁぁ゛!!!!」
駆け上がってくる快楽と共に
白濁液を吐き出した。
それを見届けてから、
まろはようやく手を離した。
「はぁ……っ、はぁ……」
呼吸が荒い。
一気に快感を吐き出したからだろうか。
そんな俺の腹を
撫でながら、まろは言った。
「なに休憩しとるん?」
「……ぇ……?」
今度は、
さっきまでまろが撫でてた腹の下から
全身に熱が広がる。
まさか、こいつ……っ。
ちらりと下を見ると、
腹の下には、綺麗な〝淫紋〟
「これからが本番やで」
恍惚と笑うまろ。
けれど、
俺の目には、
その下にある大きなモノしか映っていなかった。
「なぁに?そんな気になる?
……まぁ、拒否しても今から入れるけどさ」
俺の腰を持ち上げて、
秘部との焦点を合わせる。
そして、
それはズチュッと音を立てて、
身体の奥を突き進んだ。
「ふーっ゛……ふーっ」
さっきよりも異物感が拭えない。
「……っ」
一瞬、
まろが顔を歪めた気がした。
「ごめん」
小さな呟きが聞こえたかと思うと、
俺の腰を掴み、
勢いよく引き下げた。
「ああああ゛ぁ゛!!!」
獣のような叫び声を上げながら、
また自身から白濁液が飛び散る。
「っ、ほんま可愛えわ〜」
笑いながら、囁く。
「そんな顔、俺にしか見せたらあかんよ」
ばこばこと容赦なく腰を打ちつけ、
溢れんばかりの快楽が襲ってくる。
逃げられない。
抵抗できない。
快感と恐怖が、ぐちゃぐちゃに混ざっていく。
「だぇ、っ……むぃ、むぃなのぉ!!」
「天下の魔女さまが、人間に負けるとかw
無様やなぁ」
快感に酔った頭でも分かるくらい、
その言葉に違和感を覚えた。
……こいつ
俺に対して、こんな言い方……するか?
「なぁ〜、もっと鳴いてや?」
妖艶に笑うまろ。
その笑い方が、妙に作り物みたいで。
ぞわり、と背筋が凍る。
まろは、こんな笑い方じゃない。
まろは、もっと。
『おししょ!』
『師匠!』
……もっと、俺を呼ぶ声は、軽くて、明るくて。
どこまでも真っ直ぐで。
『俺、師匠が好きやもん』
守るみたいに笑っていた。
抱きしめたら折れてしまいそうなほど。
だけど、
今のまろは、
俺を壊すように笑っている。
胸の奥で何かがカッと燃え上がった。
「っ……!!!」
振り返れば、
さっきの『ごめん』
あれは、本心のように聞こえた。
あれだけは、まろの声だった気がする。
……なら、その直後。
一瞬、言葉に詰まったのはなんだ?
迷い?
躊躇?
それとも、抵抗?
……考えられるとすれば、
まろが、何者かに上書きされている。
俺は、その可能性に縋りつきたかった。
縋らなきゃ、
10年前、一緒に過ごしてきたまろが
否定されるようで。
大切な思い出のすべてが
嘘だったなんて。
そんなの、俺が認めたくない。
だから、思い出す。
思い出して、証明する。
〝こいつはまろじゃない〟
そう断言できる何かを。
思い出せ、
思い出せ、
思い出せ……!!
快楽に溺れかけた頭を、
無理やり引きずり上げる。
帰ってきてからのまろの、
可笑しかった部分を……!!!
言葉。
目。
間。
口調。
……あれ?
確か、あの時。
兵士を倒す直前。
『じゃあ、いらないや』
あの言い方。
まろが、そんなふうに喋るか?
まろの口調なら『なら、いらん』のほうが
なんとなく、正しい気がする。
「……まろ……」
呼びかけた声は、情けなく震えた。
喉の奥に、鉄の味がした。
「どしたん、ないこ?」
俺は、息を呑む。
同じ顔で。
同じ声で。
同じ目で。
俺のことを「好き」だと言う。
でも、こいつは
「……お前、誰」
まろじゃない。
呟いた瞬間、
まろの笑みが、ほんの一瞬だけ
歪んだ。
「はっ、まろやって、言うとるよなぁ?
何度言えば気が済むん」
言葉だけは軽い。
けれど、その目は笑っていない。
まろは、
俺が余計なことを考えられないように
動きのスピードをさらに上げた。
「っぁ……!」
俺の意識が、
快感に耐えられず、
引きずられていく。
まずい。
このままじゃ、考える前に堕ちる。
もし、本当にまろだったら。
俺は、魔法をぶつけられない。
でも、確信が欲しい。
決定的な証拠が。
「余裕やな、まだ考え事しとるん?」
耳元で、甘い声。
次の瞬間。
「あ゛ぁ!?」
怒鳴りながら頬を掴まれ、
強引に顔をまろの方へ向けさせられた。
目と鼻の先にあるのは、まろの顔。
近すぎて、息がかかる。
唇が触れそうで、吐き気がする。
睨み殺すように俺を見ているのは、
10年前と同じ、綺麗な青い瞳。
その奥に。
「……っ!!!」
……みっけた!!
その中に、赤が混じっている。
一瞬だけじゃない。
しっかりとそこに宿っている。
まろの瞳に、こんな色はない。
つまりこれは、
このまろは、呪いだ。
「……やっぱり、お前」
俺の声は掠れていた。
けれど、胸の奥で何かがカチリと音を立てた。
やっと、掴んだんだ。
壊していい理由を。
「ごめんね、まろ」
謝ったのは、
もちろん目の前のそれじゃない。
すぐに気づかなくてごめんという意味で
本物のまろへ向けてだ。
「分かってくれればえぇんよ」
その意味を勘違いしているのか
満足そうに笑うまろらしきもの。
その笑顔が、
俺の中の最後の迷いを踏み潰す。
今、取り戻すから。
俺は、息を吸って。
おもむろに口を開いた。
入学式数日前の出来事を思い出しながら。
『せや、師匠』
『ん?』
『呪いってさ、他の人が解けへんの?』
『……解けないな。人間は』
『? それってどういう……』
『基本的に、呪いは
かけたやつとかけられたやつしか
解くことできない』
『へぇ……』
『でもな。魔女はできるんだ』
『え、チートやん。そんなの』
『うるせぇ。普通の人間と違って、
魔力だけは大量に余らしてるんだわ』
『えぇなぁ〜。俺も魔女なりたい』
『やめとけ』
『なぁ、なんて言う呪文なん?』
『聞いてどうする。お前、使えないんだぞ』
『言いやん。
もし、大切な人が呪いにかかったら
使えるかもしれへんで?』
『……は?』
『ま、大切な人言うても
師匠しかおらへんけどな』
『……そ』
『あ、師匠照れた〜?8歳の言葉に〜??』
『黙れ。教えないぞ』
『ぅえ!?ちょ、それはちゃうやろ!?
ごめんやって!!教えてや〜!!』
『はぁ、1回しか言わないからな』
『大丈夫や!!絶対覚える!!』
『呪文は――』
「解呪……っ!!」
あの時、一度でも思い出していてよかった。
生まれてこの方、百年余り。
ずっと使うことなんてないと、
そう思っていた魔法。
もし、あの時。
師匠としての俺が、
弟子に教えるみたいに口にしていなかったら
今、この瞬間に使えなかっただろう。
俺は今、出せる限りの魔力を絞り出し、
その魔法を初めて使った。
大切な人に、もう一度会うために。
魔法によって現れた白い光が、
まろを優しく包む。
燃やすでも、裂くでもない。
絡みついたものだけをほどいていくように。
光は静かに満ちて、
そして、そっと離れていった。
この魔法、こんな感じなんだな、と
どこか他人事のように思う。
目の前のまろは、
そっと瞼を開けた。
「……ぉ、れ……なに、して……?」
まろの唇が震える。
「……ぁれ?師匠……?」
綺麗な青い瞳。
まだ幼さの残る顔。
抱きしめてしまえば
壊れてしまいそうなふわりとした笑い方。
それが、まろ。
俺は、それを取り戻せた。
反動が一気に押し寄せたように、
喉の奥が痛い。
呼吸の仕方すら忘れていたみたいに、
胸が熱い。
それでも。
ちゃんと伝えたかった。
「……おかえり、馬鹿弟子」
この言葉は、
俺だけの特権だから。
呪いが解けたことで消えた拘束具。
自由になった両腕を伸ばして、
確かめるように、まろに抱きついた。
こわばる腕の中に、
確かなぬくもりがある。
そこで俺はようやく、
まろが、帰ってきたんだ
と思えた、その瞬間。
張り詰めていた糸が、ぷつりと切れた。
全身から力が抜けていくのが分かる。
視界の端が白く滲み、音が遠ざかった。
魔力の使いすぎかな、
そんなことを考えられるほど、
頭はまだ冷静で。
でも、
腕の中の温度だけは離したくなくて、
ぎゅっと腕をまろの首に回す。
そのまま俺の視界は、
ゆっくりと、ゆっくりと
フェードアウトしていった。
コメント
3件
2ヶ月でこんなに神作品を大量生産してて尊敬すぎる…> ̫< さーちゃんの言葉回しが素敵すぎるのよね…その語彙力はどこから得ているのやら…✨✨ 青さんの「いらない」で倒れていく様子が目に見えて想像できたよ…!!さーちゃんのRが上手すぎて昇天しちゃいそうだった…!!ෆ 青さんの呪いを解く桃さんの魔術の言葉に惹き込まれる…このお話大好きすぎて語彙力失っちゃう😖😖💘
書き始めて2ヶ月! 長いようで短い2ヶ月でした✨️ 45人ものフォロワーさまにも恵まれて、嬉しい限りです💕💕 いつも拙い文章で生み出される駄作の数々を読んでくださりありがとうございます😭😭 さくらあんを今後ともよろしくお願いします💖💖