マズい。
朝起きると寒気もして身体が重い。
ヤバイな。
これ風邪ひいたかも・・・。
でも仕事も詰まってるし、出来れば仕事を休みたくなくて、ベッドから起き上がって、会社へ行く準備をしようとする。
だけど、かなり熱が上がってる感じもしてフラついてしまう。
これちょっと仕事行っても頭回らなそうだな・・・。
不本意だったけど仕方なく会社に連絡を入れて休暇を取る。
と言うモノの、休んだところで、家にメシもなんもないし、薬もねーな。
でも、買いに行く気力もないし、とりあえず大人しく寝て治すしかないかな。
そう思いながら、気づいたらそのまま何時間くらい寝てたっけ。
一度昼にたまたま家にあった風邪にいいって聞いたスポーツドリンクだけ飲んだきりか。
そんな時浅い眠りの中で、遠くに聞こえる何かの音。
なんか鳴ってる気がするけど、気のせいかな。
最初はそれがわからなくて寝たままでいたけど。
またしばらく何度か聞こえるその音。
あっ・・・家のチャイムか・・・。
ようやく気付いて身体を起こす。
すると。
「早瀬くん?大丈夫?」
玄関の向こうから聞こえる声。
それは聞き間違えることない彼女の声。
えっ・・なんで・・?
オレはその声を認識して、急いで玄関まで足を進める。
そして玄関のドアを開けると、背を向けて帰ろうとしている彼女の姿が。
「もち・・づきさん?」
オレ風邪で頭が朦朧としてんのかな。
彼女がオレの部屋訪ねて来てくれるとかオレ幻見てる?
「ごめん、寝てた? 大丈夫? 風邪ひいたって聞いたけど」
「あ、あぁ・・うん。そうみたい」
なん、で・・それ知ってんの?
「ちょっと・・部屋お邪魔していい?」
え?いや、まさかの言葉で戸惑う。
「あっ、でもオレ風邪ひいてるし。うつすと悪いから」
嬉しい気持ちの反面、今彼女に風邪をうつすワケにもいかなくて、断ろうとする。
「病人はそんなこと気にしない。はい。入るね~」
なのに彼女はオレの言葉を気にしない様子で、そのままオレの部屋に入って来る。
「ごめんね。とりあえずベッドで寝てて」
「あぁ、うん・・・」
オレは風邪で朦朧としてるせいか、正直状況が把握出来なくて、彼女に言われるがまま受け入れてしまう。
「はい。これ差し入れ」
すると彼女は差し入れの袋をテーブルに置く。
「薬は飲んだ?」
「いや・・ちょっとマシになってきたから、とりあえず寝てたら治ると思うし。そもそも急で薬とかも家にないし」
「そんなことだろうと思った。ご飯は食べた?」
「いや・・・」
あっ、結局朝から寝ててなんも食べてねーや。
「とりあえず何か食べて薬飲まないと。薬も買って来たからちゃんと飲んで」
「あぁ、うん・・・」
「病人だと大人しいね。なんか扱いやすい」
すると今のオレを見て嬉しそうに子供扱いしてからかう彼女。
本領発揮出来ない状況でなんかそれも悔しくて。
「なら。風邪うつしてあげてもいいけど?」
いつもの感じで彼女にそんな言葉を言ってみるモノの。
「はいはい。今はまずそんなこと言ってないで大人しく風邪を早く治すこと。はい。寝て寝て」
そんな言葉も今の彼女には全然効かないらしく、ベッドから起き上がろうとするオレを軽くあしらいながら布団をかけて寝かそうとする。
「ちょっと大人しく寝ててね」
そう言って彼女が部屋を出て行く。
数分経っても戻ってこない彼女。
あれ?やっぱオレ夢見てた・・?
だよな・・さすがに彼女がオレの見舞い来るとかありえないし、都合良すぎか。
そもそも部署も違うし、彼女にも昨日の今日で風邪ひいたことは伝えてないし、知ってるはずもないし。
虚しくなって、また眠りにつく。
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