「ふん、くだらない」
鼻で笑われ、グラスを投げつけられる
「お前を『処分』する」
一体僕が何をしたんだ。何も悪いことはしていないのに
これから殺されるんだ。死んだら全てどうでも良くなる
でも、これだけは、これだけは言わせてもらう
「人を裏切って、さぞ心地良かっただろう。次はお前の番だ」
2年前
親に捨てられた。そうか、捨て子になったんだ
「大丈夫かい?」
あの時はそうやって言ってくれたじゃないか
「あなたは?」
「そうだな…エル様とでも呼んでくれ 」
そうやって笑顔を見せてくれたのに、この結末?ありえない
彼はどうやら、魔術団という場所の団長で、
魔術団というのは、その名の通り、魔法を使って物事を解決したりする団体の事だ
この世界には、魔法というものが存在する
「これより、会合を始める 」
魔術団に入って少しした頃だ
「他国の魔術団との交流はどうだ?」
「いい感じでございます。エル様」
満足げにお前は頷く。今となってはそれが憎い
会合は順調に進んでいく
「最後に、質問などはあるかな?」
後ろの方から手が上がる
「この魔術団も、規模が大きくなってきました。追放などの制度の追加を希望します」
「そうだね、検討する」
そうして、運命の会合は幕を閉じたんだ
「今日から、追放制度を導入する」
次の会合の時だ。僕はこれをすごく嬉しく思った
今日までに何人かの愚か者を見たから
「同じ団員に対してエル様の許可なく魔法を使うのはダメなんじゃなかった?」
「別に害は与えてないじゃないか」
呆れた。本当にそういう奴が多いんだ。 ちょうどこの事を言いつけたかったんだ
しかし、僕がこれを報告したとして、ただの注意程度になってしまうだろう
それじゃダメだ。このままではこの魔術団の規律が乱れ、きっと大事になる
ーー嘘を混ぜるしかないーー
これは妥当だ。仕方がない
「エル様、先日こんな現場を見て…」
そうして、ほんの少しだけ、誇張した…偽り…とまではいかない事を話す
「エル様!本当に違うんです!味方に魔法を使ったことは認めます…しかしそれ以外は…! 」
「しかし、証拠も揃っている。言い逃れは出来ない」
証拠は、僕がそこら辺に撒いたものだ
「違う!違うんですよ!」
「追放だ、外へやれ」
その焦った顔を見ていると少し奇妙な感情が湧く
それと同時に、そもそもそんな事をしなければいいのにと思う
しかし、あれはやりすぎただろうか、この時は本当に反省した
それと同時に、エル様の恐ろしさを思い知らされた
その翌日新たな事件は起こった
前日のやつの他にも魔法を使っている奴がいて、そいつが仲間を数人うっかり殺したという
僕はそいつが逃げようとしたのを止めた
「追放…としたいが…普通の法律で裁けば死刑だぞ?」
エル様が冷たい目でそいつを見る
「裁判所の方で裁いてもらうのは…」
誰かが口を挟む
「無理だ。魔術団で起きた事は魔術団内で解決しなければならないんだよ」
「いっそのこと、ここにも死刑制度のようなものを入れれば」
また誰かが口を挟んだ
「いい考えだ。では、すぐ導入しようと思う。異論はあるか?」
誰も何も言わなかった
「では、お前を処分する」
「すみませんエル様!どうか…どうかお許しを…」
「とんでもない過ちを犯したものに与える慈悲などない」
エル様は目の前でそいつを処分してしまったのだった
誰も彼に逆らえないのだ
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