じっと見つめる足元に、虹色の花が咲いている。
7枚の花びらが、円を描く様に肩を寄せ会っていた
草原の真ん中に座り込む私の周りは、無数の虹の花で埋め尽くされている。
花の蜜の香りに引き寄せられた様に、1匹の蜜蜂がやって来た。其の体は黄色と黒ではなく、7色の縞模様だ。
ぶぅん、と羽音をたてながら、美味しい蜜を持つ花を見繕う様に、彼処此方へ飛び回っている。
私はゆっくりと立ち上がり、目的も無く歩き出した。
こつん、とつま先に軽い衝撃を感じて視線を落とした先に、半透明の石が落ちていた。
手の中にすっぽりと収まる程の大きさの其れを拾い上げ、そっと手の平に乗せて、太陽の光に透かす様にゆっくりと動かす。明るく照らされた石が虹色の光を放った。
虹色の石を地面に置き、また歩き始める。
暫く行った処に、向日葵によく似た巨大な虹色の花が群れ咲いていた。
傍に立つと、見上げる程背が高い。3メートル近くあるかもしれない。其れが何十本、と聳え立つ様に生えていた。地面に近づく程大きな葉は、人の頭よりも大きく雨宿りが出来そうな位だった。
其の花びらは黄色では無く、1枚1枚が、外側が赤、内側が紫の、虹色になっていた。
頭の上には虹が咲いている様でため息が出る程綺麗だった。暫く見ると見惚れる。
暫く歩いて抜けると、1本の大きな木が合った。深い緑色のしげる葉と押し隠れてしまいそうな程たわわに実った、林檎の様な果実。
つやつやしていた。表面は赤でも、緑でも無く、虹色だった。蜜蜂と同じ虹色…。
外国のお菓子見たいにカラフルで美味しそうで見ているとお腹が空いてくる。
ぼんやりと見ていると、視界の端で何かが動いた。目を向けると揚羽蝶がひらひら舞っている。虹色の羽根の動きに合わせてひらひらと。虹色の鱗粉がキラキラと降ってくる。
揚羽蝶を目で追っていると、白っぽい虹色の雲がぷかぷか浮かんでいた。其の下を7色の鳥が飛んで行く。赤、橙、黄色、青、藍の鳥達。横並びになって、ゆったりと羽ばたきながら空を横切っていく。飛び去る鳥達の、虹色の残像。
暫く見ていると段々雲が濃くなって来た。すぐに雨が降ってくる。水滴はどれも虹色に輝いていた。雨が上がる。厚い雲が切れて、太陽が顔を出した。空がぱぁっと明るくなる。虹色の光が降り注ぐ。足元の虹の花に着いた虹色の雨の雫が、光を反射して宝石の様に輝き出した。再び目を上げると、大きな大きな虹が、空に架かっていた。
世界を丸ごと包み込もうとするとするかの様に、空の端から端まで覆い尽くしている。
見渡す限り、何処もかしこも虹色でいっぱいだ。
眩い虹色の世界の真ん中で、虹色に煌めく命に囲まれて、私はゆっくりと深呼吸をする。
「又この夢か……」
そう呟いた自分の声で目が覚めた。
じっと毛布にくるまったまま、薄暗い部屋の片隅でゆっくりと瞬きをする。
幼い頃から何度も何度も見ているこの夢…。
虹の草原で、虹色の生き物達と出会う夢だった。
虹の雪原で、虹色の雪が降る中に佇んでいる夢。
虹の砂漠で、虹色のオアシスのほとりにすわって
虹色の月を夢。
虹の空の上で虹色の光を浴びながら、虹色の翼を持った天使に手を引かれ、空を飛ぶ夢。
虹色の熱帯魚や人魚と泳ぐ夢。
場所も、風景も、出てくる生き物とぜーんぶ
“虹色”
虹色の夢、とわたしが 私が心の中で呼んでいる。別に誰に話して聞かせる事もないけど…。其の虹色の世界は兎に角美しくて、何だか迚暖かくて、優しいくて、何時も不思議と『帰ってきた』と云う気持ちになる。
私はゆっくりとベットから這い出して窓辺に立ちカーテンを細く開いた。ひんやりとした冷気が窓ガラス越しに伝わって来る。
優しい虹色で満たされた夢の世界とは全く違う。現実世界はどんより薄暗い灰色に染まって居た。冬空はどうしてこんなに暗いんだろう。夜が明けて朝になっても、真昼間でも、何処と無く暗い様な気がする。これが私の現実だ…。紛れも無い、逃げれない様な現実。
暫くぼんやりと窓の外を眺めてたら、いきなり背後でドアを開く音がした。
「わっ、何、起きてんじゃん」
シックも無くドアを開けた上で遠慮なく部屋に入ってきたのは、お姉ちゃんだ。
「もう。起きてるなら、さっさと降りてきなよ。朝御飯出来てるよ。」
「あ……うん。」
私は目を泳がせながら答える。
「もう、ほんっとのんびりしてるんだから。それに、朝っぱらから元気の欠片も無い暗い顔だし」
「……御免なさい」
また小言か、と思い筒、私は小さく頭を下げた。
「ほら、又そうやって直ぐ謝る。何でも謝れば良いってもんじゃ無いんだから」
お姉ちゃんが溜息を混じり言う。
「勿論気が強けりゃ良いって訳じゃ無いし、控えめとか謙虚とかって言えば聞こえは良いかも知れないけど、余り気が弱いと、損するのは自分だよ?解る? 」
「………」
「本当、一体誰に似たんだかね。お父さんは確かにお喋りな方では無いけど、ちゃんと人の目を見て普通に会話出来るし、お母さんは常に元気溌剌って感じの人だったんだよ?まぁきららは覚えてないだろうけど」
当たり前じゃん、と口答えしたい気持ちをグッと抑えた。
覚えていなくて当然だ。お母さんは私が産まれた直ぐに死んだ。死んだ時生まれたばかりの赤ちゃんだったから、覚えてる訳ない。
私の頭の中にはお母さん断片的な記憶さえも無く、面影すらも残っていない。それなのにお姉ちゃんは一々「まぁ知らないだろうけど」、「覚えて無いだろうけど」と私を…
変な所できります💦また次回.ᐟ
コメント
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あっくーん ふーだよー、アカウント変えた! フォローしてほしいな
わぁ~……雰囲気 神好きやわ~✨