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あま
🥯🧈🌿𓈒𓏸
「それ、いつまで持ってんの?」
朝。
lpがリビングに行くと。
ソファの上に、
白髪のmlが丸くなって座っていた。
……そこまではいつも通り。
でも。
今日は違った。
lp
「……え」
mlの腕の中には。
小さな茶色いくまのぬいぐるみ。
しかも。
ぎゅっと抱えてる。
lp
「……何それ」
ml
「……くま」
lp
「見たら分かる」
思わず吹き出しそうになる。
でも。
mlはいたって真面目な顔。
しかも。
離す気配がない。
lp
「……なんで持ってんの」
ml
「……昨日、棚整理してたら出てきた」
lp
「へぇ」
ml
「……なんか捨てるのかわいそうだったから」
そう言いながら、
またぎゅっと抱きしめる。
……かわいい。
いや。
ぬいぐるみじゃなくて、
お前が。
lp
「……お前、それ何歳から持ってんの」
ml
「……小さい頃から」
lp
「……まじ?」
ml
「……」
少しだけ視線を逸らす。
……照れてる。
lpはもう無理だった。
lp
「……かわい」
ml
「……うるさい」
⸻
昼。
買い物に行く準備。
lpは靴を履きながら振り向いた。
lp
「メルトー、行くで——」
そこで止まる。
……まだ持ってる。
しかも。
普通に片腕で抱えてる。
lp
「……ちょっと待って」
ml
「……何」
lp
「それ持ってくん?」
ml
「……ダメ?」
……っ。
その“ダメ?”はずるい。
lp
「……いや、ダメじゃないけど」
ml
「……ならいい」
当然みたいな顔で玄関に向かう。
lpは後ろからその姿を見て。
……白髪。
ちょっと大きめの服。
くまのぬいぐるみ。
……反則やろ。
⸻
外。
道を歩いていると。
すれ違った小さい女の子が、
mlを見て目を輝かせた。
女の子
「わぁ!くまさん!」
ml
「……?」
女の子
「かわいい!」
すると。
mlは少ししゃがんで。
ぬいぐるみを見せてあげた。
ml
「……触る?」
女の子
「いいの!?」
嬉しそうに笑う女の子。
その光景を見て。
lp
「……」
……無理。
lpの心臓が限界だった。
その後。
帰り道。
lp
「……なぁ」
ml
「……何」
lp
「そのくま、俺にも貸して」
ml
「……嫌」
即答。
lp
「なんで!?」
ml
「……lpに取られそう」
lp
「取らんわ」
ml
「……信用できない」
そう言いながら、
またくまをぎゅっと抱きしめる。
lp
「……」
数秒。
そして。
lpがぽつりと言った。
lp
「……正直、くまに嫉妬してる」
ml
「……は?」
lp
「だって俺よりずっと抱きしめられてるやん」
沈黙。
数秒後。
みるみるmlの顔が赤くなる。
ml
「……っ、ばか」
lp
「ほんまやもん」
すると。
少しだけ迷って。
mlがぽつりと言った。
ml
「……じゃあ」
lp
「ん?」
ml
「……半分貸す」
そして。
くまを抱いたまま。
空いてる方の手で、
lpの服の裾をきゅっと掴んだ。
……終わった。
lp
「……無理」
ml
「……何が」
lp
「好きすぎる」
その日。
lpは本気で、
くまのぬいぐるみに嫉妬した。
夜。
lpが先に風呂から上がって、
リビングに戻ると。
ソファには、
またいつもの光景。
白髪のmlが、
くまのぬいぐるみを抱えて座っていた。
でも。
今日は少し違った。
mlはいつもみたいにスマホを見てるわけでも、
ぼーっとしてるわけでもなく。
ただ静かに、
くまの頭を優しく撫でていた。
lp
「……メルト?」
ml
「……ん」
返事はある。
でも。
なんか、いつもより静か。
lpは隣に座った。
すると。
mlは自然みたいに、
くまごと少し寄ってくる。
lp
「……ほんま好きやな、それ」
ml
「……ん」
lp
「そんな大事なん?」
少しの沈黙。
いつもなら、
“別に”
とか返ってくるのに。
今日は違った。
ml
「……これ」
くまの耳をそっと触りながら、
小さな声で言う。
ml
「……昔、お母さんにもらった」
lp
「……」
lpの表情が少し変わる。
mlは視線をくまに落としたまま、
ぽつぽつ話し始めた。
ml
「……小さい頃、寝る時いつも一緒だった」
lp
「……うん」
ml
「……嫌なことあった日も」
少しだけ。
くまを抱く力が強くなる。
ml
「……これ抱いてたら、なんか平気だった」
静かな部屋。
lpは何も言わずに聞いていた。
ml
「……だから」
少し照れたみたいに視線を逸らす。
ml
「……手放せない」
その一言に。
lpの胸がぎゅっとなる。
……そういうことか。
ただ可愛いから持ってるんじゃなくて。
ちゃんと。
大切な思い出が詰まってたんだ。
lpは小さく笑って。
そっと、
mlの白髪を撫でた。
ml
「……何」
lp
「いや」
優しく笑う。
lp
「ますます好きになったなって」
ml
「……っ」
また顔が赤くなる。
ml
「……そういうことすぐ言う」
lp
「ほんまやし」
すると。
数秒黙ったあと。
mlがくまを少し抱え直して。
ぽつり。
ml
「……lp」
lp
「ん?」
ml
「……これ、大事だけど」
少しだけ。
恥ずかしそうに視線を逸らす。
ml
「……今はlpがいるから」
……。
lpの思考が止まる。
ml
「……前より、ちゃんと眠れる」
その瞬間。
lpは顔を覆った。
lp
「……無理」
ml
「……何」
lp
「急にそういうこと言うなって」
ml
「……ほんとのことだし」
……反則。
lpはそのまま、
くまごとmlを抱きしめた。
ml
「……っ、苦しい」
lp
「知らん」
白髪に顔を埋めながら。
lp
「そんなこと言われたら、離せるわけないやろ」
その夜。
くまのぬいぐるみは、
いつもみたいにmlの腕の中にいた。
でも。
もう片方の腕には。
休日の午後。
lpはキッチンで飲み物を用意していた。
リビングからは、
いつもの静かな空気。
たぶんmlは、
またソファでくまのぬいぐるみ抱えてるんやろな。
そう思いながら、
コップを持ってリビングに戻ろうとした。
その時。
ビリッ
……嫌な音がした。
次の瞬間。
ml
「……っ」
小さな声。
lpはすぐリビングへ向かった。
lp
「メルト!?」
そこにいたのは。
ソファの前で固まっているml。
そして。
その手の中には。
片腕の縫い目が裂けて、
綿が少し飛び出してしまったくまのぬいぐるみ。
lp
「……あ」
一瞬で状況を理解する。
たぶん。
抱きしめた拍子に、
古くなってた糸が切れたんだ。
でも。
lpが気になったのは、
ぬいぐるみじゃなかった。
mlの顔。
……真っ白だった。
lp
「……メルト」
ml
「……」
返事がない。
ただ。
壊れたくまを見つめてる。
いつも無表情に近いmlなのに。
今は。
今にも泣きそうな顔をしていた。
lp
「……大丈夫やって」
近づこうとする。
でも。
mlが小さく首を振った。
ml
「……触らないで」
lp
「……」
その声は、
少し震えていた。
ml
「……俺が悪いから」
ぎゅっと。
壊れたくまを抱きしめる。
綿が少し出てしまうのも気にせず。
ml
「……もっと大事にしなきゃだったのに」
ぽつり。
その声が。
思ってたよりずっと苦しそうで。
lpの胸が痛くなった。
lpは何も言わず、
ゆっくり隣に座った。
そして。
少し間を空けてから。
lp
「……貸して」
ml
「……嫌」
即答。
でも。
声が少し泣きそうだった。
lp
「大丈夫」
優しく言う。
lp
「取るんじゃなくて、直したいだけ」
静かな部屋。
数秒。
十数秒。
そして。
mlは小さく、
くまを差し出した。
その手が少し震えていた。
lpはそっと受け取る。
そして。
裂けた部分を見て。
lp
「……ん、直せそう」
ml
「……ほんと?」
lp
「俺を誰やと思ってんねん」
少し笑う。
すると。
mlの表情がほんの少しだけ緩んだ。
⸻
数十分後。
裁縫道具を持ってきたlpは、
真剣な顔で縫っていた。
mlはその隣で、
ずっと見ている。
lp
「……そんな見られたら緊張する」
ml
「……ちゃんと見てたい」
lp
「なんで」
ml
「……大事だから」
その言葉に。
lpは少しだけ笑った。
そして。
最後の一針を終える。
lp
「……できた」
ml
「……っ」
くまは、
少し縫い目が残っていたけど。
ちゃんと元通りになっていた。
mlはそっと受け取って。
ぎゅっと抱きしめた。
……そして。
ぽろ。
一粒だけ。
涙が落ちた。
lp
「……っ」
ml
「……よかった」
小さい声。
lpは優しく笑って。
そのまま、
白髪を撫でた。
lp
「古くなって壊れることはあっても」
優しい声で言う。
lp
「大事にしてた気持ちは、壊れんよ」
その言葉に。
mlは少しだけ目を潤ませたまま。
lpの服をきゅっと掴んだ。
ml
「……ありがとう」
lp
「ん」
少し笑って。
lpはくまごと、
mlを抱き寄せた。
lp
「でも」
ml
「……?」
lp
「次壊れそうになったら、先に俺呼んで」
ml
「……ん」
そして。
くまのぬいぐるみには、
小さな縫い目が残った。
でもそれは。
壊れた跡じゃなくて。
大切にされた証みたいだった。
ちゃんと。
lpがいた。
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