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透明なあなたへ

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透明なあなたへ

1 - 第1話

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2022年09月25日

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ふう…

ため息と共にパソコンを閉じた。

先日、同じグループのメンバーのYouTube登録者が10万人を超えた。

それはもちろん嬉しいし、誇らしくもある。

他のメンバーも順調に登録者数を伸ばしており、近いうちに10万人に到達するだろう。

自分も着々と登録者数を伸ばしており、1人で頑張っていた頃に比べたら目まぐるしいほどの伸びだ。ありがたいと思っている。

しかし他のメンバーと比べるといまいち劣っているのは明らかだ。

自分は他のメンバーとは少し毛色が違っていた。

それはメンバーたちも承知していて、そのうえで迎え入れてくれている。

メンバー達に慕われていることを疑っている訳では無い。頼りにされているとも感じている。

最年長なこともあるし、頼られるのが嫌ではない。むしろ頼って欲しい。

でも

「俺、いつまであいつらといられるんやろうな。」

他のメンバーは自分を追い抜いて行く。

いつか、自分は必要とされなくなるのではないか、そうなったらどうしたらいいだろう。

そんな暗い考えが、時々、本当に時々浮かんでくる。

「あー、やめやめ。柄じゃない。」

頭を振って何とか暗い考えを追い出し、気分転換にとコンビニへと向かった。


カタン、と小さな音が聞こえた気がした。

「ん…?」

音のした方を向くと、何かが光った。ビルの隙間に小型の額縁が立てかけてあることに気が着いた。街灯の光が反射してひかっていたらしい。

額縁には1枚の風景画がはいっていた。草原の真ん中に湖。そして、湖のなかには腰まで水に浸かった1人の少女が描かれていた。

少女はどことなく悲しげで、自らの手に掬った水を眺めていた。

何故か、目が離せなくなった。

気が付くと、悠佑はその絵を持ち帰っていた。

帰宅すると、悠佑はその絵をリビングの壁に掛けた。

「今まで絵画なんて興味なかったのにな。」

なのに。どうしようもないくらい惹かれていた。

どのくらい眺めていただろう。

ふと、絵の中の少女が顔を上げた。

悠佑の目と、少女の目が合う。

悠佑の足が、額に向かって1歩前へでた。





「んー…」

ないこは困惑していた。

今日はメンバーとの打ち合わせがあるのだが、悠佑が来ない。

今までも配信で遅くなったり、滅多にないが寝坊して遅れることはあった。だがそんな時は必ず連絡してくる。昨日用があって電話した時はなにも言っていなかったし、今日は配信日でもなかったはずだ。

「アニキ、連絡つかないん?」

ifが心配そうに聞いてきた。

「うん…。電話にも出ないんよ。」

「どうしたんだろ。また、頑張りすぎて倒れてたりして。」

「ちょっと、りうちゃん縁起でもないこと言わないでよ。」

「うーん、有り得なくもないからな。ちょっと様子見てきた方がいいかな。」

「じゃあ、りうらも行く。」

「あ、じゃあ俺も…。」

「いや、あんまり大勢で行ってもな。とりあえず俺とりうらで行ってくるわ。」

「わかった。なんかあったら連絡して。」

「わかった。」


悠佑の家のチャイムを押すが、反応はなかった。

念の為と持ってきた合鍵をさしこむ。

「あれ、開いてる…?」

家の鍵はかかっておらず、すんなりとドアが開いた。「…アニキー…?」

玄関で声をかけるが、やはり反応はない。

変だ。

2人は慌てて上がり込み、手分けして家の中を見ることにした。

悠佑の部屋のドアを開けるif。悠佑の姿はない。部屋が荒らされている様子はなく、少しだけほっとした。

パソコンは閉じられている。キーボードの横には飲みかけのコーヒーが入ったマグカップ。まるで今まで誰かがいたような光景だった。

しかしコーヒーは冷めきっており、椅子に人の温もりはない。なんとなく湧き上がる不安を抱えながら、ifは悠佑の部屋をでた。


「アニキー」

何故か小声で悠佑を呼びながら、りうらは片っ端からドアを開けて行った。トイレ、浴室、納戸。どこにも悠佑の姿はない。

「ん?」

リビングまで来て、首を傾げる。

ママにきと言われるだけあって、悠佑の家は掃除が行き届いている。キッチンシンクにも洗い物はひとつもない。なのに、リビングのテーブルの上にコンビニの袋が無造作に置かれていたのが気になった。

なかにはメロンパン。レシートを見ると、昨晩購入したもののようだった。

辺りを見回すりうら。

と。

何かが気になった。

あれ、今…

「りうら?」

ifに声をかけられ、りうらの感じた違和感は霧散した。

「まろ、なにかわかった?」

「いや、特には…。そう聞くってことは、こっちも何もなし、か。」

ifが舌打ちしながら頭を掻きむしっている。

「とりあえずこれ以上の収穫は無さそうだし、一旦帰るか。」

「そうだね。ひょっとしたら行き違っただけかもしれないし。」





しかし、5日たっても悠佑の行方は分からなかった。

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