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夜。
国中の明かりが少しずつ消えていく時間。
王国の中心にある勇者の宿舎にも、静かな夜が訪れていた。
その屋根の上を、一つの影が音もなく駆ける。
黒いマントを翻しながら、葛葉は王国の中を見下ろしていた。
葛葉
「……思ったより警備、薄いな」
この国の魔王。
本来ならば、王国とは敵対している存在。
そして葛葉自身も、この国を自分のものにすることを目標としている。
だが――真正面から攻め込めば、それなりに面倒だ。
兵士との戦闘。
国民の抵抗。
勇者との戦い。
考えるだけで面倒くさい。
だからこそ。
葛葉
「勇者誘拐したら、どうなんだろ」
ふと、そんな考えが浮かんだ。
勇者はこの国の象徴。
魔王を倒すために選ばれた存在。
そんな勇者が突然いなくなったら。
国民は混乱する。
王も焦る。
兵士たちは勇者を探すために動き回る。
その隙に――。
葛葉
「……色々できそうじゃん」
ニヤッと笑う。
そして今夜。
葛葉は王国へ侵入した。
目的は一つ。
勇者、叶の誘拐。
◆
勇者の部屋。
葛葉
「……ここか」
窓から中を覗く。
部屋の中央にはベッド。
そこには――。
叶が、すやすやと眠っていた。
葛葉
「…………」
葛葉は少しだけ拍子抜けする。
葛葉
「警戒心なさすぎだろ」
勇者という立場なら、もう少しくらい警備が厳重でもいい。
そう思いながら窓を開ける。
カチャ。
それでも叶は起きない。
葛葉
「……マジ?」
ベッドの横まで近づいても。
起きない。
葛葉
「勇者ってこんなんでいいの?」
返事はない。
完全に熟睡している。
葛葉は少し考えたあと――
葛葉
「ま、いっか」
叶を抱き上げる。
それでも起きない。
葛葉
「…………軽」
そのままマントで叶の姿を隠し、葛葉は夜の王国を抜けていった。
◆
魔王城。
重い扉が閉まる。
ギィィ……。
葛葉は腕の中の叶を一度見下ろした。
葛葉
「……ほんとに起きねぇな」
ここまで来ても、叶は眠ったまま。
葛葉はそのまま城の地下へ向かう。
長い階段を下りる。
そして――。
魔王城の最奥。
鉄格子の並ぶ牢獄。
葛葉
「ここでいいか」
そっと叶を牢屋の中へ運ぶ。
ベッド代わりの簡素な寝台へ寝かせる。
葛葉
「……よし」
これで勇者は、自分の城の中。
王国にはいない。
明日の朝になれば、きっと大騒ぎになるだろう。
葛葉
「国中パニックだろうなぁ」
少し楽しそうに笑う。
そして葛葉は牢屋の扉を閉めた。
ガチャン。
鍵をかける。
葛葉
「さて……明日からどうすっかな」
そう呟きながら、葛葉は牢獄を後にする。
静まり返った地下牢。
そこには――
未だ眠ったままの勇者、叶だけが残された。
そして。
しばらくして――
叶の指先が、ほんの少し動いた。
#にじさんじ
蜂蜜~🍯。
76
N
13
189
#勇者
りな
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コメント
1件
うわ、これはまた大胆な作戦に出たな…!魔王が勇者を拉致するって発想が面白いわ。しかも熟睡してる勇者を軽々抱えちゃう魔王の余裕よ。最後の指先が動いたところ、これ次どうなるんだろ…超気になる🔥 戦闘ナシの回だったけど、静かな夜の緊張感と魔王の飄々とした雰囲気がめっちゃ良かった!