テラーノベル
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「 お父さん 、このゆびわほしい! 」
「 …… それはまだ早いな 」
「 ええ 、なんで? 」
「 大人になって 、 その指輪に相応しい女の子になったらあげるよ 」
「 ほんと?約束だからね! 」
「 ああ 、約束だ 」
鼻の奥にこびりつくような
重い煙の匂い 。
息を吸うたびに 、
煙が入り込んで咳き込みそうになる 。
苦しい …
重たい瞼を 、無理やり持ち上げる 。
「 運がいいのか 、悪いのか 」
ぼやけた視界の中で 、
黒いコートが揺れていた 。
火の残り香の中で 、
その黒だけがやけにくっきりと 見える 。
整った顔立ち 。
似つかわしくない 、 穏やかな表情 。
「 指輪は? 」
『 …っこ…こ… 』
震える指で喉元を指す 。
渡さない 。
そんな意地だけで 、どうにか笑みを作る 。
「 ほう … 面白い 。」
その言葉と同時に体がふわりと浮いた 。
「 なら 、切り落とせばいいネ 」
誰かが私に言った 。
だけど 、この男は首を縦に振らなかった 。
その一瞬だけが 、
やけに鮮明に焼き付いている 。
___そこから先は 、覚えていない
とある富豪の屋敷が、盗賊に襲撃された。
警備員も、使用人も、皆殺し。
一人娘は、代々受け継がれてきた宝石__
その指輪を渡すまいと、飲み込んだ。
しかし、逃げる最中、三階から落下。
助けが来た頃には、屋敷は焼け落ち、
ただの焼け野原になっていた。
___だが。
娘の遺体だけは、見つからなかった。
「 … とまあ 、ここまでが昨夜の顛末だ 」
パタリと男の本が閉じられる 。
まるで退屈な読み物でも
語り終えたかのような 、軽い声音だった 。
その言葉で断片が蘇る 。
服に付着した血液と焦げた匂い 。
喉に残る違和感 。
そして何より、盗賊の男 。
『 … っ! 』
息を呑んだ瞬間 、肺が痛む 。
「 不用意に動くな 。」
「 致命傷は避けているが 、 落下の衝撃は残っている 」
黒い瞳が 、静かにこちらを射抜いた。
『 … だ …… れ ……… 』
声が 、うまく出ない 。
自分のものじゃないみたいに掠れている 。
熱い 。
喉の奥が 、まだ焼けているみたいに 。
怖い 。
逃げたい 。
…… 助けて 。
誰でもいいから 。
すると 、
両頬にあたたかい手のひらが触れた 。
びくり 、と肩が跳ねる 。
逃げようとするが 、うまく力が入らない 。
『 … はっ …… な … し … て ……… 』
ようやく絞り出した声は 、
情けないほど弱かった 。
「 … 落ち着け 」
低く 、静かな声 。
強くもないのに 、逆らえない響きだった 。
親指が 、そっと頬をなぞる 。
まるで宥めるように 。
『 …… だれ …… 』
乱れていた呼吸が 、 わずかに整う 。
自分でも分かるくらい 、
呼吸が落ち着いていく 。
どうして 、この人の言葉で 。
「 名乗る必要があるか? 」
…… 、
「 … まあいい 」
指先が頬から離れる 。
名残惜しいように 、ゆっくりと 。
「 俺はクロロ 。盗賊だ 。」
クロロ 。
その名前が 、
頭の中にゆっくり沈んでいく 。
「 君の名前は? 」
『 ……… 』
答えるつもりなんて毛頭ない 。
「 そうか 、それならこうしよう 」
ほんの少しだけ 、口元が緩む 。
その変化を見た瞬間 、嫌な予感がした 。
「 君が名前を教えてくれたら 、
時間の許す限り質問に答えてあげよう 。」
『 … っ ……… 』
聞かなきゃいけないことがある 。
… どうしても 。
『 ……ネア…ネア・クローネル 』
言ってしまった 。
その瞬間 、
何かを差し出してしまった気がした 。
「 ネア 、か 。」
ゆっくりと 、繰り返される 。
味わうみたいに 。
その響きを確かめるように 。
『 …… っ答えて… 』
『 …… お母さんとお父さんは … 』
「 ああ 、殺したよ 」
あまりにも 、あっさりと 。
まるで 、どうでもいいことのように 。
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コメント
5件
ああああああああああああああ推しいいいいいいいいいいあああああああああああああああああああああああああ
あああもう大好きだして欲しいって言ってすぐ出してくれるのほんとに大好き 胸がドキドキしすぎて苦しいですこれは恋、? 最初の始まりから最後までりんかの魔法が散りばめられていてほんとに大好き🤦🏻♀️ クロロがなんで生かしたのかも気になるしフェイがフェイすぎるし、事件のことちゃんとななめ文字にして記事みたいにしてるのもこだわり詰まりまくっててだいすき
らぶ