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約束のスノードーム

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約束のスノードーム

16 - 第15話 迷走していた悩み

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2025年03月01日

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〈radao side〉


その日を境にぺいんとは頻繁に体調を崩すようになった。

それが何を意味しているのか俺もぺいんともわかっていたのだと思う。でも俺はそこで明るく振る舞うとか、いつも以上に優しくするとか、そんなふうに気を使うことをできるような器用な人間じゃないから、ただ隣で身体も心も弱っていく彼のそばにいることしかできない。

ただ待っているだけのこの時間が悔しくて、それでも大切なんだってことに気づけていたのなら、、、

彼をここに居させるために焦っていた。




草木はあっけなく綺麗な紅葉を身に纏うのを諦めて、動物たちは少しの食糧を腹にためては眠りについて、町は静かに雪を待っていた。

厚い雲に覆われて色褪せた庭を二人で眺める。

山の中、たった二人で温もりを忘れないようにと手を握りながら。



rd 「明日外せない用事があるんだけど、」



俺は申し訳なさそうに彼に伝える。



pn 「わかった、行っておいで」


rd 「一応きょーさんが家に来るから。」


pn 「院長か、久々に会うなー」



本当は一刻も離れたくないんだけど、明日は大きめの病院に行ってぺいんとの治療のための研修を受けにいく。



pn 「そんなに申し訳なさそうにすんなって笑」


pn 「僕、平気だよ」



そんなにもわかりやすい嘘を俺が見抜けないわけがない。でも今回だけはその嘘に甘えるしかなかった



rd 「できるだけ早く帰ってくるから」


pn 「ん、」



柔らかい髪を撫でて、耳に触れて、頬をなぞって、外を眺めるその高い鼻に長いまつ毛を見ていた。

すると彼は思い出したかのように俺の方に顔を向けてゆっくりと話す



pn 「らっだぁ、あのさ、、」


pn 「、、、、やっぱなんでもない」


rd 「、、、。」


チュッ


rd 「わかりやすいんだよ、ぺいんとは」



幼い子供のように溶けた笑みを浮かべる彼がどうしようもなく愛おしくて心臓が音を奏でていた。


…………………………………………………*


ピンポーン


ーーー来ったよー?


rd 「ちょいまちー」



rd 「いらっしゃーぃ、、、え。」


rd 「何でそんな汗だくなの」


ky 「お前の家、 車降りてからが長すぎやて」


rd 「運動のしなさすぎなだけでしょ」


ky 「誰が豚だって?」


rd 「何も言ってないが?」



相変わらずダラダラと話しながら、汗を拭いてもらっているついでにぺいんとの様子や食事こう言う時はこうして欲しいなどを簡潔に伝えて居間へと案内をしてぺいんとを任せた。



rd 「ほんじゃあ来てもらって早々悪いけど俺行ってくるから。」


ky 「あいよー」


rd 「ぺいんと、行ってくるね」


pn 「あっ、らっだぁ待って」


pn 「これ、持って行って」



休憩時間とかに読んで、といわれて託されたのは一つの紙袋。中身はまだ見るなと言うから正直めちゃくちゃみたいけど我慢することにした



rd 「んじゃ、行ってきまーす」



rd 「、、あっ、 ぺいんとが顔見つめてきてもキスしちゃだめだよきょーさん。」


pn 「んなっ!?」


ky 「え、どゆこと」


ガチャンッ



さりげなく俺のだということを証明して鼻歌を歌いながら満足げに家をあとにした。


〈peint side〉


らっだぁ、やってくれたな。

この空気どうすればいいんだよぉ、、、

らっだぁは院長と前から仲がいいらしいけど、俺は友達ほどの仲じゃないし気まずいって



ky 「らっだぁとぺんちゃんってそういうことだったのかー、」


pn 「あっいや、これは違くて、、いや違くはないんですけど」


ky 「よかったぁ」


pn 「、え?」


ky 「まだ病院離れる前のぺいんと君は死ぬのをただぼーっと待つだけみたいだったけど、生きたいって思える理由ができたなら誇るべきことだよ」



なぜだかその言葉が胸を締め付けた。

今まで二人の世界で生きていたから、誰かに認められるだとかそういうのには期待していなかったから。



pn 「でも俺、欲張りになっちゃいました。」


pn 「孤児院にいた時よりも、病院にいた時よりも欲張りになって死ぬのが怖くなりました」


pn 「多分死んだら未練たらたらだから幽霊にでもなって居残りしちゃうかも」



何言ってるんだ俺、

これじゃまるで、まるで、、、



ky 「もうすぐ死ぬみたいな言い方やな」



背筋が伸びる感覚がした。あるいは瞳孔が開いたような、手汗を握りしめるような、、、

死を悟っているのは多分俺だけじゃない。

院長も、俺も、多分らっだぁもわかってる。

わかっているけど目の前がぐらぐらして歪んで今までの幸せが崩れるみたいで、それがやっぱり怖かった。


pn 「、、、なんとなくですよ。最近はできないことが増えてきたし」




pn 「死が怖くならないようにするなんて考えるほうが無謀ですかね。」


ky 「何が怖い?」



pn 「今の幸せが崩れるのが怖いです。らっだぁをおいていってしまうことが、ひとりにさせてしまうのが怖いです」








ky 「、、、それ多分やけど」




ky 「いちばんは自分がひとりになるのが怖いんとちゃうん?」



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