……………もう…卒業か。
そう呟くのは2人の男女。
男の名前は春風 楓(はるかぜ ふう)
女の名前は 櫻崎 弥燐(さくらさき みのり)
2人は幼馴染。家族ぐるみの仲でよく春になると2人の家族全員で桜を見に行った。それは中学3年になった今でも続いている。
だが、弥燐は少し浮かない表情をしている。
何故だろうか。
僕たちは2人別々の高校に受かった。本当は弥燐と同じ高校に進学したかったが、自分の学力では到底受からない所だった。
離れ離れになってしまう事が辛いのか、?
(実はね…………)
(私が行く高校って、、遠いじゃん、?)
(だから、、家族みんなで引っ越す事になっちゃったんだよね…………)
僕は驚いた。確かに彼女が行く高校は遠くて、電車を使わなければ通学出来ない距離にあった。
だが、まさか弥燐の家族全員引っ越してしまうなんて……思ってもいなかった。
もちろん離れて仕舞えば疎遠になってしまう可能性だってある。桜も、今年で最後になってしまうかもしれない。
せめて………引っ越す前に…最後にあそこの公園の桜を2人で見たい…………
(ちなみに……引っ越すのは後2週間後。)
卒業式が終わった後の人気が無くなった校庭の大きな桜の木の下で僕は大きな声を出した。
「じゃあ、!!引っ越す前に、!!絶対に2人で桜見に行こう、!!」
弥燐は一瞬驚いたような顔をしたがすぐに笑顔に変わった。
桜のような明るくてどこか不思議と人を引き寄せてしまいそうな笑顔だった。
(うん………!約束だよ!)
ー数十分後ー
家に帰って来た。
《おっ、!楓!!おかえりー!卒業おめー!》
太陽のように明るい声で僕を迎えたのは姉の春風苺 (はるかぜ いちご)だ。
相変わらず元気で明るい人だ……
姉はかわいい名前とは裏腹に、髪は短く、ボーイッシュな感じだ。
《どしたのー?浮かない顔してー》
僕は姉に今日起きた出来事を全て話した。勿論、弥燐が家族と一緒に引越してしまうことも。
話した途端、姉は大きな声を上げて驚いた。
それは廊下を通り越して外まで聞こえてしまいそうな声だった。
《えー、、じゃあ四葉も転校しちゃうの、、?》
四葉君とは、弥燐のお兄さんの名前だ。
というか、何故姉は当然の事を聞いているのだろうか。
「家族全員って言ったら四葉君も入ってるでしょ………」
《てか、!それ!私も着いてく!!》
僕は驚いた。何故姉が僕に着いてくるのかと思った。
2人でって言ったのだから、着いてこなくてもいいのに。
だが、大体予測はついている。
「なんで着いてくるんだよ……………」
《だってそうすれば四葉に会えるでしょ?》
やっぱりそう言う事か。
「いや……会えないでしょ………」
《いや、あいつシスコンだから!絶対に弥燐ちゃんに付いてくるでしょ!》
そういえばそうだった。だが、姉も大概だ。よく僕に付いておいて言えたよね………
《じゃあ!楓のデート計画、お姉ちゃんが手伝ってあげるわ!!服選び位なら協力してあげる!》
まぁ、姉の服選びはいつも当たりだから大丈夫だろう。
姉の服のセンスだけは尊敬できるかもしれない…
それから。あっという間に日は過ぎていき、ついに当日となった。
いつも毎年行っている見慣れた公園。ここに行くのも今日で最後になってしまうのかと思うと寂しくなってくる。
少し風が吹いているのか桜の花びらがひらひらと舞っている。
少し時間が経った頃、僕の目の前に人影が見えた
目の前には身長差がある男女が2人。
たぶん弥燐と四葉君だ。
(おはよう……!!)
【おはよう。、】
弥燐は今日のためにおしゃれして来たのだろうか。
いつにも増してかわいい。
よく見ると、君の髪には桜の髪飾りが付いている。
今日のために用意したのだろうか………、?
《じゃっ!四葉と私は違う所行ってるから、2人で楽しんできてね〜!》
姉と四葉君はどこかへ行ってしまった。
でも、これでやっと2人きりになれた。
タイミングが良かったのか、桜が満開な時に来れたようだ。
(桜…綺麗だね!!)
「さっ…桜も綺麗だけど、、君も綺麗だよ!」
今日は雲一つない晴れ。太陽が輝いているからか、桜も輝いているように見える。
その後、屋台でイチゴのスイーツを食べた。君はとても幸せそうな顔で食べていた…
昼には桜の花びらを手の上に乗せたりもした。その時、君は嬉しそうに微笑んだ。
今までは、家族全員で行っていたため、行動範囲は制限されていたが、今は2人きり。2人で広い公園内を歩き続けた。
学校での昔話も盛り上がり、
今日は、卒業式以上の最高な一日となった。
数時間後。楽しかった時間という物はあっという間に過ぎていった。
夕方。夕焼けとともに輝く桜と弥燐。とても美しい。
まだ伝えられて居ない気持ちがある。言うなら今言わないと居なくなってしまう。
大きな声で弥燐を呼び止めた。
「みっ、、弥燐の事が、!すっ、好きです、!」
(………!!あははっ、、!実は……私も!)
(離れてても…付き合えるよね、?)
「えっ、あっ、、たぶん、!!」
(ふふっ…じゃあ、、楓、!付き合ってください、!)
「………、!!!もちろん!!!」
(離れていても、、たまに連絡してよ、?)
「うん……!!」
俺たちは。大きな桜の下で付き合った。
ーーーーーーーーーーーーーー
ー数年後ー
「行って来ます!!」
僕は普通の会社に就職した。
あの時の桜の木の下は今でも通勤するときに通っている。
いつでも弥燐に会えるように……………
僕がいつも通り桜の木の下を通っていたその時、
見覚えのある長い髪と髪飾りの女性を見つけた。
最初は似ている人かと思い声は掛けなかったが、
女性がどんどん僕の方へ近づいて来て僕に話しかけた。
(久しぶり…!!元気だった?)
ーfinー
コメント
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うわあああああ!!!尊い… 改めて参加ありがとうございました!結果発表までお待ちください!
あぁぁぁぁいい話だぁぁぁぁ!(彼氏いる奴が何言ってんだbyヴィレ)