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霊夢は、歴史に残ると思う。
歴代の巫女の中でもかなり好かれてて。
おまけにとんでもなく強い。
世界に『霊夢』と名付けられた花まで生まれた。
ただのバカの悪ふざけだったのかもしれないけれど。
確かに人々の記憶には刻まれた。
もう私達だけの霊夢じゃないんだ。
私が後世に霊夢を伝えられなくても、私の周りが覚えてる。
霊夢の周りの妖怪共がいつか忘れてしまっても、世界が覚えている。
安心して後を任せられる。
霊夢が歴史に残ればいい。
私が一緒に残る必要は、ないんだから。
私は…まぁ、そこそこ有名だとは思う。
博麗の巫女の隣に立つ人間として、そこそこ強い自信はある。
何度だって霊夢の隣に居続けた。
何度だって霊夢を追いかけ続けた。
世界で1番霊夢が好きだった。
不器用なとこも、ツンデレなとこも、こっちが弱ってたらそれとなく気遣ってくれることも知ってる。
足りない。
足りなかったんだ。
もっと強くなりたい。
霊夢を守れるようになりたい。
だけど霊夢は強いから、自分のことは自分で守っちまう。
だから私は強くなる。
もっと。
もっと、もっと。
もっと、貪欲に―――
気づけば、私は人間じゃなくなってた。
種族としての魔法使い。
それは、人外に成り下がることを意味する。
いつだって隣だった霊夢はいつしか正面になった。
私は今日ここで死ぬ。
最愛の人に、手を下させて―――?
…あれ。
私、最低じゃん。
かつての友達を殺させるなんて、させちゃいけなかった。
霊夢を守りたくて、霊夢を傷つける。
どうせなら、森に生えたキノコのようにひっそりと消えたかった。
それか、霊夢の隣でこれ以上ないくらい綺麗に、派手に散りたかった。
こんなの誰も望んでないな。
やっちまった。
…何より大切な霊夢が、歴史に残るなら。
もうそれでいっかって思う自分もいてさ。
私は結局何がしたかったのか、やってるうちに全部忘れちまった。
いや、何もしてないなあ。
自分のこめかみに人差し指を当てる。
高威力なんていらないから、八卦炉は使わなくて大丈夫。
じゃあな、霊夢。
生まれ変わったらまた会おうぜ。
指から放たれた金色の光が視界を丸ごと覆った。
私は死んだ。
空いた霊夢の隣は、違う誰かのものになるのかもしれない。
あるいは、もう埋まらないかもしれない。
大丈夫。
霊夢ならきっとなんとかやっていける。
だから…だから、さ。
私のことなんてどうか、忘れて下さい。
大事な貴方を守ろうとして傷つけた私が、貴方の中に残る資格はない。
誰かの記憶に残る必要だなんて、ないのだから―――
博麗神社の裏手に、小さな墓標がある。
無造作に被せられたとんがり帽子は随分綺麗だ。
遥か昔、狂った魔女が博麗の巫女を襲い、巫女の圧倒的な強さで撃退された、と言い伝えられている。
嘘か本当かは、昔の彼女らを知る人にしか分からない。
遠い遠い昔に、親友だった彼女の手で供えられた黒い鬱金香も、今しがた供えられたように綺麗で。
その花が持つ意味を、彼女はきっと知っていた。
最期まで忘れてくれ、と願った親友への無言の反発。
止められなかった少女と、止まれなかった少女の過ちを悔やむように、冷たい風に揺れる。
あれから時が経ち、とっくに朽ちた神社を管理する者もいないのに。
枯れることすら許されないかのように、今日も黒い鬱金香は咲き続ける。
過去を遡り続け、時間さえも超越して。
自分のことを忘れて欲しいと願った少女も、命尽きるその瞬間まで忘れなかった少女も、もういないというのに。
―最も傷つけたくなかった貴方を傷つけた私のことなんか、どうか忘れて下さい。
―私はアンタを目の前で死なせた。だからこそ、絶対に忘れてやらない。
相反する2つの願いは幻想郷がなくなった後も続いていく。
――貴方は、今でも私の光。
はおと/ペア画中
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