恋はまったり

目黒は寝室で休んでいる。「体調不良」・・渡辺の嫌いな言葉。

ソファで、目黒のパーカーを抱きしめて小さな声で泣いている。

目黒が起きて来ないよう、パーカーに顔を押し当てて、泣く。

渡辺ー泣いちゃだめ、泣いちゃだめ。

キッチンに向い、携帯で、お粥の作り方を調べる。

何かを入れるという発想がない。

基本中の基本。「何も入ってない白粥」を作った。

後片付けも済んだころ、寝室のドアが開く音が聞こえてきた。

勤めて明るく振る舞う。

悲しくて泣いてばかりの渡辺を封印して笑う。

目黒ー翔太くん、何してた？

渡辺ー何か食べないとって思って、お粥作った。

目黒ー翔太くんが？

渡辺ー携帯見ながらなら、俺でも作れますぅ。

目黒ー食べる。

渡辺ーソファに持って行くから、何か羽織ってきて。

目黒ーこのパーカーでいい。

渡辺ーだめ！

渡辺はお粥を器に取り分けているところで、手が離せない。

目黒は、パーカーを手に取って気がつく。たくさんの涙の跡。

何も言わず、パーカーの袖に腕を通す。渡辺がそろりそろりとトレイに載せて運ぶ。

目黒ーいただきます。

渡辺ーしっかり食べて？

目黒ー優しい味がする。

渡辺ーホント？

目黒ーうん、美味しい。

渡辺は泣きそうになるのを堪えて笑う。目黒の食器を片付け、コーヒーを淹れる。

渡辺ーコーヒー飲める？

目黒ーん、大丈夫。

渡辺ー美味しいの、淹れてやる。

目黒ー楽しみ。

目黒は、不思議な感じがしてる。

泣き虫の渡辺が泣かない。

でも、パーカーには涙の染みが多数。でも泣かないし笑ってる。

違和感を感じてしまう。

目黒ー翔太くん、もうちょっと寝るよ。

渡辺ーん、俺、帰ろうか？

目黒ー起きたとき、寂しいからいて？

渡辺ーん、さぁ、寝た寝た。パーカー脱いで。

目黒は、寝室のドアを閉めて、ちょっと開ける。しばらくすると、渡辺の小さな泣き声が聞こえてくる。

渡辺ー頑張った・・よな？んっんっ〜んっ。

目黒は、たまらず、渡辺を抱きしめる。パーカーに顔を押し当てて泣いている。

目黒ー何で、俺の前で泣かないの？

何で、無理するなって叱らないの？

渡辺ー辛いのは、俺じゃなくて、目黒だから。まだ怠いんだろ？眠ってる方がいいんだろ？俺の心配してる場合じゃない。

目黒ー翔太くん・・。

渡辺ー俺は、泣くだけで、何の役にも立たない。だから、元気になって会えるまで、ここに来ない。

目黒ー・・分かった、早く元気になって迎えに行く。

だが、渡辺は家でも泣く。

目黒の部屋みたいになっているから、どこを見ても、どこにいても、目黒を感じて泣く。

ソファでパーカーを抱きしめて眠る。

目黒の家には、ラウールが行っていると聞いた。元気になっているのだろうか？

パーカーを涙でぐちゃぐちゃにしてしまって、その度に洗って、なんかくたびれてきた。

新しく買おうと思って、全く同じとはいかないが、似たようなものを買った。

買い物から帰って来たら、目黒が渡辺の家にいた。顔色も良く、元気に見える。

目黒ーおかえり。

渡辺ー・・ただいま。

目黒ー買い物？

渡辺ー目黒のパーカーだめにしちゃいそうだから、新しいの買った。

目黒ー俺にくれる？

渡辺ー気に入らないかも・・。

目黒ー着る着る。これ好きかも。

渡辺ーFENDIじゃないぞ？

目黒ー服が、全部それじゃないよ。

渡辺ー元気になった？

目黒ーん、ラウが来たら困るから、こっちに来た。

渡辺ーんっんっ〜んっんっ。

目黒ーおいで。

泣きながら抱きついてきた、渡辺に熱いキス。何度もキス。

渡辺が首を振る。ホントは抱き合いたいけど、我慢する。

渡辺ー横になって？

目黒ーん？

渡辺ー俺の膝でゆっくりして？

目黒ー翔太くん。

渡辺ーもっともっと元気になったら、抱きしめて重なり合って過ごす。今はまだゆっくりして。

目黒ー元気なのに。

渡辺ー復帰？

目黒ーもうしてる。だから・・。

渡辺ーだめ、キスだけでいい。

目黒ーいいの？

渡辺ーんっ、いい。会えて嬉しい。

目黒ー次に来たら、待ったはなしね。

渡辺ーんっ。

目黒ーもう少し、ゆっくりしていい？

渡辺ーん。元気にな〜れ。

目黒の頭を撫でる。

目黒は、ゆっくり眠っていく。

渡辺は、新しいパーカーをそっとなぞっていく。