テラーノベル
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❕注意❕
・刀剣乱舞の二次創作です。
・男主です。
・凛夜くんの弟くんが出てきます。
・読者様のキャラの解釈と違う場合があります。
・以上のことが大丈夫な方はこのまま読み進めてください。
例の通達から1週間後の監査当日、本丸には少し、緊張した空気が流れていた。
それもそうだろう。今日は監査当日で、ましてや初めての監査ともなれば、緊張する。
いつもなら朝から遊んでいる堀川達も、今日はどこか落ち着かない様子だ。庭に集まってはいるものの、玄関をしきりに気にしている。
縁側からその様子を眺めながら、俺も小さく息を吐いた。
「……やっぱり、意識するよな」
呟くと、すぐ側で作業をしていた山姥切が軽く頷く。
「無理もない。『監査官』という言葉だけで、身構えるものも多いからな」
「そうだな」
この本丸は、出来てからまだ日も浅い。
書類に不備は無いか、生活に不都合は無いか、
皆の様子はどうか、一度考え始めると、どうしても不安になってくる。
その時、庭の方から「主さん」と、控えめに呼ぶ声がした。
振り返ると、五虎退が不安そうな目で、こちらを見つめている。
「今日、監査官さん、来るんですよね?」
「あぁ、もうすぐな。」
そう答えると、いっそう不安そうに、
「僕たち、ちゃんとできてますか?」
と聞いてきた。俺は、頭を撫でながら
「大丈夫だ。いつも通りでいい」と、返す。
その言葉に、五虎退はほっとした様子で頷き、堀川達の所へ戻っていった。
やがて、廊下の奥から軽い足音が近づく。誰だろうか。
「兄さん」
灯夜だった。一度連れてきてから、この場所が気に入ったらしく時々遊びに来るようになっていた。
今日はいつもよりきちんとした服装で、表情も心なしか硬い。
「監査官さん、もうすぐで到着するって、こんのすけが」
「分かった。ありがとな」
出迎えの準備をしに、玄関へ向かう。後ろから少し遅れて、灯夜と山姥切がついてきた。
「いつもより、静かだね。みんな、緊張してるのかな」
でも、嫌な感じじゃない。灯夜がぽつり、と言う。
「みんな、ちゃんと居場所にしてる。だから、大丈夫」
たどたどしく短い言葉だったが、胸の奥が落ち着くのを感じた。
玄関に着くと、こんのすけがちょろちょろと落ち着きなく動き回っていた。
「凛夜様!監査官殿が間もなく到着いたします!」
その声はいつもより一段高く、緊張しているのが分かる。
「分かった分かった。そんなに騒ぐな。余計に緊張するだろ」
そう言うと、こんのすけは「はっ」と姿勢を正し、ぴたりと動きを止めた。
その様子を見て少し緊張が解れ、思わず笑ってしまう。
直後、空気が微かに張り詰めた。
こんのすけはぴたりと止まったまま、耳を澄ませている。
俺も背筋を伸ばし、気合いを入れなおす。
コンコン、と戸を叩く音が響く。山姥切が戸を開けると、そこには銀色のマントを着けた、フードを被った男性が立っていた。
身長は俺と同じくらいだろうか。
「今日からこの本丸に配属される、山姥切長義だ。俺こそが長義が打った本歌、山姥切。
どこかの偽物くんとは、似ている似ていない以前の問題だよ」
その言葉が発せられた瞬間、玄関の空気が目に見えて冷えるのが分かった。
「……」
山姥切が、ぴくりと肩を揺らす。
感情を表に出すことはないが、彼の一言一言は、わざと研がれた刃のように鋭かった。
「初対面だ。言葉を選べ」
低く告げると、長義は一瞬だけこちらを見て、ふっと口角を上げた。
「これは失礼。監査官としての挨拶のつもりだったんだけどね」
「随分と、挑発的な挨拶だな」
「本歌としては、当然の確認だろう?」
さらりと言ってのけるその態度に、こんのすけが慌てて間に入る。
「こ、こちらが当本丸の主、凛夜様でございます! 本日は監査のため――」
「知っているよ。基本的な情報にはすでに一通り目を通してある」
長義はそう言って、視線をこちらへ向ける。
フードの影から覗く瞳は、冷静で、理知的で――同時に、値踏みするような光を帯びていた。
「君が主か。……なるほど」
「何か問題でも?」
僅かに含みを感じ、真意を問う。
「いや。思ったより、落ち着いているなと」
それが評価なのか、皮肉なのかは分からない。
だが、少なくとも敵意を真正面から向けてきているわけではなさそうだった。
背後で、灯夜が小さく息を呑む気配がする。
「そちらは?」
灯夜を軽く一瞥しながら長義が問う。
「こいつは、俺の弟だ」
何か言いがかりをつけられるのではないかと少し身構えるが、「そうか」とだけ言って、俺に視線を戻す。
「では、これから監査を始める。まずは、本丸の案内を頼めるかな‘’偽物くん‘’?」
「……あぁ」
山姥切はそれだけ答えると、ゆっくりと歩き出した。その背中に、長義の視線が刺さる。
案内の間、誰も言葉を発さなかった。張り詰めた空気のまま、応接室へたどり着く。長義を先に通し、応接室の襖を静かに閉める。
障子越しの光が、淡く室内を照らしていた。
「ではまず、基本事項の確認から始める。資材の管理方法、出陣記録、手入れ履歴を全て見せて貰えるかな?」
「あぁ。これだ」
言われた書類を長義の前の机に置く。彼はそれを手に取り、不備が無いか確認を始めた。その間、応接室には紙の擦れる音だけが響く。
「うん。よく書けている」
その言葉を聞き、緊張が解ける。
「ただ…」
初陣に、顕現から半日も経っていない男士を出したのは何故だ?
「…っ」
ただ淡々とそう問う口調は、責めているわけでも、怒っているわけでもなかった。
だからこそ、返答に詰まってしまった。
通常、男士が人の身に慣れ、霊力が安定するまでは本丸で様子を見ることになっている。
そのため、顕現間もない男士を出陣させることなど滅多にない。
だから、これが褒められた行為ではないことも分かっていた。
「それは…」
「”仕方がなかった。結果的に無事だったから良かった”とでも言うつもりかい?」
そう問い返す長義の眼光は鋭く、有無を言わせない雰囲気が漂っていた。
「違う」
即答だった。自分でも驚くほどはっきりとした声が出た。
「良くはない。あんな思いは、二度と、させたくない」
室内が再び静寂に包まれる。長義は何も言わず、続きを促す。
「でも、あいつらは、帰ってきた。全員で」
それを守るのが、俺の役目だ
短くそう言い切ると、長義はふっと小さく息を吐いた。
「なるほどね」
その声色は、先ほどより僅かに柔らかい。
「理想論ではあるが、嫌いじゃないよ」
そう言いながら、別の書類を取り出す。
「では次、男士達との関係についてだ。主としての統率と、距離感を見させてもらう」
そう言いながら、長義はちらりと障子の方を見る。
「君の本丸は随分と‘’近い‘’ようだね?」
「悪いことか?」
長義の言葉に俺はそう問い返す。
「場合による」
間を置かずに答えが返ってくる。
「甘さは時に命取りになる。特に、戦場ではね」
「……」
反論しかけて、言葉を飲み込む。
確かに、長義の言うことは間違ってはいない。
次は何を言われるのかと身構えるが、続いた言葉は意外なものだった。
「先ほど庭を見たが、緊張しているはずの監査当日で、あれだけ自然に笑える。本丸としては悪くない状態だ」
少なくとも、‘’壊れて’’はいない。
ぽつり、と漏らした言葉は、評価なのか、事実確認なのかは分からなかった。
だが、ほんの少しだけ、肩の力が抜けた。
一段落したところで、コンコン、と控えめに襖が叩かれる。
「主、入ってもいいか?」
山姥切の声だ。
「入っていいぞ」
襖が開き、山姥切とーーその後ろから五虎退がおずおずと顔をのぞかせた。
「あるじさま、あの……」
五虎退は少し不安そうに長義を見て、それからこちらを見る。
「お茶、いれました」
その手には、お茶とお菓子が並んだ盆が握られていた。
後ろでは燭台切が静かに見守っている。
長義はその光景を見て、ふっと笑った。
ほんの僅か、近くで見ていなければ分からないほどに。
「……なるほど」
そう呟くと、椅子にもたれかかり、
「今日はここまでにしよう。君の淹れた茶を頂こうかな」
そう言って、五虎退に視線を向ける。
「!!はい!」
五虎退は、ぱっと笑顔を浮かべ、準備を始めた。
静かだった室内が一転して騒がしくなる。
その様子を見て、長義は小さく目を細める。
「……こういうのも、悪くない」
誰にも聞こえないくらいの声で、そう呟いた。
大変お待たせいたしました!!やっと長義くんが出てきました!!
楽しんでいただけたら幸いです!!
コメント
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第6話、めっちゃ良かった!長義の登場シーン、あのピリッとした空気感がたまらんね。「偽物くん」呼ばわりからの緊張…でも最後にお茶を素直に受け入れて「こういうのも悪くない」って呟くところ、グッときたわ。五虎退がお茶入れる場面も含めて、監査という緊張の中にちゃんと温かさがあるのが凛夜さん本丸らしいなって思った。弟くんも自然に馴染んでてかわいいし、続き楽しみにしてる!✨