…………….
「僕今からそっちに行くよ」
今日は捜査だというのに、ひとりぼっちなんて。誠一も健三も今日はいない。いや今日も だ。
依頼は「見つからない犯人」だ。死体だけ見つかって、死因も何もわからないのに、犯人がいると決めつけるのか。
いくら名探偵だとはいえ働きたくないし、見つからないもんは見つかるわけない。
…あの2人は犯人を知っているのに、ついてきてくれない。教えてもくれない。
手伝いでさえ、してくれない。
僕が1人で捜査なんてできるわけないじゃないか。
もう動きたくない。疲れた。いつものように誠一の背中の上で移動したい。健三の紅茶飲みたい。
誠一、健三、なんで犯人を教えてくれないんだよ。めんどくさいじゃないか。
「お前には関係ない」なんて。。関係しかないよ。
はやく見つけて、みんなの元へ行きたい。
でも手掛かりがなさすぎる。せめて2人がいればなぁ…。
「見つからない犯人」を2人は知っている。
もう教えてくれなくてもいいから、はやく会いたいよ。もう限界なんだ。
確かに探したかったのは僕かもしれないけど、もういいんだ。薄々気づいてたん だ。
見つかるわけないよな。だって犯人は僕なんだから。
うっすらと記憶が蘇ってくる。僕を庇って火に飲み込まれる2人の姿が。なんで忘れていたんだろう。
何が「記憶の天才」だ。2人がいなくなってからかなりの時間が経つのに、未だに犯人探しをして、自分の記憶にさえ蓋をして。
「最後まで、ごめんね」
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