大森元貴side
「CMあと三十秒、開始でーす!」
そんな大声が響くスタジオ。
スタッフさんたちがカンペを持ってバタバタと駆け回っている。
生放送のテレビ収録はいつも慌ただしい。
このCMが終わったら。
僕と涼ちゃんのことを話さないといけない。
「…りょうちゃん。」
隣にいる涼ちゃんに静かに声をかけると、
涼ちゃんは何も言わずに僕の手を握りしめた。
「…大丈夫だから」
若井にバシッと背中を叩かれる。
二人分の温もりが身体を駆け回る。
「ご、よん、さん、に、いち、はい!」
CMが終わり、司会の人がカメラを見ながら喋り出す。
緊張と不安でぼーっとしていると、
いつのまにかカメラはこっちに向いていた。
「あー、そういえば今日はミセスからお知らせが!」
「あぁ、はい。そうですねぇ。」
ふわふわと笑いながら喋り出す涼ちゃん。
その手は僕の手を握りしめたまま。
「僕と、大森は、ちょっと前から付き合いさせてもらってます」
そう涼ちゃんが言った途端、
司会、共演者、スタッフ…全員がこっちを見た。
その視線が、『お前は釣り合わない』と言われているようで
不安で、怖くて___。
「…元貴、だいじょうぶ。僕に任せて。」
沈みかけていた思考が涼ちゃんの声によって
なんとか浮かび上がる。
「…昨日のニュースで吃驚した人もいると思います。」
「本当は僕たちから先に知らせたかったんですけど…」
涼ちゃんの下がった眉に落ち着いた雰囲気が流れる。
涼ちゃんは手を握る力を強くした。
「…元貴は、…僕が選んだ大事な人です。」
「命を換えてもいいくらい大切な人。」
「なので、元貴を傷つける人は僕が許しません。」
いつもふわふわ笑っている涼ちゃんの少し怒ったような表情に
全員に緊張した雰囲気が流れた。
隣の若井もじっとカメラを見ている。
「僕はいま、元貴を付き合えて幸せです。」
「…突然のことで吃驚させたと思いますが、これからもよろしくお願いします」
ぺこりと涼ちゃんと若井が頭を下げる。
僕も慌てて頭を下げると、スタジオに少し暖かい雰囲気が流れた。
そして頭を上げた涼ちゃんは、
もうすっかりいつもの涼ちゃんに戻っていた。
「無事終わったな。」
「うん。終わったねぇ」
生放送を終えて、帰り道。
若井と涼ちゃんがそう呟いた。
前を歩く二人にぼんやりついていきながら
僕はポケットから携帯を取り出す。
Xでは今回の生放送が大きな反響を呼んでいた。
《涼ちゃんすっごいかっこよかった!》
《でも元貴くんとはあんま釣り合ってないよねえ》
《同居してたんだし普通にひろぱがよかったなぁ》
《それ!私らはそれを望んでたんだよっ!》
思わず立ち止まる。
やっぱりそうだ。
涼ちゃんの隣に、僕なんて似合わない。
「…元貴。」
スマホの画面を手で隠される。
白くて長い、涼ちゃんの手。
「…あれ、若井は、…?」
「帰った。それよりも元貴」
「…また見てたでしょ、」
涼ちゃんの大きい目に見つめられる。
「…気にしなくてなんていいんだよ」
涼ちゃんは静かにそう言った。
「やっぱり嫌だ、とか色々いう人もいるけどさ、」
「…元貴のことはちゃんと僕が愛してるから、いいんじゃない?」
そう言って涼ちゃんは静かに手を握った。
繋いだ手が熱い。心臓の音がうるさい。
そして涼ちゃんは僕を抱きしめた。
いつも通り、優しくて、少し力強い、そんなハグ。
「…涼ちゃん、バレちゃうよ」
「いーの。もうバレてんだから」
そう言って涼ちゃんは黙って僕にキスをした。
ふふ、と涼ちゃんが笑う。
「…さ、帰ろ」
「…うん」
そう笑う涼ちゃんの顔はどこも誰よりも優しくて、綺麗だった。
そんな貴方に、僕はもう一度惚れました。
Fin.
♡と💬よろしくお願いします、
コメント
7件
大森さんがSNSで反応を見て落ち込んでる時に、涼ちゃんが手でスマホを隠してるところとか、もうカッコよすぎる🥴満足感凄い🫠 投稿した時に見れなかったの、悔しすぎる😭
うわ素晴らしすぎる!!!涼ちゃんかっけぇ〜!
…………………… ありがとうございました、、、、、、、、、、 なんて幸せな…………… あの、、、だいすきです あたたたたたかすぎて、、、 言葉が、、、でない、、、