テラーノベル
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いざテストの返却日。その日ある授業の教科のテストが授業中に返ってくる。
大概の生徒がドキドキする。果たして何点なのか。もちろんテストの点数というのは直に成績に反映される。
なのでいい成績を取れるように。とドキドキする生徒もいれば
赤点か赤点じゃないか。という瀬戸際でハラハラしている生徒もいる。
そして中にはなんにもドキドキしていない生徒もいる。
「…はいぃ〜。よゆーの赤でーす」
そう。空楽王(そらお)のように。なんなら
「…おっ!マジ?赤じゃない!」
赤点じゃないほうがビックリするレベル。
「礼王(れお)どうだった?」
空楽王が礼王に聞く。
「ん?まあ。よくはなかったよ?」
「赤?」
「赤ではないけど」
「んだよ。鏡は?」
「…。まあ…。悪くはないけど良くはない」
「どれ?見してみ?」
空楽王が鏡のテストの点を見る。
「…は?ガチ?これでいい点じゃないの?オレこんな点取ったら、マジでなんでも買ってもらえると思うわ」
「なんでも?」
礼王が笑いながら聞く。
「マジなんでも。マジで中学の頃に姉ちゃんに「もしオレが100点取ったらどうする?」って聞いたことあって
したら「もし100点取ったら地球ごと買ったるわ」って言われたわ」
「空楽王のお姉さんってだいぶ豪快だね」
「まあね。だから鏡くらいの点数でも、家くらい買ってもらえるよ」
「なにそのヤンキーが雨の日に子犬に傘さしてあげてるだけで女子の好感度が上がるみたいな」
と言う礼王。
「たしかに」
と笑う空楽王。
「ってことはバカのほうが得じゃね?」
ハッっと気づく空楽王。
「いや、…まあ、最初はね?ヤンキーだってヤンキーのままだったらダメでしょ。
怖いイメージのヤンキーが優しいから印象良くなるんであって
最初はバカでもバカのまんまだったらダメでしょ。頭良くなんないと」
と礼王が言うと
「…」
空楽王は斜め上を見て考え
「…たしかに?」
と納得した。
「時守(ときもり)は?どうだった?」
と礼王が時守に聞く。
「ん?まあまあだったかな」
と言うので礼王が覗き込む。
「…。え。マジ?」
「ん?」
空楽王が気になって覗き込む。
「…は?ヤバ」
必死で勉強した鏡よりもいい点数。なんなら学年でも上位に入るレベルだった。
しかもほぼ全教科。
「…え。トッキーって天才?」
なぜかイラッっとした表情で聞く空楽王。
「え。時守ってめっちゃ頭良いんだね」
と言う礼王。
「そうかな?ま、たしかにこんな点は珍しいかも」
と時守が言うと
「なぁ〜んだ。たまたまかよぉ〜。ビビらすなよなぁ〜」
と笑顔でポンポンと時守の肩を叩きながら言う空楽王。
本来、空楽王と同じく、テスト返却のときはドキドキなんてせず、赤点で当たり前。
赤点じゃなかったほうが驚くくらいの子那恋(しなこ)と優佳絵(ゆかえ)はというと
珍しく今回のテストではドキドキしていた。なぜなら今回は“いつも”よりは勉強していたし
なによりも真風菜(まふな)と華音(はなお)に勉強を教えてもらっていたため
赤点ではありませんように
と祈っていた。…結果…。
「赤点ゼロォ〜!人生初!」
喜ぶ子那恋。
「っし。これで部活行ける」
静かに喜ぶ優佳絵。2人とも、決して良い点とは言えないが、奇跡的に赤点は1つもなかった。
「「ありがとうございます。真風菜様、華音様」」
と真風菜、華音の手を握りながら言う子那恋と優佳絵。
「いやいやそんな」
「うん。私はなにも」
「いえいえ!ぜひお礼をさせてください!」
ということで土曜日、子那恋と優佳絵は2人で待ち合わせをし
とある場所に寄ってからテスト勉強をしていた真風菜の家へと向かった。
そして真風菜の部屋。ローテーブルの上にはケーキの持ち帰り用の箱が置いてあった。
「こちら、私と優佳絵からの気持ちです。お受け取りください」
と頭を下げる子那恋。それを見て優佳絵も頭を下げる。
「これChestnut(チェストナッツ)
(Les joues de Chestnut tombent(レ・ジューン・デ・チェストナッツ・タンブ)の略称)のケーキじゃん」
真風菜が言う。
「ほんとだ」
「高かったでしょ」
と言う真風菜に顔を見合わせる子那恋と優佳絵。
「んん〜。思ってたほど高くはなかった。っていうか、中見てもらったらわかるんだけど
割と王道なショートケーキにチョコケーキ、抹茶ケーキにモンブラン買ったんだけど
なんかシスターセット?だっけ?」
と優佳絵を見て言う子那恋に、優佳絵はレシートを取り出して見て
「うん。シスターセット。ショートケーキとチョコと抹茶でシスターなんだって。よくわからんけど」
「そう。シスターセットで割引になってちょい安く買えたし
そもそも王道のケーキは割と普通の値段だったよ?」
「あ、そうなんだ?」
と話していると部屋のドアがノックされて、真風菜がドアを開くと
真風菜のお母さんが飲み物とお菓子を持ってきてくれた。
それぞれ真風菜のお母さんにお礼を言って、真風菜が受け取って、真風菜のお母さんがドアを閉めた。
「ではでは。真風菜様と華音様。お先に選んでもらって」
と子那恋が言う。
「え。いいよいいよ。3人で先選んでよ」
「いえ。立役者であるお2人のために買ってきたんですから。ね」
「うん」
真風菜と華音は顔を見合わせて
「じゃあ、お言葉に甘えて。ありがとうございます」
「ありがとうございます」
「いえいえ」
ということで真風菜と華音は話し合って先に決めて、残った2つを子那恋と優佳絵で話し合って決めた。
「美味しそぉ〜」
と呟く華音に
「ね」
同意する真風菜。
「じゃ、いただきます」
「いただきます」
と子那恋と優佳絵に向かって言う真風菜と華音。
「どうぞどうぞ」
と笑顔で、小声で言う子那恋。そして実際に食べてみると
「んんっ!美味しい…」
「美味しい…スゴい…」
驚いて思わずケーキを見てしまうほど美味しかった。
「それはよかったです」
と言いながら何気なくパクッっと食べた子那恋。
「…。うまっ」
子那恋もケーキを見てしまうほど驚きの美味しさだった。
「え。ヤバくない?」
と優佳絵に言うが、その優佳絵も美味しさに固まっていた。
「マジ補修辛いんだけどぉ〜〜」
ファミレスのソファー席の背もたれに溶けるように寄りかかりながら言う空楽王。
「え。空楽王、補修全コンプ?」
と礼王が聞く。
「いや、現文(現代文)は免れた」
「なんだ。どうせならコンプすればよかったのに」
「いや。マジ毎日放課後残らされて補修って、割とガチでめんどいかんね」
「ま。テスト勉強をしなかった弊害ですね」
「だね」
「マジ代わって。無理。補修のプリントも1問もわからん。なんで放課後まで授業受けないかんの」
と言う空楽王に
いや、赤点だからでしょ
と思う鏡、礼王、時守。
「時守、今回そんな勉強したの?」
と鏡が時守に聞く。
「ん?いや。そんなにしてはないけど」
「はい出ました。勉強してるやつの「勉強シテマセェ〜ン」
これほど信用してはならないものはないって姉ちゃんが言ってたわ」
と言う空楽王に
なぜ途中カタコトになったの?
と思う鏡、礼王、時守。
「出た空楽王のお姉さん。でもオレ今回ほんとに勉強してないけどなぁ〜。多少はしたけどね?」
「どんくらい?」
と聞かれ、鏡がいるので言いづらかったのだが
「…1時間〜ちょいくらいかな」
答えた時守。
「え。1時間もやったの?」
「え。1時間しかやってないの?」
正反対のリアクションを同時に言う空楽王と鏡。
「え、あ、うん」
どっちにも答えられる言い方で答えた時守。
「マジ?1時間もやったの?家で?」
「家で」
「やっば」
「ま。同じ空間に何時間とかじゃなくて、隙があれば勉強してた人いるんだけどね…」
と苦笑いで言う礼王。
「ま、鏡は変態だから」
「誰が変態だよ。え。マジで1時間?」
「…まあぁ〜…正確に測ってはなかったからわかんないけど、夜ご飯食べて、お風呂入って
リビングで寛いで、部屋帰って、寝るまでの時間勉強したくらいだから、1時間前後だと思う、けど」
「マジ、で、か」
「え、時守は地頭が良いってこと?」
と礼王が聞く。
「いやぁ〜?良くはないと思うよ?」
「じゃーなんでそんな点数いいんすかー」
空楽王がソファーの背もたれに溶け寄りかかりながら聞く。
「んん〜…ま、去年やったとこ多かったしなぁ〜…」
「え」
「え」
「は?」
「去年?やった?」
「うん。だから、ま、復習みたいな感じだったし」
「え。待って待って。マジ?」
「うん」
「え。時守ってどこ高から来たの?」
礼王が聞く。
「熊穴(ゆうけつ)(熊穴高等学校)だけど」
前言わなかったっけ?
と思う時守。
「…なるほど…。熊穴か…」
と呟く礼王。
「マジ?エリートじゃん」
と静かに驚く鏡。
「そーいえば転校初日かなんかに聞いたな」
「そっか。空楽王には話したけど、礼王と鏡には言ってなかったっけ?」
頷く鏡と礼王。
「熊穴ってたしかスポーツ強かったよな?」
「そうだね。一応文武両道の高校だったから、運動部は割と強かった、はず」
「なるほどね。それで頭良いのか。納得だわ」
と時守があまりテスト勉強をしていないのにテストで点数が良かった理由に納得した一同。
一方真風菜の家に集まっていた女子4人はというと、4人ともケーキを食べ終え、雑談に花を咲かせていた。
「トイレ借りまーす」
と言って子那恋が立って、部屋を出ていく。
もう真風菜の家には何度も来ているため、トイレの場所は把握している。
しばらくすると真風菜の部屋のドアが開いて、なぜかニマニマ顔の子那恋が帰ってきた。
「なんでそんなニヤニヤしてんの」
優佳絵が聞く。
「んふぅ〜ん。…じゃあぁ〜ん」
と言って体の後ろに回していた両手を前に出す。
するとそこには「まふなのアルバム」と表紙に書かれている大きな本があった。
「お。真風菜のアルバム?」
「そー。トイレ行った帰りたまたま目に入ってね?
んで真風菜ママに聞いたら「みんなで見る?」って棚から出してくれてね?」
お母さん…
と心の中で思う真風菜。
「ということで真風菜の成長見てみましょー」
ということで4人で真風菜のアルバムを見ることにした。
そのアルバム小学校や中学の卒業アルバムではなくお母さんの手作りで
小さい頃から撮っていた写真を貼り付けたものだった。
「お。赤ちゃんのときの真風菜」
「可愛い」
「まあぁ〜…。赤ちゃんのときなんて、みんな大差ないでしょ」
ページを捲っていく。
「お。ちょっと成長した」
「あ、可愛い服着てる」
「一人っ子だから可愛がってもらって」
ページを捲る。
「お。お姫様になってる」
「…これはニチアサ。私も見てた」
「華音も見てたかー。私も見てたわー。ステッキとか買ってもらって、お姉ちゃんとごっこ遊びしてた」
ページを捲る。
「これはー幼稚園生くらい?」
「かなぁ〜?」
ページを捲っていく。真風菜はどんどん成長していき
「お次のペエジはぁ〜?」
子那恋が捲ると、真風菜が雪で遊んでいる写真があった。
「お?東京でこんな雪降ったときあったっけ?」
「いや、これは北海道行ったときー…かな?おばあちゃんが北海道に住んでるから」
「おぉ〜。北海道編ですか。これまたおもしろそう」
と北海道編の真風菜の写真を見ていく。
「次ぃーはぁ〜」
と子那恋が捲る。
「お?この子は誰?」
と子那恋が指指す写真に、真風菜は
え?
と思う。
「さあぁ〜?誰、なんだろう。覚えてない、かも」
「ま、ちっさい頃だもんね」
「…うん」
その後もアルバムを見続け、各自の小さい頃の話などをして
「お邪魔しましたぁ〜!」
「お邪魔しました」
「お邪魔しました」
子那恋、華音、優佳絵は帰っていった。真風菜はずっと子那恋が指指した写真の子が頭から離れなかった。
夜ご飯のときもお風呂に入っているときも。
そしてお風呂から上がり服を着てから、アルバムを持って母に聞いた。
「ねえお母さん?」
「なに?」
「えぇっとねぇ〜…」
アルバムのページを捲る。
「あ、ここここ」
「ん?あぁ、私のお母さん、真風菜のおばあちゃんの家に行ったときね」
「そうそう。それでさ?…この子なんだけどさ?…誰?」
「あぁ〜。このときね。北海道のお墓参り行くってときに
真風菜が私のお母さんの家の近所の家の子と遊んでて、行きたくない。遊んでたいって駄々こねたから
そこのお母さんにお願いして少しの間預かってもらって、遊んでるときを撮ってもらった写真よ。懐かしい」
「ふぅ〜ん」
「その後も北海道行ったときは遊んでもらってたみたいでね。…名前なんて言ったっけ…」
と考える母に、真風菜は苗字が1つ思い浮かんでいた。
いや…まさかね。…でもあの眉毛とか…
と思いながらもその苗字を口にした。
「…もしかして平野(への)?」
「そうそう!平野(ひらの)って書いて平野(への)なのよね!真風菜よく覚えてたわね」
「うん…。まあ、ね」
真風菜が見ていた写真は、小さな真風菜の隣で笑顔で、真風菜と一緒にピースする
眉毛が「へ」の形をした黒髪の男の子だった。
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