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白いぼうし
四 (再投稿)
車が、しばらく走っていると、後ろの席の女の子が、小さな声で、つぶやきました。
「あ、いいにおい。レモンのにおいかしら。」
松井さんは、うれしくなって、
「いいえ、夏みかんだよ。私の、おふくろが、田舎から、送ってくれたんだ。でもね、一つは、さっき、道路のわきの、白いぼうしの下に、おいてきちゃったんだよ。」
と言いました。
すると、女の子は、びっくりしたような顔をして、
「えっ、白いぼうしの下?」
と、言いました。
「そうさ。男の子がね、チョウを、つかまえて、ぼうしの下に、閉じ込めてあったんだ。かわいそうだから、私が、逃がしてやったのさ。その代わりに、その夏みかんをね。」
松井さんが、そう言うと、女の子は、ふふっと、おかしそうに、笑いました。
「まあ、おじさん、おもしろい。じゃあ、その男の子は、びっくりするでしょうね。チョウを見にきたら、大きなみかんに、化けていたんですもの。」
車は、目的地の、なのはな横丁に、着きました。
「はい、なのはな横丁ですよ。」
松井さんは、車を止めて、後ろを、振り返りました。
しかし、そこには、だれも、いませんでした。
「おや、お嬢さん?」
座席の上には、女の子の姿は、影も形もありません。
ただ、そこには、白い、小さな、モンシロチョウが、一匹、ひらひらと、舞っていました。
チョウは、開いた窓から、外へ、飛び出していきました。
そして、あの、五月の、まぶしい青空の中へ、吸い込まれるように、消えていきました。
松井さんは、あっけにとられて、その空を、いつまでも、見つめていました。
鼻の奥には、まだ、あの、甘酸っぱい、夏みかんのにおいが、残っていました。
四段落 終わり
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コメント
1件
ぴえん…🥺 最後、女の子がチョウだったなんて気づかなかったよ!松井さんが夏みかん置いて代わりに逃がしてあげた優しさに涙出そうになったし、「みかんに化けてた」って笑うシーンもかわいすぎた🦋✨ 終わり方、ふわっと夢みたいで余韻がすごい…! 作者様、素敵な物語をありがとうございます🎀💕