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勝デクㅤ甘い午後、半分こ

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勝デクㅤ甘い午後、半分こ

2 - 2.甘い午後、半分こ ー おまけ

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2025年10月18日

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「甘い午後、半分こ」ーー後日談


風が少し冷たくなってきた頃、

ベンチの上で、出久と爆豪は並んでクレープを食べていた。


「かっちゃん、これ……ほんとに美味しいね。」

「ん。まあ、悪くねぇ。」


爆豪が無造作に残りを口に入れる。

その仕草を、出久は横目でそっと見つめた。


チョコの香り。

いちごの甘さ。

そして隣にいる、誰よりも真っすぐな人。


(……ああ、幸せだなぁ)


そんな風に思ったその時――


「おーい!!!」


突然、元気すぎる声が響いた。

出久が振り向くと、屋台の向こうから手を振る影が三つ。


上鳴、瀬呂、切島。

A組のムードメーカー三人組だった。


「お、おお!? みんなも来てたんだ!」

「おう!補講終わったから来たんだよ!」

「ってかお前ら、デートか!? うわ、リアルにしてんじゃん!」

「なっ……!?!?!?」


爆豪の眉がピクリと動く。

「テメェら、何見てやがんだ!」


「見てるも何も……」

と、瀬呂がニヤニヤしながら指をさした。

「それ、クレープ半分こしてるじゃん?」


出久「!!!」


上鳴が続けて、にやにやしながら言った。

「つかさ、前にさ〜緑谷に『カップルがすることってなーんだ?』って聞いたらさ」

「『クレープを半分こすることです!』って言ってたよな?」


沈黙。


出久の顔が、まるで信号機みたいに真っ赤になる。

「ちょ、ちょちょ、ちょっと待ってそれ言わないでぇぇ!!」


切島が笑いを堪えながら肩を叩く。

「いや〜、ちゃんと叶ってんじゃん、緑谷!」

「か、叶ってるとか言わないで〜!!!」


爆豪は腕を組んで顔を背けた。

「……テメェら、まとめて爆破すんぞ。」


「ひぃっ!?」

上鳴たちが慌てて後ずさる。


出久はもう真っ赤で、

クレープを持ったまま俯いて小さな声でつぶやいた。


「……し、知られたくなかったのに……」


爆豪がその横で、ふっと笑った。

ほんの一瞬、優しい顔で。


「……いいじゃねぇか。叶ったんだろ。」

「っ……かっちゃんまで、からかわないでよ……!」

「からかってねぇよ。……バカ。」


風が二人の間を通り抜けていく。

友達の笑い声が遠ざかっていく中、

爆豪が小さく呟いた。


「……俺も、悪くねぇと思った。ああいうの。」


出久が顔を上げる。

夕日の中で、その横顔が少し照れていた。


「えっ……!」

「聞こえなかったならそれでいいっ!」


その言葉に、出久の胸がまた熱くなった。

クレープの甘さよりもずっと、心臓が甘く疼いていた。












「甘い午後、半分こ」ーー帰り道


夕方の遊園地。

観覧車の明かりがポツポツと灯り始めていた。

上鳴たちの声が遠くに消えて、残ったのは二人だけ。


「……あいつら、ほんとウルせぇな。」

「う、うん……」


出久はまだ顔が熱いままだった。

耳まで赤くなって、視線をどこに向けていいかわからない。


(みんなの前で、あんなこと言われちゃった……!

かっちゃんの前で……“カップルがすること”なんて……)


俯いたまま歩く出久の横で、爆豪がふっと息を吐いた。


「……お前、マジで顔真っ赤だぞ。」

「だ、だって! あんなの、恥ずかしすぎるよ!」

「バカ。誰も気にしてねぇよ。」


そう言いながらも、爆豪の耳もほんのり赤い。

出久はそれに気づいて、思わず笑ってしまった。


「な、なんだよ。」

「かっちゃんも、赤いよ。」

「はぁ!?///」


爆豪が一歩後ずさって、眉をしかめる。

その反応が可笑しくて、出久は小さく笑った。


「……でもね、僕、嬉しかったんだ。」

「は?」

「みんなに冷やかされたけど……“クレープ半分こ”って、僕の中ではずっと特別だったから。」


爆豪の足が止まる。

出久も立ち止まって、夕焼けの光の中で言葉を続けた。


「誰かとそれをできたら、

それはもう“恋”なんだって、昔から思ってたんだ。」


風が二人の間をすり抜ける。

人の声ももう聞こえない。

オレンジの光が爆豪の瞳を照らしていた。


「……で?」

「え?」

「つまり、それを俺としたってことは……そういうことか?」


出久の喉が詰まった。

爆豪の言葉の意味が頭でわかる前に、

心臓が先に跳ねた。


「っ……そ、それは……」

「言えよ。」

「……かっちゃんが、相手で……よかった。」


その瞬間、爆豪が小さく息を呑んだ。

顔をそむけながら、

「……ったく。そんなこと言われたら、照れるだろうが。」

と呟いた声が、いつもよりずっと優しかった。


出久はそっと笑った。

「ねぇ、また行こうね。次は、観覧車乗りたい。」

「チッ……しょうがねぇな。」

「ほんと!? やった!」


夕陽の中で、

二人の影が少しずつ重なって歩いていく。


クレープの包み紙を握りしめた出久の手は、

まだほんのりと温かかった。
















おわりです






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