テラーノベル
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天使の象徴がもう戻らないと知ったのは、未来を失った、その瞬間やった。
どれだけ羽ばたかせても、もう飛べなくて。
真っ黒な羽が舞い落ちるだけだった。
…言う事を聞いとったらな。
もうあの場所には帰れないんかな。
白 青ちゃん…
そう呼んだって響くのは自分のか細い声だけで。
返事が返ってくることはなかった。
もう分かってる。
それでも。
あの日の彼の手の温もりだけが
まだ、この手に残っていた。
白 1人って寂しいんやなぁ。
そう呟く。
病院で窓の外を見つめとった青ちゃんは、ずっとこんな気持ちやったんやろか。
悪魔 堕天した天使はお前か。
白 …そうやけど。
悪魔 思ったよりも弱そうなやつだなぁ。
白 どういう意味や。
悪魔 人間殺しって聞いてたからな、もっと凶暴な奴でも来るのかと思っていたよ。
白 人間殺し…?
悪魔 とりあえず、堕天したお前は堕天使という扱いになる。
天界にも人間界にも居場所はない。
白 僕の居場所はないってことか…?
悪魔 あぁ。
だから堕天使は皆、牢屋行きに統一されている。
白 牢屋…?
悪魔 天使は悪魔が嫌いだし、悪魔は天使が嫌いだからな。
半端なお前はどちらにもいられない。
血の気が引いた。
居場所がないどころかこれやったら罪人と一緒やないか。
いまいち理解しきれない悪魔の言葉にただ従うことしかできなかった。
悪魔 今日からお前は03番としてこの牢屋で過ごしてもらう。
ここでは重労働を課せられる。
お前は罪も重いからな。
覚悟しておけよ。
白 罪ってなんや。
僕が何したっていうん?
なぁッ!
僕の悲痛な叫びは誰にも届くことはなかった。
白 そもそも人間殺しってなんやねん。
僕が人間を殺すわけないやろ。
関わってたのなんて青ちゃん…くらいで…
1人でそんな事を言っていると
1つの辻褄が合ってしまうある事実に気がついた。
もしも…殺したと言われているのが青ちゃんやったら…?
母親が言っていた天界に連れてきたらあかん理由が
ーーーーー
もし、そうやったら。
白 僕が…青ちゃんのことを…?
そんなこと、あるはずない。
手術、受けるって言うてたやんか。
生きるって、言うてたやんか。
白 ……ちゃう。
僕は、助けたんや。
元気出してほしくて。
怖がらんようにって。
せやのに。
なんでや。
白 なんでや。
なんで…こんなところにおるんや。
あの日。
手を引いた瞬間のことが、頭から離れへん。
嬉しそうに笑っとった顔。
空を見て、綺麗やって言うとった声。
——そのあと。
白 ……あかん。
思い出したら、あかん。
白 僕は……僕は……
青ちゃんの未来も命も…全部…。
ただ生きていてほしかった。
本当にそれだけやった。
それでも。
現実はそう甘くはなくて。
白 なんや、それ。
…何も上手くいっとらんやん。
何も…。
ーーー
う”ぁぁぁぁぁぁぁぁッ”
気づいてしまったその事実に押しつぶされそうにになる。
泣き叫んでも、どれだけ願っても。
もう彼に会えない。
その事実だけが深く胸に突き刺さった。
無気力に生きていた。
ただ彼だけを考えて。
毎日の重労働に耐えた。
手に増える傷なんてどうだってよかった。
白 ーー青ちゃん。
そう呼びかけても返事をしてくれる人はおらん。
青 ーーそれでも俺は、生きていたい。
ふとその言葉が僕の頭の奥で響いた。
急いで振り返っても
ーーそこにはなにもなかった。
白 辛くても生きる選択をした青ちゃんは…ほんまにすごいことなんやな。
白 ……青ちゃん。
握りしめた手には、もう何も残ってへん。
彼の温もりさえもう感じられん。
白 それでも——
ゆっくりと、顔を上げた。
白 僕も、生きてみるわ。
この場所でも。
この姿でも。
青ちゃんが選んだ“生きる”を、
今度は、僕が選ぶ番や。
静かに、でも確かに
ーー僕の黒い羽が前を向いた。
コメント
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お久しぶりです。 今回は白さん視点の続編を書きました。 青さんを鎖のようなカタチで白さんは背負い続けて行くのでしょうか。 皆様の考察や感想をコメントで教えていただけると嬉しいです。