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#ダンジョン
#学園
第10層へ下りて来たチーム莉子。
ついに御滝ダンジョンの階層も2桁に突入。
第1層でウロウロしながら、莉子がツタに捕まったり、六駆がメタルゲルをお金にならない大量虐殺したり、あの頃が少し懐かしくなるくらいにはダンジョン深くまでやって来た。
「『石牙』!! ほら、後ろにも注意しないと危ないよ、莉子!」
「うわぁぁん! だって、だってぇ! なんか急に素早いモンスターが増えたんだもん! こんなの1体でも大変なのに、2体相手にするのはわたしには無理ぃ!!」
莉子の言うように、この2階層くらいで、モンスターの強さが格段にアップしている。
六駆もその件については察知しているので、莉子の修行の際に事故が起きないよう、第10層に来てからはスキルでフォロー中。
「うりゃー! 『アイシクルサンダラアロー』!! あ、ダメだ、仕留めきれてない!」
「あ、大丈夫ですよ。『紙矢!!』」
『紙矢』を使うのは2回目なのを諸君は覚えておいでだろうか。
ちなみに初登場の際の相手は父親である。
『岩石群』で屋根を穴だらけにして見せたバカな父親に対してお仕置きで使用したのがこのスキル。
紙の矢だと甘く見る事なかれ。
煌気を込めた紙の硬度はその練度によって変化する。
六駆のレベルになると、軽く放つだけでもダンジョンの壁に鋭く深い穴ができる。
ちなみに紙が必要なので、煌気で紙を具現化するか、普通に紙を持って来るかしなければならないのが難点な、逆神流基礎スキル。
六駆は家からチラシを数枚持参している。
リサイクル意識の高いおっさんである。
「うへぇー。あたしの全力の弓スキルがドラッグストアのチラシに負けるのを見ると、六駆くんがヤバいのは分かるけど、なんか複雑だにゃー」
「クララ先輩のスキルもかなり練度が上がってますよ! 初めて見た時よりもずっと! どうですか? 何なら僕の修行を受けてみますか?」
「あ。大丈夫っす!」
「即答……。若い子に拒否られるのは心に刺さるなぁ」
六駆くん、すぐにフラれる。
莉子に対するスパルタモードを見ていたら、だいたいの人間は断るだろう。
一方、件の弟子はと言うと。
「『旋風破』! やたっ、崩せた! 『斧の一撃』!! よぉし!! 六駆くん、見た!? わたし1人でギランリザードやっつけたよぉ!!」
「おお! すごいじゃないか! 僕がよそ見している間に!!」
「ちょっとぉ!? 危ないからサポートしてくれるって話は!?」
「大丈夫! 僕は莉子の成長を信じていたからね! やれると信じていたよ! ええと、プリンアラモード?」
「ギランリザード!! おじさんの記憶力はどうなってるの!? まったくもぉー!!」
莉子は続けてモンスターに突撃していく。
ギランリザードと言えば、莉子が初めての『太刀風』で前足を斬って、怒りを買った末に六駆がトドメを刺した思い出深いデカいトカゲである。
体表からは絶えず毒が流れ出しており、物理攻撃はあまり効果がない代わりに、風スキルはバツグンにダメージを与える。
『斧の一撃』を莉子の新スキルに決めた六駆のセンスが光る采配であった。
「それにしても、本当にモンスターが強くなりましたね。これって最深部が近かったりします?」
実は六駆くん、下の階層から妙な煌気を感知していた。
通常、モンスターから煌気が出ることはほぼない。
例外があるすれば、独自進化した新種のモンスターか、何者かの煌気による介在がなされているか。
いずれにしても、あまりいい気配ではない事は確か。
「やー。あたしも攻略完了したことはないからねー。聞いた話だと、ダンジョンによっては最深部への入口をボスが守ってたり、逆に最深部まで下りたのに何もないって事もあったりで、結局攻略し終えるまで分からないみたいなんだよにゃー」
「なるほど。何もないパターンだった場合は、腹立ちまぎれにダンジョン崩壊させても良いですか?」
「一応年長者って体でお答えするとだね。よくないよ? 癇癪でダンジョンは破壊するものじゃないからね?」
とりあえず、何かがいるのは六駆が察知している。
問題はそれが何なのか、六駆をもってしても分からない点である。
彼は長年の経験から、次の階層に下りる前には相応の準備をしようと考える。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「はぁ、はぁ、ふぃー。3体も倒したよ! どうだぁ!!」
「うんうん。『風神壁』はまだ時々怪しいけど、『斧の一撃』は完璧に使いこなせているね。風スキル以外も早く覚えさせたいけど、これだけ得意となると、それ特化に成長させる手もあるなぁ」
第10層もだいたい回り尽くして、いくつかのイドクロアも入手した。
最近六駆がイドクロアに目を輝かせる機会が減って来たのは、彼が「どうもダンジョンの終わりが近そうだな」と感じている事が大きな要因となっている。
なにせ、攻略すれば2千万円。
3人で割っても、1人600万オーバーの大金。
まだ隠居生活資金としては足りないが、当分の間は牛丼を特盛で、さらにトッピングにチーズと温泉卵を付けられるくらいのセレブになれる。
「『自動紙矢』っと。とりあえず回復しようか」
六駆は『紙矢』を自動展開させて、モンスターを発見し次第迎撃するように情報を付与する。
これにより、半径10メートルほどの安全地帯を確保することに成功。
六駆は次の階層に向けて準備を整えるべく、莉子とクララの回復を優先した。
「それじゃあ、失礼しますからね。言っとくけど、このスキルで分かるのは体の情報であって、スリーサイズとかそういうのは分からないからね? 本当だからね? ガチのマジだよ?」
「うーん。この最初に身の潔白を証明しようとする辺りに、そこはかとないおじさん臭がするにゃー」
「ですよねー。電車で両手挙げて乗ってるおじさんみがある!」
年頃の女子の言葉に傷つきながら、六駆は『検診眼』で2人の疲労をサーチ。
莉子はやはりスキルの連発で煌気の残量に不安が残り、クララは体力がやや減少していた。
「クララ先輩はいつもの『軽気功』で! ほい! で、莉子もいつものヤツだね!」
「ぶぅー。またおじさんの煌気を太ももに刺されるー!!」
「言い方! 僕だって好きでやってるんじゃないんだよ!?」
「分かってるけどぉ。ねね、食べたら煌気が回復するみたいなアイテム作れないの!?」
「ふむ」と六駆は少し考えてから答える。
「じいちゃんなら作れるかもだね。僕はスキル使うのが専門で、ものづくりは素人も同然だからなぁ」
「喋りながら普通に太ももにナイフ刺さないでよぉ! でも、そっか。今度おじいちゃんに頼んでみよっと!!」
「じいちゃん、莉子のお願いなら普通に聞くからなぁ。また家計が……」
こうして盤石の準備を整え、第11層へと下りるチーム莉子。
六駆の予感が杞憂であれば良いのだが、残念ながら彼の経験則が間違えるはずもない。
激闘の予感が3人に迫っていた。
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