テラーノベル
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※緊縛センシティブ注意
※fjsw右ならなんでも許せる方のみどうぞ
※緊縛は少ししか知識ないのでお詳しい方は目をつぶってくださると嬉しい
side:fjsw
鼻歌を奏でる元貴が優しい手つきで縄を操った。
首に食い込む縄の息苦しさに小さく息を吐くと、想像よりも熱を持った吐息となって零れ落ちた。
そんな僕の吐息に小さく笑い、元貴は恍惚とした表情で頬を撫でてくる。
「くるしい?それともきもちい?」
素直に応じるのも恥ずかしく、ふい、と視線を逸らす。
「っ、ぁ!」
力任せに縄を引かれ、苦痛に涙が滲んだ。
「誰が目を逸らしていいって言ったの?ちゃんと見せて。ちゃんと見て。涼ちゃんが誰のものかしっかりと刻み込んで」
首筋の薄い皮が今の衝撃で擦れひりついた痛みを発する。
あらら、と他人事のように呟いた元貴が、そっと唇を寄せた。
「やっぱり、涼ちゃんは赤が似合うね」
子どものように無邪気に、元貴は笑った。
誕生日はまだ、始まったばかりだ。
明日は、元貴の誕生日。
元貴の家に泊まっていい?なんて、滅多に自分からは言わないけど、意を決して聞けば、少し驚いた顔をした後に、うん。泊まってってもらうつもりだけど?と当然のように返された。
そりゃ、そうだよね。何を今更って感じだ。
ほぼ毎日のように元貴の家に泊まって…寧ろ、半分住んでるようなもので。
改めて言葉に出して聞くようなことじゃなかったのは、百も承知なんだけど。
明日は元貴の誕生日で、仕事がオフでっていう、最高のタイミングで。(多分、マネージャーの配慮?)
0時になった瞬間に、一番傍で一番におめでとうが言いたい。…なんて、今どきの女子高生でも思わないような乙女な思考が爆発して、わざわざ『泊まっていい?』なんて聞いてしまった。
珍しいことを言うもんだと驚いた表情をした元貴だったけど、すぐに含みのある笑みを浮かべたから、きっと僕の考えなんてお見通しだ。
28歳の俺とセックス納めしよ、と冗談っぽく笑って言われたから、なにそれ。と返してくすくす笑いあって、いっぱいキスして、いっぱい抱き締めあって、いっぱいして、結局は行為で持っていかれた体力が限界で、お祝いの言葉なんて言えずにお互いに寝てしまった。
少しの倦怠感に包まれながら覚醒すると、既に目を覚ましていた元貴が、おはよう涼ちゃん。と。
遮光カーテンの隙間から漏れる朝日を背負って、とっても無邪気な笑顔で、両手に赤い縄を持っていた。
寝起きの頭と視界に、ものすごく場違いな赤い縄の存在。
脳が鈍ってて回らない。
わかるのは、昨夜激しく抱き合って眠ったままのあられもない姿で、僕の腹の上にシャツ一枚羽織っただけの元貴が腰を据えていて。
その両手に、何重にも巻いた縄を携えていること。
え?え?なにそれ?
どういう状況か飲み込めない僕に、今日は好きにさせてくれるんだよね…?と、うっとりした表情で目を細める。
確かに、昨夜、そんなようなことを言った。
『明日は、元貴の日だから…元貴の好きなようにしていいよ』
『嫌じゃなければ、僕に、付き合わさせて』
大森元貴という天才の恋人なんだということに、慣れない瞬間が不意に訪れる時があって。
『ぼくをすきにしていいよ』と言えたらすごくいいんだろうけど、気後れしてしまって、あまりそういうことを積極的に言えない僕が言える言葉はせいぜいその程度だ。
それでも、元貴はきちんと意味を汲み取って、ありがと。と嬉しそうに微笑んでくれた。
確かに、昨日、そう言ったけど…。
「…だから、今日は一日、めいっぱい、俺に付き合ってね」
涼ちゃん。
囁くように言葉を投げられ、縄を持った手が僕の頭を潜らせて抱き締めてくる。
キスされる、と思って眸を閉じた。
甘やかすみたいに啄むようなキスを何度も繰り返され、鼻にかかった息が漏れ、抱き締め返す。…いや、抱き締め返そうとしたところで、首にそわりと触れるざらっとした感触。
思わず、目を開けた。
「っぅ、え…?」
口付けの合間に変な声が出た。
首に二重にされた縄がかけられ、鎖骨の辺りで交差している。
反射的に、体がびくり、と緊張した。
そういうことしてる時の、気持ち良くて体が反応しちゃうようなアレではなくて、本能的な恐怖というか。
首、絞められちゃうの?と、咄嗟に思ってしまって。
思わずぎゅと目を瞑ったところで
「大丈夫だから」
俺を見て。俺の眸を見てて?と囁かれる。
明るい朝日の差し込む部屋、ふたりしかいない。なのに、声を潜めていて。内緒話をしているみたいに。
ものすごく、熱で上擦ったような…うずうずしているのが隠し切れないような声色で、元貴が言うから。
本能で怖いと思ったのに。心と脳が空気に引き摺られたのか、体の奥にちりっとした疼きが生まれた。
昨夜、散々好きにされた体は、本能が感じた恐怖を即覆すほどに、すぐに熱が灯る。
だって、元貴だから。
元貴がすることだから、僕には受け入れる選択肢しかない。
僕が本当に嫌がることは絶対にしない、という信頼。
そう思うほどに、僕の体は元貴の色に染められている。
誕生日とか関係なく、いつでもそう、だけど。
伏せていた瞼を上げて、元貴の眸をじぃっと見る。
今まで、気持ち良くなりすぎて逃げようとする体を逃げられないように押さえつけられたことはあるけれど、縛られたことは、まだない。
だから、少し不安と、恐怖と、何に対するものかわからない期待と、で胸がどきどきしている。
きっと今の僕の顔は、そういう心情を隠しもせず元貴の目に正しく映っているんだろう。
「いい子だね、涼ちゃん」
ふふ、と元貴が満足そうに笑って、縄を結びだした。
そこから先は、冒頭の流れ通り。
どこかで習ったの?それとも、何年も僕に隠し続けた、そういう趣味があったの?と尋ねたくなるほど、嬉しそうに元貴は淀みない動きで僕の首と両手を赤い縄で縛っていく。
首周りは、小指一本分ほど通るくらいの余裕があるように計算されて結ばれ、その縄の先は首の後ろにまとめられた両の手首に絡められた。
少しでも腕を動かせば、首を縄がざりざりと擦れて皮膚が引き攣れる。じりっと痛くて苦しい。
痛くて、苦しい…はずなのに。
罪人が処刑を待つような格好なのに。
すごく、胸がザワザワする。
首を括られた時点で恥ずかしさに目を逸らしてしまって、まるで服従させるみたいに縄を引かれて、目を逸らさない俺を見ててと言われたから、視線は逸らさない。
『涼ちゃんが誰のものかしっかりと刻み込んで』
そう言われたけれど、刻むっていうのは…縄の痕のこと、なのかな…?
それとも、こういうこと僕にできるのは元貴だけだよって、この身を以て思い知ってってことなのかな…?
もし後者だとしたら、そんなの、僕の人生で後にも先にも、僕を好きに翻弄できるのは元貴だけなのは、わかりきったことだ。
「涼ちゃん、すごく、きれいだよ」
僕の首に絡められた縄を愛撫するみたいに触って、元貴が言う。
その恍惚とした表情に戸惑いながらも、僕が吐く吐息は熱い。
全身隈なく元貴に見られて、触れられていて、元貴が知らない場所なんて僕の体にはないのに、両手を首の後ろで縛られていることで、体を覆うものなく元貴の眼前に晒されている。
そう思うと、叫びだしたいくらい、恥ずかしくなった。
昨日だって、全身愛されたのに。
どうして?なんでこんな恥ずかしいの。
赤い縄で手首と首元を縛られた。たったそれだけのことで、こんな背徳感が増して、羞恥心が沸き上がって、高揚してしまうのは何故なんだろう。
「あっ…!や、もと、き」
そんな僕の心を知ってか知らずか、元貴が無防備になっている二の腕の裏側から脇まで、舌を這わす。
わざとゆっくり、ねっとりと嬲るみたいな動きに、上ずった声が出てしまった。
あぁ、いつもみたいに…
「いつもみたいに、声が抑えられなくて、かわいいね?」
酷く楽しそうで、興奮している声が、僕の心をすべて読んだかのように言葉を心の声にかぶせてくる。
言いながら、攻め立てる動きはやめてもらえなくて。
乳首を舌先で舐られる。
「っい、ぁ、ン…っ」
数時間前まで、啼くまで攻められた胸のそこは、弄られすぎて薄皮が剥けているのか触れられるだけでもじりじりと染みて痛い。
僕の反応に構うことなく、遠慮なく舌先で強く転がされて、力いっぱい吸われて、ぎりっと噛まれる。
「っ!あっ、ぃっ…はぅ、ッぐ」
痛い、と声が出たのに、元貴にもっとしてほしいと胸を差し出すように背が浮いてしまう。
背が浮いた途端に、跳ねた体の動きに合わせて腕が動いて、喉元をざりざりッと縄が横滑りに擦れ、潰れた呻き声が出てしまった。
快楽を与えられてできた一連の流れがもたらす、無機質な縄のいつもとは違う刺激。
体への変化に、背筋が一瞬冷え、すぐに体が熱くなる。
認めたくないけれど、自分の体だから感覚でわかる。
足の付け根の熱が、緩く、頭を擡げてる。
なにこれ。どういうこと…?
自由を奪われて、逃げられなくて、苦しいのに、確かに体が気持ちいいと思ってる。
自分の体のことなのに、理解が追い付かない。
そして、理解が追い付く前に、元貴が更に僕の体を作り替えていくから、成す術もなく、どうしようもない。
性器が緩く勃ち上がっているのを隠すように両足を擦り合わせると、目敏くそれを見つけた元貴がとても楽しそうに笑って体を浮かし、僕を覗き込むように伸し掛かる。
手が、左脚の足首を掴み、大きく開かされた。
「駄目だよ、閉じちゃうと見えないでしょ」
言い、ベッドのどこかに放ってあったのだろう、未使用の赤い縄を手に取ったのが見えた。
嫌な予感が脳裏を過ぎる。
いや、と首をふるふると横に振ったけれど、拒否は受け入れられず、首を動かしたことで縄が摩擦を起こし、薄皮が無駄に引き攣れるだけに終わった。
「…っ、もと、き、だめ…」
言いながら、身を捩る事もできずにされるがまま。
脚を開いたまま、左脚を折り曲げた状態で、太腿と脹ら脛が離れないよう縄が巻き付けられていく。
自分の体が身動きが取れないように縛られているのに、やめて、と小さく震える声が出るものの、大きく抵抗できない。
元貴が、まるでお気に入りの玩具を大切に扱うような表情をしていて、指先が優しくて、痛めつけたいわけじゃない、ということだけはわかっていたから。
何度か重ねて巻かれた縄は、きゅと腿と脛に食い込んで、なんだか複雑そうな結び目を作られた。
ぐちゃぐちゃになったシーツの上で、全裸のまま両手を首の後ろで縛られて、首輪みたいに縄をまかれて、片脚は閉じることもできず、あられもない箇所を余すところなく見えるように固定されて。
怖いとか、痛いとか、苦しいとかの不安があって当たり前なのに。
相手が元貴というだけで、何もかも許せてしまう、そんな自分に気付いてしまった。
この異常な空間で、そんな自分が、一番怖い。
隠せなくなった僕の熱に、迷うことなく元貴の手が触れて、ゆるゆると上下に指を動かす。
や、と震えた声が漏れて、逃げようとしたけれど逃げられるはずもなくて、体に力が入って、手首の縄と首が連動して縄が皮膚を擦って圧迫する。
決定的な場所をぎゅっと絞め上げるわけじゃなくて、ちょっと息が詰まるくらいのぎりぎりのラインで以てして僕を攻めて、それがすぐに体に与えられる快感と混ざって、気持ち良さにすり変わっていく。
どうしよう、苦しいのに。苦しくない。
ぞくぞくとしたものが背中を駆け上っていく感覚。
厭な冷や汗のようなものじゃない水分で、肌がじとっと湿っていくのがはっきりとわかる。
「や、だ…元貴、ぼ、く」
からだがへん、と声に出した途端に、ぼろぼろと涙が零れた。
嫌じゃない。僕でもはっきりとわかる。
手と首と足を縛られた恥ずかしい格好で、体を好きにされて、全然嫌じゃない。
嫌じゃない、という感覚に戸惑ってしまう。
元貴に作り替えられて、からだがへんになっていく。
手が動かない所為で拭えない涙を、元貴は困ったように笑いながらそっと拭う。
「大丈夫、変じゃないよ」
あどけなさを装って首を傾げて、僕の返答を待つ気もない指が、強く熱を扱く。
「ぃ…っやっ!あぁっ、っう!」
僕のイイトコロや感じる方法をすべて把握してる元貴の指の動きは正確。
擦られるたびに先走った粘液が先端から零れて元貴の手を汚し、にちゃりとした音が大きくなっていく。
「あっ!ぁっ、っは…あッ」
声と体が跳ねて、首に縄が擦れて、じんじんする。
僕の涙を拭う優しい指先と、熱を性急に追い立てる激しい指先と。
元貴は、変じゃないっていうけれど、
こんな、危うい、未知の世界のプレイをさせられて、気持ちいいなんて、どうかしてる。
元貴の強い希望だとはいえ、そこに快楽を見出して行為に溺れてしまうのは、すごく、とても怖い。
ぶるぶると震える僕の耳元に笑みに歪んだ唇を寄せて、
「ねえ、ここ、腫れてる」
昨日、たくさんしたからかな?
後孔の縁を確認するようにやわやわと指でなぞり、昨夜の熱を思い出させるようなことを囁かれた。
首を横にふるふると振り、
「ね…っ、元貴…、ふ、普通に、抱い、てよ…」
お願い、と、いつもなら強制されないと言わないような言葉で、懇願する。
お遊びじゃないと言いたげな本格的な赤い縄で縛られて、体の身動きを奪われて、なのに不安よりも期待に似た快楽を拾ってしまう体が、自分のものじゃないみたいで怖くて。
けれど、わかっていたけれど。
即、だめ。とにっこり笑顔で言われて、指が僕の中に入ってきた。
「っあ、ん…ッあ、ぁっ」
熱を銜えた記憶の新しい内側は、驚くほどスムーズに元貴の指を奥にまで迎え入れた。
ぐに、と中を引っ掻くように指を曲げられ、散々苛め抜かれたしこりをぐりっと押し潰される。
かはっと口を開けて、声が漏れそうだったけれど、漏れたのはひゅうっと鳴った空気の音だけ。
「好きにさせてくれるって言ったでしょう?」
いいんだよ、俺の所為にすれば。
はぁっ、と元貴の息が上がっている。
何枚も薄皮がはがれて真っ赤になっているだろう首の皮膚に、舌を這わせながら元貴が言う。
元貴の唾液が擦れた痕に染みてビリビリする。
俺の所為?どういうこと?
問いかけたくても、僕の口はまともな言葉が紡げない。
勃ち上がった熱も、指を銜えこんでるそこも、片脚を開いて固定されていて。
見てほしいと言わんばかりに元貴の前に晒されていて、限界を超えた羞恥心が、快楽でふやけた脳に冒されて蕩けていく。
内側に潜り込む元貴の指がいつの間にか増やされていて、恥ずかしい音を立てて激しく抜き差しされている。
ぐちゅぐちゅと聞くに堪えない音が響く合間に、やだ、やめて、と息を詰まらせながら溺れる人のように喘いで、首に縄が磨れるとわかっていながら、僕は体を捩る。
僕の感じる箇所を弄り倒して、受け入れるための準備を性急に施しながら、元貴が何か言ってる。
一語一句、聞き取れるし、意味もわかるけれど、もう、僕はそれどころじゃなくて。
「うっ、あ…っ!」
指が引き抜かれて、ずる、と異物が抜けていく感覚に背筋がゾワッとした。
折り曲げたまま縛られている脚の膝に口付けが落とされる。
硬く張り詰めた怒張を宛がわれ、元貴の前に差し出された生贄のような、供物にでもなったような気分で。
僕は混乱と快楽の渦に身を投じた。
side:omr
昨夜、散々抱き合って乱れたシーツの上で、涼ちゃんが気が触れそうなほど乱れていて、興奮と征服欲と支配欲と嗜虐欲に脳が沸騰しそうだ。
遮光カーテンの隙間から差し込む陽気は、健やかそのもので。
その陽気の下で、与えられる刺激から逃れようとして胸を突き出すように身を捩り、体を強張らせる姿態がすごく厭らしい。
首の後ろで縄に括られた手と、感じる度に連動して首に縄が擦れる様子。
閉じられないように縄で固定した脚が、艶めかしい。
本当に、あなたには、赤い縄が似合う。
いつもの、俺の脳を駄目にする厭らしい喘ぎ声が時折詰まって、眸がはっと開き、喉がひゅっと鳴る光景。
かわいい声がいつもより聞けないのは残念だけど、これはこれで一興。
背徳感の強い光景に、目が眩みそうだ。
痛めつけたいわけじゃないのに、嗜虐感に体が支配されていく。
ぼくのからだがへんだ。
そう言って涼ちゃんが泣いた。
全然、変じゃないのに。
好きにしていいって言ったよね。
なんなら、まだおかしくなってないの?おかしくなっていいんだよ。
誕生日だからって涼ちゃんの甘い言葉に傲慢さ全開で欲望をぶつけた、俺の所為にすればいいんだよ。
俺に縛られて、身動き取れなくされて、めちゃくちゃにされて、俺の所為で体が変になっておかしくなっちゃったんだって。
俺は、ずっとずっと前から、涼ちゃんに対して、どうにかなってて変でおかしいんだから。
ねえ
赤い縄で縛られて、堕ちていく涼ちゃん
とっても、きれいだよ?
「…っ、…ッやぁ!や、あーっ」
爆ぜそうな程に硬くなってる熱を涼ちゃんの中に押し込むと、ひ、と引き攣った悲鳴。
逃げられないのに逃げを打った体と連なって、首の縄がざりっと首を擦り上げる様が眼下、よくわかった。
細くなった喉の器官から声が潰れて出なくて、衝撃と息苦しさで歪んだ眸から、止めどなく涙が零れている。
順応力って、すごいと思う。
首が擦れて苦しいと感じて、すぐに手首の力を入れる方向を逸らして喉の器官を緩めて、吐き出せなかった悲鳴を迸らせる。
涼ちゃんの、そういうところ。才能あると思うよ。
大胆に広げて固定した脚を掴み、更にぐっと無理に開かせる。
硬い筋肉を広げる動きに、眉を寄せて苦しそうな表情。
構わず、一思いに奥に叩きつけて、間を置かずに滾る想いをぶつける様に腰を何度も打ち付けた。
「ひぐ…ッ、ま、まっ…待って…ッ」
待ってよぉっ、と悲鳴のような声が上がる。
衝撃で見開いた眸の中で、宝石みたいな黒目がぐるぐるとあちこちに揺れている。
まさに体が作り替えられている最中、それについていけていない思考。なのに、突かれる動きに合わせて素直に揺れる体と、熱を奥に誘い込むような腸壁の蠕動。
縛られて、動けなくて、恥ずかしくて苦しいのに。
なのに、気持ち良いいんだよね?
その表情がどこか恍惚としたものを滲ませている。
上半身を斜めに捩る。
逃げたいの?気持ちいいの?わからないけれど、感じていることだけはよくわかる。
露になった左の肋骨が浮き上がるほど体をぴんと張らせて、首の後ろで縛られている両手が祈るように組まれている。
汗ばんで、ほんのりと赤く染まっている肌に、場違いなほどくっきりとした赤い縄が映えていて。
「涼架、すごく、きれい」
きれいで、かわいい。そして、厭らしい。
表現者として失格の烙印を押されてしまいそうなほど、チープな言葉しか出てこない。
でも、ちょっと現実世界と乖離したこの空間では、それくらいがちょうどいい。
涼ちゃんの一番感じる、内側のしこりにぐりぐりと硬い熱を押し付ける。
執拗に、擂り潰すように。
「っ、ッ、―――っひ、アッ!」
びくん、びくん、と大きく二度跳ねた体。
射精を伴わない絶頂を迎えたみたいに。
声がうまく出ていないので目をやると、跳ねた両腕が振戦を繰り返し、首に回った縄を強く引っ張って、まるで自分で首を絞めたみたいになっている。
その動作によって、涼ちゃんの全身の筋肉すべてがぎゅううぅっと縮むような感覚。唯一自由に動く右の足先が、俺の肩に担がれたまま、爪先まで引き攣れるように伸び、空を蹴るように痙攣している。
叩きつけた熱が千切れるかと思うほど強く、ぬるついた壁がぎゅっと窄まり、ぎちぎちと絞られた。
「…ッや、ば」
思わず舌打ちをして、すべて奪われてしまいそうな収縮に耐える。
強すぎる刺激に、口元が笑みで歪むのがわかった。
その波を耐えきって、収縮を繰り返していつもより狭く硬く感じる内側を、再度突き上げる。
「っ!だっ、め…ッ、だめ、壊れ、っゃう…」
「いいよ?、っ思う存分、壊れてよ…っ」
縛られて、雁字搦めにされて、首絞められながら抱かれるの気持ちいいんでしょ?
涼ちゃんの眸が正気を失ったように光を無くして、ただただ与えられる悦楽に溺れている。
壊れちゃうよ、と譫言のような零れる言葉を拾って、言葉を返す。
俺も、息が弾んで、高揚感で声が上ずって唇が震えるのを隠せない。
ずっと文句を言うようにベッドの軋む音と獣みたいな互いの息遣い。
涼ちゃんの途切れ途切れの嗚咽みたいな嬌声、俺の莫迦みたいに興奮した、羞恥心を最大に擽る煽り文句。
陽が高く昇っていることを知らせる陽光。
世界は光り輝いているのに、俺と涼ちゃんだけ、闇に置き去りにされたみたいだ。
揺さぶられるままにがくがく揺れる涼ちゃんの口の端からだらしなく唾液が零れるのが見え、腰の動きを速める。
互いの体の間でもみくちゃにされた涼ちゃんの熱と、自分の熱の硬さが増して膨張し、そろそろ限界が近いと知れた。
激しく突き上げられて揺れる姿態、首に縄が擦れ、時折ぎゅっと食い込むように見える。
けれど、涼ちゃんはもう苦悶の表情を浮かべることもなく、完全に快楽へと変換させる術を覚えたらしい
耳元に唇を寄せ
「また、させて? っ、縛っても、いい?」
涼架、と低く、一番響く声で囁く。
焦点の飛んでいる眸が、それでも俺を探すように黒目が揺れ、絞り出すように言葉が漏れる。
「こん…ッな、の、あっぁ、んく…ッ」
誕生日だから許したのに。
と、ちぐはぐに見える答えが返ってきた。
でも、そうだよね、ちぐはぐじゃない。
焦点も飛んで、正気かどうかも怪しい涼ちゃんだけど、意外とその思考回路はきちんと繋がったままだったみたい。
こんなの、誕生日だから、元貴の好きなようにさせたのに。
縛られるのが気持ちいいなんて知らなかった。
…これで、涼ちゃんの答えはあってるかな?
あってるよね?
あってるってことでいいよね?
都合が良すぎる解釈だとしても、誕生日だから許してよ。
なぁんて、誕生日だって、今涼ちゃんに言われるまで、すっかり忘却の彼方だったけどね。
なんだかおかしくなってくすくすと笑う。
どんな状況で笑ってんだって話だけど。
そんな俺を、蕩けきった眸が捉え、こちらの笑みの意図をよくわかっていないだろうに、へらぁと笑顔になった。
なにそれ、やばくない?
かわいくてほわほわしてて、たまに息を飲むほどキレイで、察しも鈍くて、とんちんかんなこと平気で言っちゃう涼ちゃんを好きになったはずなんだけど。
縛られてあられもない痴態を晒して、べっしょべしょになった顔でイッちゃってるみたいに笑ってるの。
そんな顔、初めて見た。
好きだなあその顔も。
俺ってそう言う趣味があったんだなあ。
お誕生日おめでとう!わー!
っていう和やかな雰囲気なんて微塵もなくて、どちらかと言うとすんごいマニアックなプレイに溺れてるだけの、淫靡な空気に包まれた特別な日。
さしずめ、プレゼントは涼ちゃん自身。
赤い縄はラッピングのリボン代わりってことでいいかな?
…いいよね?
おわるよ
一日早いけど(あと数時間)おめでとうございます。
いいわけだけ、のちにさせてください…
コメント
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なんかもう、息するのも忘れて最後まで読んでました…! すごい世界だ…ホントに、私の知らないすごい世界に迷い込ませてもらった気持ち たぶん、ずっと口開いてた笑 こんな、こんな大人な世界を見せてもらえて、良いんでしょうか?🫣 どうしよう すごい笑