_猫と真っ黒_
猫になり尚且つ子猫であろう大きさではどれだけ歩いても全く持って近づいた感がありませんね。
それに私の背丈では、地べたから生える草花を鼻先から顔全体を使って掻き分けるのが精一杯で一体周りに何があるのやら。
「みゃうっ」
あたた、言ったばかりに何かにぶつかってしまいました。右手…右前足で鼻を擦りながら上を向けば、真っ黒な何かがあります。しかしこれはなんでしょう?正体を確かめるべく、私はどんどん上を向いていきます。
二本の棒のような——
羽根のような——
袖のついた布のような——
あぁ、これはただのマントですね。私だって知っています。しかし、マントだとするともしや人でしょうか?人ならあと少しで顔が…
また 羽根のような——
あと少しで顔が見えると、私はぶつかって尻餅をつくように座り込んだ体制のまま首をグッと真上につけて伸ばしました。
その瞬間、真っ黒のおそらく人であろうものがゆっくりとこちらを向きました。
……んみぁ、
…どうやら私が人だと思っていた真っ黒なそれは人ではなく鴉だったようです。







