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家に帰ったら日向が消えていた───




いつも帰ったら「おかえりなさい」と満面の笑みで駆けつけてくるあの可愛い姿は居らず、買い物にでもいっているのかなとそこまで違和感を感じることなく、そのままリビングへと足を運ぶ。

日向が居ないせいか、やけに部屋は静かで寒くて、そして切ない。

今までだって日向が外出して家にいないことなんてあったのに、今日だけは、今日だけは何故か、物凄く寂しく、切なく感じた。

心が締め付けられるようだ。

何でだろうと考えつつも、ソファに座ろうとする瞬間、そこでやっと違和感に気付いた。

リビングにあったはずの日向のものが全てなくなっていた。

言うなれば、写真や、日向の鞄、日向が表紙のスポーツ雑誌、朝ベランダに干したはずの日向の服、日向の歯ブラシ、日向のコップ、日向の……


これまで言ったもの以上にも日向のものはなくなっていた。いや、消えていたとでもいうのが正解なのだろうか?

跡形もなく、消えていた。


「…ひ、なた?」

口から溢れ出す言葉は、相手には届く訳もない。

なにかの冗談だろうと、スマホを開き日向へ電話をかけようとしてみても、日向の連絡先すら、スマホには反映されていなかった。

スマホを握る手が強ばり、喉元がきゅっと切ない音を立てる。

家中のどこを探しても日向はいない。

日向と関わりをもっている人に電話をかけて日向のことを聞いても、皆が口を揃えて「誰だ?」と言う。

家のものだけではない。

存在が、

日向の存在自体が消えてしまっていた。


「ひなたっ…!」


自分の愛する相手。

世界でたった1人の愛しい人。

やっと結ばれた、やっと一緒に暮らすことが出来た。

合宿で遅れてやってきた君に一目惚れして、アピールして、合宿で告白して、そのまま晴れて付き合えるようになって、遠距離だけどたまに逢瀬を続けて、大人になって、日向はブラジルへいって、プロバレーボール選手になって、やっと落ち着いた頃にこうして今までより幸せな日々を手に入れた頃なのに

それなのに


いつから?なぜ?どうして?俺が何をした?日向が何をした?幸せに暮らしてただけじゃないか。喧嘩もせず、ただひたすら愛を育んでいただけなのに、なぜ日向が?なんで?なんでなんだ。

脳内に過ぎるのは日向のことばかりで、

気がつけば瞳からはポロポロと雫が落ちていた。


「ひ…なた?どこいったの?なんで…俺を置いていくの?」


そう、

誓ったんだ。

同棲する前、誓ったんだよ。ひなたと。

絶対に置いてかない。裏切らない。2人一緒……って、

誓ったはずじゃないか


「ひ、なた……ひな…、しょう、よう…っ」


溢れんばかりの思いが胸を締め付ける

苦しい


いっそこのまま殺してくれ

日向がいないのならば、日向が存在しないのであれば、俺にこの先を生きていく価値なんてないのだから


足元がおぼつき、ふらっと身体の芯が抜けたように倒れてく。


そう、殺してくれ


頼む

ひなた……






「…赤葦さん、起きて、ほら起きてくださーい。休みだからって寝すぎです。構ってくださいよ」

「ひ…なた??」

「日向ですよ!もー、やっと起きた!」

目を覚めれば、目の前には日向がいて、

あぁさっきのは夢だったんだなって気づいた。

今まで生きてきたけど、あんなに苦しくて息も出来なくなるような夢は初めてだった。

まるで本当に起こりそうで

目の前の幸せがいとも簡単に崩れてしまいそうで…


「赤葦さん?」

俺の名前を呼ぶ日向の頬をするりと撫で、そこから強く抱きしめる


「夢を見たんだ。すごく怖い夢、…死ぬかと、おもった…」

切ない声は自分でも伝わるようなもので、日向はそんな俺にぎゅっと抱きついてくる

暖かい。これを感じたかったんだ。俺は……

「もう怖くないですよ!ね?…でも、赤葦さんにも怖いって思うやつあるんだ」

「…うん、今まではなかったはず、なんだけどね。………すごく怖いものができちゃったみたい。だからお願い日向。今日は離れないで欲しい」

自分でも情けないと思う。

それでも、それでも離れたくない。

この温もりを手放したくない、今感じれるこの温もりが消えてしまう前に今存分に味わっていたい。


それぐらいは許してほしい。




あの夢をもう二度と見ないように……


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