最終話
〈きんとき視点〉
映画が終盤に差し掛かった頃だろうか
ふと、隣に視線を向ける
感動シーンだからか澄み渡る青空のような瞳に涙が浮かんでいて、宝石のように光り輝いていた
綺麗、、映画なんてどうでもいいぐらいその瞳に引き込まれ、釘付けになる
結局映画の内容なんて何も覚えておらず、覚えているのは彼のことだけだった
大好きだった。いるだけで周りが明るくなる彼の無邪気な笑顔が、自分を持っている強さが、俺を映すあの透き通った大きな瞳が、人の為に行動する優しさが
ぜんぶ大好きで大切だった
本当はなかむに伝えたかった。親友じゃない特別な関係になりたかった。あたりまえだろう?
でも、俺は男で彼も男。俺は気にしないがなかむは違う、世間は違う
彼が好奇心と軽蔑の目に晒されるのはなんとしてでも避けたかった。
それに、男が好きだなんて気持ち悪いと思われて、嫌われる
だから好きな女の子と付き合って、結婚して、幸せになってほしい、それで、、
俺を諦めさせてほしい
そう思って言ったのがこれだった
「好きな人できた」
なかむのことだ、親友の恋愛なら本気で応援してくれるだろう。
そうすれば諦められる。あるわけないのにほんの少しでも期待を抱いてしまうこの気持ちを捨てられる。
なのに、
なんで泣きそうなんだよ、
口から出る言葉と逆の表情をする彼
応援してると言いながら目には涙を浮かべ、今にもこぼれ落ちてきそうだ
苦しい、辛い、悲しい、そんな顔をする君をみてると、バカな俺は淡い期待を持つ
そんなわけないのに、もしかしたらって思ってしまう
やめてほしい、期待させないでほしい、なんともないような反応するんじゃないのかよ、、、
それに、そんな苦しそうな顔しないでくれ、、、
向かいに座っている彼にそっと手を伸ばし、目に浮かんだ涙を優しく拭う
すると大きな瞳をさらに見開き、スッと目線を逸らす
怒ったのかと思ったが、耳が赤く染まっている
あれ、これってもしかして、、もしかするんじゃないか?
「ねえなかむ」
「、、なに」
「どうして泣きそうなの??」
「別に、泣きそうじゃないし、、」
なかむの頬に当てていた手を離し、一度席を立つと そのままなかむの隣へ移動して腰を下ろす
ゆっくりと両手でなかむの頬を包み込みこちらを向かせる
「俺に好きな人ができたことが嫌だったの?」
「っ、、、、」
動揺で揺れる瞳をじっと見つめると初めて目が合う
こんな状況でもかわいいのなに?
少しするとなかむの瞳から大粒の雫が溢れ出してきた
「え、え、ちょ、なかむ、、?」
「ごめ、ごめん、、きんときごめんっ、、」
なかむの体を抱き寄せて背中をさする
「なかむ落ち着いて、大丈夫だから、大丈夫、ゆっくりでいいよ」
「おれ、おれっ、、きんときのことが、、すき、だいすきっ、、」
「うん、、」
「ずっと、ずっと好きでっ、、でも、、好きな人できたって聞いて、、、好きになってごめん、、俺なんかがっ、、、、ごめん」
腕の中で震えながら泣くなかむが可哀想で、可愛くて、愛しくて仕方がない
「謝らないで、俺なんかがなんて言わないで、、俺が好きなのはなかむだよ」
「 、え、、、?うそだ、、だって、女の子じゃ、、」
「嘘じゃない、女の子じゃなくて、なかむのことが好き。でもなかむには普通に幸せになってもらいたくて、好きな人できたって嘘ついた。諦める理由にしょうとしてた。ほんとごめん」
俺の言葉にようやく涙が止まったのか、少し離れて目を見つめてくる
そのままなかむはふわりと笑みを浮かべる
「謝らないでいいよ、きんとき悪くないし」
そんななかむの目をまっすぐに見つめる。ああ、俺やっぱりこの瞳が好きだな
「なかむ、世界で一番大切で愛してるよ、俺と付き合ってくれますか、?」
白い頬を赤く染め幸せそうに笑いかけてくる
「断るわけないだろ、だから一生愛してね」
「もちろん」
愛しい彼にそっと唇を重ねた
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