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「はー、美味しかったですね♪」
夕食を済ませると、満足そうなエミリアさんの台詞が聞こえてきた。
「そうですね。食事まで豪華にして頂いちゃって……、何だか申し訳ないような。
ところで結構大盛にしてもらっていましたけど、足りましたか?」
「まだ入りますよ!」
「「ですよねー」」
多分、今回出された2倍、3倍くらいは余裕だろう。
未だに、エミリアさんの華奢な身体のどこに入っていくかは謎なんだけど……。
「ちなみにルークは足りた? いわゆる普通の量だったけど」
「ええ、今日も馬車に揺られていただけですからね。
さすがに戦闘をした日は足りないかもしれませんが……」
「ふむ……。そうすると、エミリアさんのお夜食を買い貯めておいた方が良いでしょうか。
ルークが食べる設定にして」
「ま、まぁ私は構いませんが……」
そう言うのはルーク。
実際のところ、大食漢と言われればそう見えなくも……無さそうだし。多分。
「ふえぇ……。
それはありがたいのですが、ルークさんの格好良いイメージがちょっと崩れちゃいますね……」
「大丈夫ですよ、自分ではそんなことは思っていませんので」
「ではお願いしますぅ……」
さらっとイケメンなことを言うルークと、素直に甘んじるエミリアさん。
人は助け合ってこそなんだけど、何というかもう少し前向きな解決もしておきたいものだ。
「さて、あとはゆっくりするだけなんですけど――
……王都ではやることがたくさんあるので、少しまとめてみませんか?」
「そうですね。それなりに旅をしてきましたし」
「アイナさんたちと出会ってからのことならわたしも分かるんですけど、その前は知りませんので。
ぜひぜひ、教えてくださいな」
「はい! とりあえず紙に書き出していきますか」
そう言いながら、アイテムボックスから紙と鉛筆を出す。
「えぇっと……まずはガルルンの置物の受け取り……っと」
「まずはそこなんですか」
エミリアさんから、早速ツッコミが入る。
「アイナ様、王都の北の迷宮に行く……という話もありましたよね」
「あ、そうだね。特に狙うものはないんだけど、いろいろアイテムを探しにいくみたいな感じ……だったよね。
ちなみにその迷宮って、何ていう名前なんだろう?」
「『循環の迷宮』って言うんですよー」
「……循環?」
「ええ。中には水や空気が絶えず循環していまして、とても清潔な迷宮なんです。
知られている迷宮の中でも、特に人気が高いですね」
私の知っている迷宮は、今のところ『疫病の迷宮』と『神託の迷宮』のみ。
『疫病の迷宮』はその核を私がアイテムとして持っているから、現状この世界には存在していない。
『神託の迷宮』は辺境都市クレントスの北方にあるそうだけど、内部には何も無いらしいんだよね。謎の迷宮、っていう感じらしい。
「なるほど……。私はまだ迷宮に行ったことがないので、とても楽しみです。
詳しくはまたその内、教えてください」
「はーい♪」
「あとは……冒険者ランクを上げる、っていう話もあったっけ?」
「そういえばありましたね。
冒険者ギルドで引き続き依頼を受けるなら、上げておいた方が良いかもしれませんが……」
「うーん、そうだね。
どれくらい受けるかは分からないけど、あって困るものでもないし」
「ミラエルツでは結構依頼を受けましたから、申請すれば少しは上げてもらえるかもしれませんよ。
特にアイナさんはFランクなので、それなりには上がると思います」
「ふむふむ。そういえばルークも、実力とランクが見合っていない感じだったよね。
私は良いんだけど、ルークのランクはたくさん上げておきたいなぁ」
「え? 何でですか?」
「ほら、戦闘職なら箔が付くでしょ?」
「確かに……。
アイナ様の従者がD-ランクだなんて、アイナ様の偉大さを霞ませてしまいますからね。
せめてSランクは目指すことにしましょう」
「ルークさん、それって英雄レベルなんですけど……」
「いえ、それくらいは無いとアイナ様には足りません!
本当はS+ランクを目指したいところですが」
「S+ランクは3人しかなれませんからね。そう考えると、Sランクなら7人なれますし……?」
「あれ? 冒険者ランクって、人数制限があるんですか?」
「S-ランク以上にだけあるんですよ。
S-ランクが10人なので、世界のトップ20がそこに名を連ねることになります」
「へー。何だか格好良いですね」
「確かにそこまでいけば、アイナさんの力量が保証されるようなものですからね。
世界のトップレベルの冒険者が、専属の従者になっているわけですし」
……うーん、ルークは従者というか、仲間っていう感じなんだけどなぁ。
私の本心はそうなんだけど、言葉に出すとルークもいろいろ考えそうだから控えておこう。
「それじゃランク上げも狙う……ということで。
えぇっと、あとは王様がオリハルコンを持ってるらしいので――」
「え? それも頂いちゃうんですか!?」
「頂いちゃうだなんて人聞きの悪い! どうにかして頂戴できないかなと……」
「同じことじゃないですか……?」
「はっ、確かに!
でもこれは錬金術で作れないことも無いので、できれば……ってことで」
「ほぇ……? つ、作れるんですか……?」
「『賢者の石』っていうのが必要ですけどね。
……あ、そうか。それならその情報も探してみようかな」
「それでしたら、錬金術師ギルドに行くと良いですよ!」
「錬金術師ギルド?
そういえば王都って、ギルド活動が活発なんでしたっけ」
「はい、錬金術師の方もたくさんいますので、困ったことは相談できるかと思います。
それに、素材の売買も活発らしいですし」
おお、それは良い情報だ。
ここにきてようやく、錬金術のゲームっぽい展開に!
「そういえばアイナ様、ガルーナ村の件での褒賞……の話もありましたね」
「あ、そうだね。それは、とりあえずエミリアさんの大聖堂の上司――
……大司祭様にお話を持っていけば良いんでしょうか」
「そうですね……。それでは明日、大聖堂に行きますか?
わたしも帰還の報告と、もう少しアイナさんと一緒にいる許可を頂きたいので」
「分かりました、では明日はそうしましょう」
正直のところ、王様は『疫病のダンジョン・コア』のことを知っていそうな気がして……何となく、王様とは会いたくないんだけどね。
……というかそもそも、国で一番偉い人になんて会いたくもないわけで。
私はただの一庶民。普通の世界で生きていられれば良いのだから。
「――あとはエミリアさんと一緒に、装飾魔法を勉強しにいく……と」
「そうですね。それと、情報操作の魔法を使える人を探さないと!
アイナさんのアーティファクト錬金の効果を隠さないと……ですから」
「そうでした、そうでした! 王都は人が一気に増えますからね。ここはしっかり自衛していかないと。
それじゃ、これも優先順位を高くしておきますか」
「他は、何かありましたっけ?」
「わたしはそれくらいですー」
「私もですね。大丈夫だと思います」
さて、それじゃ今挙がったもの以外で私が目指すのは――
『安寧の魔石』探し。
高負荷の術の反動を軽減する効果がまだ合計15%だから、できるだけ100%に近付けたいところだ。
『神器の作成』。
これはそもそも素材が分からないから、そろそろ覚悟を決めて調べてみないといけないかな。
安寧の魔石をできるだけ揃えたあとにしたかったけど……。
『神器の素材集め』。
これは神器の素材が分かったあとじゃないとね。
どんな素材がどれだけ必要になるか、今はまったく分かっていないわけだし。
あとはその合間に、水魔法の練習くらいかな?
それじゃ全部まとめると――
──────────────────
★やること★
・ガルルンの置物を受け取る
・『循環の迷宮』に挑む
・冒険者ランクを上げる
・オリハルコンの入手
・『賢者の石』の情報集め
・錬金術師ギルドに行ってみる
・ガルーナ村の褒賞を受け取る(あれば)
・装飾魔法を勉強する
・情報操作の魔法を使える人を探す
★その他★
・『安寧の魔石』を集める
・神器を作成する
・神器の素材を集める
・水魔法を勉強する
──────────────────
「――って、ずいぶん多いね!?」
神器については二人には分からないように紙に書いておいたけど、全部を足せば実に13項目!
思ったよりもずっと多かった!
「アイナさーん。
これはもう、ヴェセルブルクに住んじゃった方が良いのでは?」
エミリアさんが定住の勧誘を仕掛けてくる。
……正直、それ自体はとても魅力的なんだよね。
「うーん。もう家でも買っちゃいますか」
「借りるという選択肢は無いんですか!?」
「あ、そうですね……。借りる、でも良いのか」
「とはいえ、アイナさんは家を買うくらいのお金はありそうですからね……」
「足りますかね?
それではちょっと、考えてみましょう。うーん……」
私も元の世界では自分の家が欲しかったものだけど、このタイミングで買えたら快挙だよね。
17歳の女の子が、自分の稼いだお金で即金で家を買う。
なんだかとっても現実離れしていて面白い……いや、そう考え始めたらどんどん買いたくなってきたぞ!
衝動買いをする金額ではないんけど――
……ああもう、そっちにスイッチが入っちゃったかも!!