ファン

阿部が時々、目黒の家に遊びに来ることが出来るようになって、落ち着いてきたのかなと目黒は思う。

泊まることはせず、帰って行くが会えば熱い時間を過ごすこともある。

阿部は臆病になった。

怖い思いをしたから仕方ないけどファンを信じられなくなってきている。

一部のファンのためにその他多勢のファンも信じられないようになっている。

収録日。

目黒ーいいファンがほとんどだよ？

阿部ー信じようと思うけど怖くて。

目黒ーこれから先、コンサートがあったらどうするの？

阿部ー今は近くに寄りたくないんだ。

目黒ーファンサの鬼が。

阿部ーだってぇ・・。

目黒ーファンが泣くよ？

阿部ーそうかもしれないけど。

目黒ー今は信じられないんだね？

阿部ーうん。

グループの皆んなも、側で聞いてたけど、口を挟めなかった。

ファンのせいではあるけれど、ファンを信じてあげてほしい。

この日は外ロケの日だった。

阿部は怖いと言ったが、仕事を休むわけにはいかない。

３つのグループに分かれて別々の場所を移動している。

阿部のグループは、警護する人が2人多いし、メンバーも阿部を真ん中にして歩く。

声援が飛ぶ。

ぎこちないながらも、阿部も手を振る。

５歳くらいの女の子が近寄って来た。

佐久間と阿部と向井の3人は足を止めてしゃがむ。

後ろから母親が「りお」と呼ぶ。

りおー阿部ちゃん！

佐久間ー阿部かぁ。

向井ー負けた。

阿部ーこんにちは。

りおー阿部ちゃん、大好き。

阿部ーありがとう。

りおー飴ちゃんあげる。

阿部ーありがとう。

りおー元気出してね。

阿部ーん、元気だよ。

りおーお顔が怖かった。

阿部ーごめんね。

りおー笑ってる阿部ちゃんが好き。

阿部ーん、笑う。

りおーばいばーい。

阿部ーばいばい。

りおちゃんは母親と帰って行く。

阿部はもらった、飴を食べる。

佐久間ー可愛いファンじゃねーか。

向井ー阿部ちゃんしか見てへんかったし。

阿部ー俺、怖い顔してたのかな？

佐久間ー笑ってなかったな。

向井ー外が怖いんやろ？

阿部ー多くの人が見てるんだから気をつけないと。

佐久間ーこんなに守られてるんだ、笑え。

阿部ーうん、大丈夫な気がする。

手を振って笑う余裕が出てきた。

楽しいロケになった。

目黒の家に帰って来た。

食事をして、コーヒーを飲んでいる。

阿部は今日会った「りおちゃん」の話をしている。