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さらに時は遡《さかのぼ》って数時間前。
「え?え?えーーーーーー?
白い部屋に!白いじーちゃん!
これは!もしかして!もしかすると!もしかするぞー!ひゃっほう!」
すでにマサユメはテンパって、何を言ってるのかわからなくなってる!?
しかも踊ってる?めっちゃ踊ってる?
ダンシングオールナイトフィーバー!?
彼の名は服部正夢 40歳 独身 乙女座
ちなみに彼女いない歴 40年
いわゆる魔法使い?賢者?妖精?
彼の生い立ちは、生まれてから高校卒業までを三重県の実家で過ごし、大学入学から大阪で一人暮らしを始める。卒業後は会社勤め。
が、元々、影のように存在感が薄いのに、曲がったことが許せない性格。
さらにコミュ障で人付き合いが苦手。
その性格が故に最初の会社でいわゆる理不尽ないじめにあって追い出され、そこで人間不信ってやつになった。
それから職を転々と変えるがどれもあまり長続きせず、日雇いの仕事に変わっていった。
晩年はある程度、人間不信は解消して普通に会話はできるようになったのだが、彼女ができるほどの会話のセンスはない。
よって、趣味はラノベを読むこと。
日課のランニングでゴミ拾いをすること。
ほんとに人との会話がない生活を送っていた。いわゆるボッチというやつである。
「なんか、異世界転生とかしたいなぁ!
はぁ、神様いないかなぁ!」
流行りの転生ものラノベを読みながら、こんな独り言を無意識に何度も呟いていたら……。
突然、白い部屋に!
異世界ストーリーは突然に……。
「なんか、お主、テンション高いのう?
聞いてたイメージと違うんじゃが……。
君、服部正夢くんで間違い無いかのう?」
「あ、すいません!
はい!間違いございません!
ありがとうございます!」
「いきなり礼を言われても困るのう……。
まだ、なんも説明してないんじゃけど。
まあ、なんとなくわかってるみたいじゃから、簡単に説明するぞい。
ちなみにわしはこちらの世界の神様じゃ。」
「はい!神様ですね!そうですよね!
よろしくお願いします!」
「まだ、何も言うとらんて!
ところで君!
毎日、ランニングがてら、ゴミ拾いしてたみたいじゃのう。
徳徳ポイントが相当貯まってるぞい。
それでな。
君、友達も、彼女もおらんし、会話もほとんどしてないのう。
さびしんぼポイントが激貯まりじゃ。
そしてな。
その合計ポイントがなんと10000ポイントを超えたらしいぞい。
それで、地球の神様からわしに連絡があってのう。
こちらの世界に転生できる権利を得たってわけじゃのう。」
「めっちゃ簡単な説明でした。
ありがとうございます!」
「それ、どっちにも取れるのう。
なんか複雑。
まあ良い。
では、君からなんか質問あるかのう?」
「あ!はい!
転生した後ってなんかやらないといけないことはあるんですか?
魔王討伐とか。7つの球を集めるとか。」
「なんか、君、すごい展開が早いのう。
それって最後の方に聞くやつじゃろ!
まあ良い。
やらなきゃならんことは初めの方は特に無いのう。
まあ、それはおいおい自分で探してくれるかのう。
そのうちわかってくるじゃろ。
他に質問はあるかのう?」
「あ、あのー。
質問ではなく、お願いがありまして……。
厚かましいお願いであることは重々理解しているのですが、せっかくの異世界ですので、言語理解と鑑定とストレージ、あと、初期装備と少々のお金を準備いただけるとありがたいのですが……。
厚かましくって、すいません!」
「ほう、ものすごくサクサク進むのう。
さすがラノベ好きだけあるのう。
しかし、今から行く世界は最初からスキル持っとるやつはおらんのじゃがな。
まあ、そんなくらいでええんじゃったらお安い御用じゃ。
もっとえげつないこと言われると思うとったワイ。好印象じゃな。」
「はい!あ!出来れば、もう少し若い方がいいかなって……。
ははは。だめですかねえ……。」
「それはもともと考えちょったことじゃから大丈夫じゃ。
若くしておいてやるから心配するな。」
「やったー!ありがとうございます!」
「あと、言語は心配せんでもええ。」
「へ?」
「そういう設定じゃ!」
「はぁ?」
あと、なんやかんや。なんやかんや。
いろんな説明を簡潔に教えてくれました。
「ほんじゃ、そろそろ時間が来たようじゃ。
お主はいきなり成人じゃから最初にジョブを決めてもらえるかのう。
本来なら10歳の成人の儀に家柄や性格に応じたジョブが決まるんじゃが、君は好きなものを選らんで良いぞ。」
「あ……。ジョブ!来たーーー!
なら、テイマーがいいです。
なかまが欲しいので。へへへ。」
「ほう、テイマーかのう。
念のために言っておくが、こちらの世界ではテイマーは不遇職と言われておるぞ。
しかもほとんどおらんジョブじゃのう。
それでも大丈夫かのう?」
「うーん……。
はい、やっぱりテイマーがいいです。
よろしくお願いします!」
「そうか。ではテイマーにしよう。
まあ、普通のテイマーじゃあれじゃから、サービスしておくとしようかのう。
サービスサービスー!」
(スルー)
「はい、いろいろ親切にありがとうございます!」
「……よし!
そろそろ転生させようかのう。
着いたら、まず、ステータスの確認じゃ!
それから、1匹目のテイム可能なモンスターを近くに置いとくから、忘れずにテイムするようにな。
なかなかテイムできんと、またボッチになってしまうからのう。
これもサービスじゃ!
サービスサービスー!」
(スルー)
「……よし!
君がいく世界の名は
“ケルラディア”じゃ。
よろしく頼むぞ!」
「はい!ありがとうございました!
行ってきます!」
プチュン!
「はー、言ってしもうたのう。
これ大丈夫かのう?」
神様もちょっと心配になってきた。
「うまくいくといいんじゃが……。」
ある白い部屋の出来事でした!
こうして、コミュ障おっさん【服部正夢】は異世界に旅立って行った……。
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