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ええわあ……
将来の夢。
そのたった一言で耳が腐りそうになった。
社会の為。自分の為。僕は僕を捨てて動く。
そんな未来は嫌だった。
だから僕は。
未来から目を背けてみたんだ。
静かな家。
本当に静かかは分からないけど、僕はこのヘッドホンという名の世の声を遮断する耳栓を取りたくなかった。
社会。それは僕の敵だった。
いつからそうなのかは分からない。ただ、昔から根性がなかったのは覚えている。
そういえば昔の僕ってどんな感じだっけ?それすら忘れてしまったな。
「はぁ…。」
僕は学生。学校には行かない。
学校のことを思うだけで心臓を握られた気持ちになる。
何度も何度も何度も何度も何度も。
比喩でもぐちゃぐちゃにされた心臓が毎度頭に浮かぶ。
ヘッドホンの内側から嗚咽が響く。いつの間にかまた…
「はぁ…はぁ…ぅ…」
嫌なことを思い出してしまった。
そう。僕はいじめられていた。
だから家で現実に目を向けずずっとゲームをしていた。
ただ幸いなことに、頭は悪くなかった。
生憎、それで更にいじめられることになるけれど。
とりあえず落ち着いた頃、僕はあるゲームに手を出していた。もう昼時だが、何かを食べたいとは思わない。あれ?何日食べてないっけ。
そのゲームは有名会社のやりこみがいがある人狼ゲームだった。この会社のゲームは全て把握しているが、どれも高評価。そんな会社の新作だ。面白いに違いない。
さっきの感情はどこへやら。内心うきうきしながらゲームを起動する。
…..画面は真っ赤に染っていた。
よく見ると人影が2つあった。女性と男性。
少し背が高い男性は髪がくしゃくしゃになっており、言っては失礼だが女性は少し老いている。
そして…
「腹が…」
その女性の腹部は、まるでボイル後の脂身の少ない肉のように見事に裂けていた。画面が赤い原因はこれか…
妙に冷静だった。だんだん画面が赤黒くなってから気がつく。
「これ…本物の映像だ…」
一体どこの動画か、誰が撮ったのか、この男女は誰なのか。それを突き止めようとしたが、赤黒く染っていく画面を必死に見ても何も見つからなかった。
この時、可能性をいくつか考えていた。
事前に撮られた映像で、この女性は死亡している。あるいは、そういう演技か。それとも___リアルタイムか。CGと信じるか。
仮にこの女性が本物なら、もう手遅れだ。この女性は既に…
あ た ま が い た い 。
気がつけば、僕は叫んでいた。
なんて言っているのだろう。何故叫んでいるのだろう。
自分の無力さが嫌になったか、いじめられている自分と重ねてしまったのか。ずっと脳に響く自分の叫び声は考えても考えても止まらない。
次の瞬間、僕は気絶していた。