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塚地小鳩の武器は金槍・水鳥。
久坂剣友が彼女のためだけに作った武器である。
南雲の作る武器は通常時、縮小化して収納が可能であり、使用する際に煌気を流せば元の大きさになる乾燥ワカメ方式。
対して、久坂の作る武器にはそのようにオシャンティーなギミックはない。
際立った特徴のない代わりに、超良質のオジロンベを磨き上げた槍の煌気伝達速度と質は南雲の作る武器を上回る。
つまり、同じ人間が同じ煌気量でスキルを撃つと仮定すれば、小鳩の金槍・水鳥は多くの探索員が持つ武器の中でも相当上位に数えられるだろう。
無駄を省く昔気質な久坂と、不器用ながらも1つのスキルを磨き上げる小鳩の師弟相性は良好で、ポテトチップスとコーラに匹敵するとか。
「みなさま、お下がりくださいませ!! わたくしが逆神さんをお救いいたしますわ! このお排泄物なゲルなんて、わたくしの槍にかかれば!!」
「待ってください、小鳩さん!!」
槍をクルクルと回してウォーミングアップ中の白き乙女に待ったをかける六駆。
何か妙案を思い付いたのだろうか。
「一応! 一応ですけど、このゴールデンメタルゲルの偽物のイドクロア的な価値を確認して貰えますか!? じゃないと僕、ここから出ませんよ!!」
「ちょっと何言ってるか分からないですわ」
チーム莉子の3人娘にはバッチリ伝わっていた。
莉子が「山根さん、お願いします!」とすぐに問い合わせる。
『ええと、逆神くん。まず残念なお知らせなんすけど。1回戦の趣旨的に、イドクロアの採取も得点に加味されるので、そこは良いんす。ただ、試合が終わったらイドクロア、全部協会が回収するっすよ?』
「小鳩さん! ひと思いにやってください! 全力で、塵も残さず!!」
「ええ……。ちゃんとイドクロアを採取いたしますわよ……」
話は纏まったようである。
改めて、小鳩は槍の切っ先を六駆を飲み込んでいる巨大なゲルに向けた。
「参りますわ! 『銀華』!! 逆神さんの教えを生かすときですわよ!! 『十枚乱舞・なで斬り鳳仙花』!! はぁぁぁぁぁっ!! てぇやぁっ!!」
10枚の舞い踊る『銀華』を切っ先で器用に操り、小鳩は槍を振り回す。
その様はまさに撫で斬り。
場を支配するのは自分の槍であると主張する軌跡はゴールデンメタルゲルモドキのスキル反射の速度を上回る。
厳密には、跳ね返って来る『鳳仙花』を更に『銀華』ではね返している。
そうなると、反射属性を持つ外皮の限界が訪れるまで猛攻は続き、いずれ力のない者が倒れるのは自明の理。
「ブルシャアァァァァッ」
「ああ! 出られた! ありがとうございます、小鳩さん!!」
逆神六駆、自分の力を使わずに復活。
彼にとって、他力で生きる方が自力で事を成すよりもずっと難しい。
「やったぁ! 小鳩さん、すごいです!! 特訓の成果ですね!!」
「いやー。すごい槍捌きだったにゃー。これは近接戦の戦力大幅アップー!」
「みみみっ! 芽衣が近接戦闘員から外されるのは大歓迎です! みみみみっ!!」
「な、なんですの、あなたたち! そんな風におだてたって! わたくし、有頂天になるほど安い女ではありませんわよ!? 勘違いしないでもらえるかしら! 普段褒められることがないから、死ぬほど嬉しいのですわよ!!」
クララの琴線に小鳩が触れる。
ぼっちの弓使いは「この戦いが終わったら、小鳩さんと一杯飲むにゃー」と心に決めたらしい。
◆◇◆◇◆◇◆◇
アリーナでも、小鳩の槍スキルは大きな盛り上がりを見せていた。
『出ましたぁ! 塚地Aランク探索員、秘密のベールを脱ぎさった! 久坂監察官仕込みの槍術が咆哮するー!! なんと、ゴールデンメタルゲルモドキの外皮を破壊! これは相当な威力がなければできません!!』
『いや、もう本当に塚地くんは最高ですよ! 久坂さんの育て方が良いんだろうなぁ!! あっはっは!!』
『まったく、よその監察官室から助っ人を呼ぶとはねぇ。南雲さんの自前の探索員はお粗末でしたねぇ? 逆神でしたか? Dランクを対抗戦に出すなんて、酷な事をするなぁ』
下柳の嫌味も、南雲にとってはご褒美である。
『もう、おっしゃる通り!! 逆神くんは経験のために出したけどなぁ! 早かったかなぁ! スキルだけは久坂さんに見てもらっているから、珍しいんですけどね? スキルだけは!!』
不意に審査員席に座る加賀美政宗と目が合う南雲。
背中を守り合ったかつての戦友に言葉はいらなかった。
「ホントにお願い! 加賀美くん、逆神くんに関しての情報は内緒にしといて!! お願い、私なんでもするから!! そうだ、お子さんに自転車買ってあげるよ!! 6段変速のカッコいいヤツ買ってあげる!!」
アイコンタクトで多くを語る南雲修一。
言葉はいらなかったのではなかったか。
加賀美はその意を汲み取り、「分かっています。南雲さん」と頷いた。
加賀美の心根もまた清らかであり、騎士道精神に土下座する事でさらに安全圏へと逃げおおせる南雲。
後は適当に勝ってくれれば、万々歳である。
◆◇◆◇◆◇◆◇
常盤ダンジョン第3層のモンスターは、先ほど小鳩が粉砕した六駆の恋人の偽物だけだった。
現在、六駆が『氷海の雪』でゴールデンメタルゲルモドキの外皮を凍らせているところ。
とりあえず1回戦に勝てば50万円のファイトマネーを確保できるとあれば、六駆もルールに従う。
貴重かもしれないイドクロアは全部採る。
先ほど確認したチーム莉子の方針だった。
「さあ、ご迷惑をおかけしましたがもう大丈夫! イドクロアも採れたし結果オーライ!! 次の階層に進みましょう! 山根さん! 敵さんの進捗はどうです?」
『確認するっす。あー。もう4層をクリアしそうっすね。タイムアタックでは結構な遅れを取ってるっすよ。ただ、ゴールデンメタルゲルモドキの討伐ポイントがあるから、そんなに悲観するほどの差ではないっすね』
「なるほど」と六駆は答えたが、万全に万全を期して戦いに臨むのが六駆スタイル。
『螺旋手刀』で今回も壁をぶち抜いてショートカット。
山根が何も言わないので、これはセーフなのだと彼は勝手に考えている。
ちなみに、基本的に山根は何も言わない事には誰も気付いていない。
中東の笛ばりに面白い事を優先する審判が何も言わないので、削岩機となった六駆は一直線に下の階層までの最短ルートを作った。
古住ダンジョンの梅林軍団から遅れること15分。
チーム莉子も常盤ダンジョンの第4層へと入る。
「うわぁ。これはまた面倒そうなのがいるねー。莉子さんや、情報持ってる?」
「まっかせてー! このいっぱいいるのは、軍隊ピエロ鳥。力は弱いけど、分裂を繰り返すから同時に倒さなくちゃダメなの! 名前の由来は背中の模様がピエロに見えるからだよ! あと、鳥って名前だけど空は飛ばないんだぁ!」
莉子ペディアさん、今日も絶好調である。
「つまり一網打尽にすれば良いワケだ? 山根さん、『大竜砲』ってセーフですか?」
『個人的な見解っすか? それとも、フォーマルな方っすか?』
「じゃあ、後者でお願いします」
『南雲さんがお漏らしするっすね』
南雲は山根のシミュレーションで何度ズボンを穿きかえさせられるのだろうか。
「よし! なら芽衣! 出番だよ!! あの新スキルをお披露目だ! 大丈夫、敵は弱いらしいから!!」
「みみっ! 雑魚が相手ならお任せです!! みみみっ!! 『超幻想・分体身歌劇』!!! みみみみみみみみっ!!」
芽衣が200人に増えた。
詳しいスキルの説明と南雲のリアクションについては、次話に譲ることとする。
コメント
1件
小鳩さんの槍さばき、マジでカッコよすぎました😭💕『十枚乱舞・なで斬り鳳仙花』のコンボ、反射属性の外皮を力技で貫くスタイルが熱すぎる!!それに「死ぬほど嬉しい」って思わず本音が出ちゃう小鳩さん、愛おしすぎるよ…!六駆くんが他力で生還したのも笑ったし、芽衣の新スキル前振りで次回が待ちきれない〜!南雲さんの必死の土下座アイコンタクトも可愛くて、今回も最高でした⋆♡