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「なぁ…傑」
食べかけのアイスを片手に悟が口を開く。神妙な面持ちでじっとこちらを見つめる。
「ん?どうしたんだい?」
「その…いや…」
なんだかその姿はいつもの悟らしくなくて。自信がないように目を逸らして、夏の暑さのせいか頬も火照っている。
「あのさ…お前…す…好きなやつとかいんの…」
「…え?…」
「いやぁその!俺らも年頃じゃん??言うて同級生は硝子ぐらいしかいねーけど…いんのかな…みたいな…!!」
そんなに焦らなくてもいいのに。セミの声が頭に響く。
「…好きな人…ね…」
傑は少しの間黙り込んだ。
「…気になる人なら…いるよ…」
あぁ言ってしまった。気になる人、あくまで気になる人だ。まだ好きな訳では無い。そう自分に言い聞かせて高まる熱を冷ます。
「そ…そうなのか…傑も恋してんだな…」
「恋じゃない!!あくまで…気になるだけだ…」
時間が進んでより暑さが増した気がする。
「さ、悟は、いるのかい?」
「…いる」
そっか。いるんだ。悔しい。羨ましい。口に含んだアイスの味が薄れていく。
「悟のさ…好きな人…どんな人なの?」
悟は目を見開いて私の顔を見つめる。好きな人の好きな人なんて聞いたら辛くなるだけだけど、どうにも気になってしまった。そしてそこで聞けば、諦められるかもしれない。第一、男が男に、恋だなんて。言えるはずもない。気持ちの整理をつけるために言い訳を探す。
「かわいい」
「そっか…」
「一緒にいると…安心する」
「いいな、それ」
「親友」
「…もしかして硝子かい…?いいじゃないか…」
「ちがう」
風が吹く。暑さをひきたてるような暑い風が。悟のサングラスに太陽が反射して、私の髪がなびく。
「そっちじゃなくて…俺が好きなのは、前髪が変な方っ…だから」
この瞬間、時間が止まった気がした。
「はいはい、俺は言ったぞ??次は傑が言えよな」
頭の整理がつかない。これは…その。食べきったアイスの棒を指先でいじりながら混乱した頭を整理しようと心がける。
「私は…その…」
言葉につまる。なんて言ったらいいんだろう。私が好きなのは悟だよとでも?いや、まだ両思いだと決まった訳では無い。そんな、言えるものか。
「なんだよ、言えって…俺も言ったんだから…」
言ってしまおうか、頭がぐるぐるする。
「そうだな…とても綺麗な…瞳を持った人だよ…」
「…そっか…よっぽど綺麗な女の子なんでしょうね!!」
「そして…今隣にいる…」
ふと悟の顔を見ると、暑さのせいとは言いきれないほど赤く染った顔でこちらを見ていた。
「…ちゅーする…??」
「…はっ…!?」
「だって…そういうことだろ…?りょうおもい…」
待ってくれ、でも、俺は、男で…そんな。いいのか?同性を好きになってもいいのだろうか。
「悟は…ちゅー…して欲しいのかい?」
「いやっ…別にそーゆーわけじゃ…」
「…素直に…なってくれるかい?」
ーちゅ…
傑が悟の唇にそっと口付けをする。
「傑からのちゅー…」
「私も男だよ。自分の気持ちに嘘をつくのはやめるよ。」
悟は目を逸らして食べきったはずのアイスの棒を口にする。
「悟…」
そっと悟の耳元に顔を寄せる。
「好きだよ」
赤く染った悟が可愛くて。必死に自分の高鳴る鼓動を抑えてキスした瞬間を。私はきっと忘れない。