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「チュンチュン、チュンチュンです」
爽やかな風の音と、綺麗なアホの声が僕の鼓膜を揺らした。半分夢の中に意識を残しながらも僕は目を覚ました。
「チューチューしてくださいです」
フィクションの世界では朝起こしに来るのは母親か幼馴染だと相場は決まっているものである。ただ、現実と言うのはよっぽど奇なりと言うもので、本性を知らなければうっとりしてしまうほど整った顔を惜しむことなく見せつけてくる白い髪が自慢の僕の元ストーカーである。
最近はこの顔を見ないと夢の中にある半分が現実に戻ってこなくなってしまった。
「おはよう真絹」
「おはようございます!!昨日は可愛がってくださってありがとうございました!!」
「まるで僕がお前に手を出したみたいに言うな」
「いつ手を出してくださってもいいんですよ♡朝チュンどんとこいってもんです!!」
胸を叩く代わりなのか、白魚の様な指で自分の胸元をグイっと引っ張って美しい白の双丘を見せつけてくる………朝一番にしては刺激的すぎる。夢から完全に帰ってきた意識君がさらに覚醒してしまうではないか。
「何せ私は身も心もついでに人権も全て詠史さんに捧げた女ですから」
ついでで人権を捧げるな。
「全部まとめてお返しするわ」
僕の名前は和倉詠史、 手を出したら大切なものをまとめて吸いつくされそうな元ストーカーに適量を大きく超えた純愛を注がれてしまっている男だ。
「返品不可になっております♡」
「そもそも頼んでねーよ」
この物語は、そんな僕と元ストーカー女、初川真絹の日常を描いたものである。