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2022年9月4日。暗い部屋の中テレビの光だけが彼を照らしていた。ただただ永遠に画面を見続けている彼の目に臨時速報の文字が映る。
「速報。日本政府、世界政府からの脱退を発表。全ての同盟国との条約を破棄しホニャ国との同盟を結ぶ。 2022年9月4日午後9時30分。首相官邸より本日2022年9月4日午後9時30分をもって世界政府からの脱退、および同盟国との条約を破棄し、同じく2022年9月4日午後9時30分より日本近隣国であるホニャ国との同盟を開始するとの声明を発表。ホニャ国は2022年7月5日に世界政府を脱退。同日に同盟国との条約を破棄している。今回の声明を受けて世界政府および各国政府からは非難の声明が発表」
この日本の突然の声明は世界中を驚かせた。
「あ、もう日本の総理大臣、声明を発表してるよ~。さっき会談したばっかりなのにね~」
「確かに驚愕だな。日本の政治は対応がとにかく遅いと思っていたが意外だな」
「それだけ抜けたかったのだろう……」
「まぁ僕たちにはどうでもいいことだよね。協力をしてもらえるのならね~」
「そうだな、協力してもらわねば勝手には出来ないからな」
「秩序が大事……」
「それにしても、やっぱり日本は最高だったね!いい顔をしてたよ~」
「うむ。ジダイ、次の企画は考えているのか?」
「もちろんだよ!次はねぇ~」
この、ホニャ国と日本国の裏で密約を結んでいるこの3人組の名はモパン。リーダーのアルパ、企画担当のジダイ、撮影担当のイゴエの3人でやっている宇宙人ドッキリ系動画配信者である。彼らはこれまでいくつもの星にやって来て、その国の代表と自身の技術提供と引き換えに好き放題させてもらえるように密約を結び、国民たちをドッキリにかけている。そんな彼らがついに地球にやって来てしまい、ホニャ国、そして日本と標的にされてしまったのである……。
「つまりね、日本人ってのは上下関係ってのを重んじる種族なんだよね。だからもし、ある日タメ語しか話せなくなったら彼らやその周囲はどんな反応をするのかな~ってね~!」
「なるほど、強制タメ語ドッキリか……。いいな。それ、採用だ」
「異議なし……」
「よっしゃ~。じゃあ早速準備しようか~」
「場所は何処だ?」
「このドッキリを最大限生かすには、より上下関係に厳しい場所が適切だな……」
「なら、田舎って所がいいらしいよ~「やんきぃ」って言う上下関係過激派が多く住んでるんだってさ~」
「なるほど、それは良いな。では、場所はこの「T市」と言うところにするか。情報によれば程よく田舎らしい」
「了解……」
「わかったよぉ~」
「では準備開始だ!」
その日の夜。トンキ前にて。
「で、俺が一発蹴ったらさ、そいつそのままのびやがったんだぜ?笑えるだろ」
「マジっすか!?ランタさんマジパネェっすね!」
「ランタさんの蹴り、マジで痛いっすもん!」
「だろ?俺の蹴りマジつえぇからよ~。そうだ、お前蹴らせろよ?」
「え、えぇ勘弁してくださいよランタさん~」
「あ?ナマ言ってんじゃねぇぞ。俺が蹴らせろって言ったら返事はハイだろがよ」
「す、すみません!ランタさん、蹴ってください!」
「おう、仕方ねぇなぁ……おら!」
「イッテェェ!」
「ははは。もういいや、飽きた。じゃあな」
直後にバイクのエンジンがかかる音。そして彼は走って行った。
「お疲れ様です!」
「お疲れさまでした!」
「……」
「はぁ~。マジでランタさんこえ~わ……。レント君大丈夫?」
「あ、あぁ。大丈夫。あの人の蹴り別に痛くないし……」
「え、まじ?」
「まじまじ。それでもとりあえずリアクションしとくとさ、あの人満足して帰るだろ?」
「レント君すっげぇ~!」
「まぁな!あの人の代が卒業したらいよいよ俺らの時代だ!それまで我慢しようぜ!」
「うん!……ん?あれなんだ?」
「え?なんかあるんか?」
「ほらあれだって……ってあれ?さっきまであそこの空になんか光ってるのがあったんだよ」
「え、そんなもんUFOじゃん!ミツルが写真撮ってたらニュースになってたかもしれ……なぁ、なんかさっきより明るくないか?」
「う、うん。確かに……。まさか……」
明るく照らされた二人は恐る恐る自身の頭上を見上げる。
「あ……」
そう言い残して、彼らはその場から消えた。
「……ん?ってここ何処だ!?んっ動かない!くそっ……ってそうだ!ミツル!?」
謎の場所で体を拘束されて身動きが取れないレントは目だけで必死にミツルの姿を探す。しかしどこにも見当たらない。そんな時声が聞こえる。
「こんにちは、飯田レント君」
突然フルネームを言われて恐怖に陥るレント。しかしそれを誤魔化すために大声を出す。
「っだ誰だ!なんで俺の名前を知ってるんだ!?それにミツルは何処だ!?無事なのか!おい!」
「そんなに大声出さないでよ~。天道ミツル君は無事さ。でも、もうこの船にはいないからそんな大声を出しても聞こえないよ~?」
「なっ……」
謎の声の主にミツルの安否の確認のために大声を出していたことまで見抜かれたレントは、一瞬息を飲んでしまう。
「はい、もう落ち着いたね。大丈夫君もすぐに帰れるから~」
「ど、どういうことだ!俺に何をしようってんだ?」
「ふふふ、それを言ってもしょうがないよ。だって君はこの記憶を無くすんだから~」
謎の声の主がそう話すと同時にレントの意識が薄れていく。
「それじゃあ、人体改造始めよっか~」
それは意識が薄れゆく中、レントが最後に聞いた言葉だった。
「……おーい、君起きなさい!」
「うわぁ!」
レントは目を覚ます。そこには同じように目を覚ましたミツルの姿と、そんな彼らを補導しに来た警察の姿があった。
「あれ?俺何してたっけ?」
「ちょっとちょっとなんだい君たち?違法薬物でトリップでもしてたのかい?」
警察は自分がさっきまで何をしていたのかがわからないレントを怪しむ。
「え、薬物?してないと……ってそんなもんするかよ!逃げるぞミツル!」
「う、うん!警察さん僕たち悪い子じゃないですから!マジで!」
そう言い残し彼らは警察から走って逃げる。警察はただの夜更かし少年だと思い、追っては来なかった。
そしてかなり離れたところまで走り疲れ切った彼らは、地面にへたり込む。
「も、もう走れねぇ……」
「だねぇ……。それにしてもレント君も何してたか忘れてたの?」
「え、ミツルもかよ。ランタ先輩と別れたところまでは覚えているんだけどな……」
「僕も同じだよ。でも、あれから大体4時間ぐらい経ってるけど何も思い出せない……」
「まぁとりあえず今日はもう遅いし家に帰ろう。親も心配してるだろうし」
「そうだね、それじゃまた明日学校で!」
「おう!」
そうして彼らはそれぞれ自身の家に帰った。奇妙な経験をした彼らだが、不思議なことに家に帰ると何も違和感を感じなくなっていた。
そして次の日。昨日のことなど何も気にすることも無く、いつも通りミツルと一緒に登校していた。
「よう、お前ら」
高校の正門近くでランタ先輩と出会う。そして彼らはいつも通り挨拶をした。
「よう、ランタ!」
「おはようランタ君!」
彼らがランタに挨拶をするとなぜかランタは一瞬固まり、そして激昂した。
「おい、てめぇら。なにタメ使ってんだボケェ!」
「は?なんで怒ってんだよ!」
「そうだよ、どうしたん?」
「て、てめぇら舐めてんのか!自分が何言ってんのかわかってんのか!」
しかし、二人はなぜランタが怒っているのか全く分からなかった。しかし、自分が何を言っていたのかを落ち着いて思い出す。そして、自分が何を言ってしまったのかに気付く。
「悪かったわ、ごめん!(す、すいませんでした!)」
「いやぁ、ごめんねぇ!(本当にごめんなさい!)」
だが、彼らが思っている言葉はランタには聞こえていなかった。
「もうゆるさねぇ!てめぇらシメてやる!」
激昂したランタが容赦なく、彼らに襲い掛かる。
――やべぇ、このままじゃやられる。せめてミツルだけでも守らねぇと!もうやるしかねぇ!
そして覚悟を決めたレントはミツルに逃げるように叫びながら捨て身覚悟の右ストレートを放つ。
「ミツル、逃げろ!」
「レント君!逃げて!」
その瞬間2つの拳がランタの顔面を潰して吹き飛ばす。
「あ、あれ?」
「ど、どうして?」
吹き飛んで地面で伸びているランタを見て、呆然とする2人。そして何が起きたのかを理解するとお互いに大爆笑してルンルンで学校に向かったのだった。
それから数分後。顔面に2つの青あざをもって地面に突っ伏すランタを見て声をかける人物がいた。
「お、おい!ランタ大丈夫か?」
「ん、ん……。あ、デンジ……。俺は何をしていたんだ?……あ、思い出したぜ……」
そしてランタがデンジに自身の身に何が起きたのかを思い出して説明しようとしたその時、顔面にとてつもない衝撃がやって来る。
「先輩にタメ使ってんじゃねぇ!ボケが!」
――な、なんでぇ?……。
薄れゆくランタの意識の中で彼はなぜ殴られたのかもわからぬまま、再び記憶を失った。
その後、彼らの高校では下剋上が起きて1年の二人組が頂点に君臨することになる。
そしてその夜。レントはいつも通り寝ようとしたその時、窓から激しい光が入り込みレントを包む。
「ん、なんだぁ?え、動かねぇ」
気が付くとレントは見知らぬ場所で体を固定されていた。そしてレントがじたばたしていると見知らぬ声が聞こえてくる。
「やぁ飯田レント君」
謎の声にびっくりするレント。
「だ、誰だお前!なんで俺の名前を!何をする気だ!?」
「ははは、安心してよ。それにこれから記憶が無くなるんだから説明しても無駄だって言ったでしょ~?」
「どういうことだ……」
謎の声の主が話した後、レントの意識はどんどんと薄れていく。
「面白かったよ、ありがとうね。それじゃ回復手術始めるよ~」
それは意識が薄れゆく中、レントが最後に聞いた言葉だった。
「うわぁ!」
勢いよく体を起こすレント。そこはいつもの自分の部屋だった。
「あれ、俺って何してたっけ?……まぁいいか。寝よ。」
モパンのタメ語ドッキリ、これにて終了!
「はい、おっけ~で~す!」
「撮影終了……」
「今日の撮影も完璧だったな」
「やっぱり日本人ってのは良い反応をしてくれるよ~!」
「彼ら、面白い。他にも面白い奴、いるかもしれん……」
「よし、これからのドッキリはこのT市をメインにやって行こう」
モパンの日本初ドッキリから少し時が流れ、2022年9月15日。ホニャ国、某所。
「諸君!本日は集まってくれてありがとう。今一度聞いてほしい。今この国は国民を守ろうとしていない。なぜか!?大統領が我々国民を売ったからだ!誰に売ったのだ!?それはこの地球のどこの国にも属していない宇宙からの侵略者、モパンにだ!彼らは大統領と密約を交わして国民を自由に扱うことを許されている!それでいいのか!?自分の大切な人が宇宙人の手によって危害を加えられて!本当にいいのか!?大統領が国民を守らなくて!怒れ、諸君!我々は奴らに怒らねばならない!しかし、思っているだけでは何も変えることは出来ない!だから私は動く!戦わねばならないのだ!そのために只今をもって反ホニャ国組織、ホニャイヤダを発足するッ!諸君!同志らの力をこのゼコウに貸してほしい!」
「「うぉぉぉぉぉぉ!」」
「やるぞぉ!」
「「うぉぉぉぉぉぉ!」」
地響きのような同志たちの声が共鳴する。彼らの熱狂は凄まじいものがある。
「始まったわね、ゼンコウ。いえ、ゼコウ」
「あぁ、君のおかげだ。君の力が無ければ色んな所から支援を受けられなかった。本当にありがとう」
「いいわよ、そんな事。それでこれからどうするの」
「これからはホニャ国内でまずは国民の意識を変えるところから初めていくさ。そして君にお願いがある」
「何かしら?」
「君の故郷、日本に行って現地でモパンの動きに警戒してほしいんだ。モパンは次は日本と言っていた。恐らく日本もここと同じ状況になるのだろう。俺は日本にもルーツがある。だがそれ以上にあんな奴らに人が苦しめられるのは見たくないんだ……」
「……わかったわ。その代わりホニャ国の事、任せたわよ」
「ありがとう、フミネ……」
そして、さらに時は過ぎ2025年4月4日。日本国T市。
「よし、では始めるぞ」
「今回は特に派手だよね~。なんせホニャ国の戦闘機を日本までジャックして花火を打ちまくるドッキリだもんね~」
「画力が、あるな……」
「あぁ、みんな準備は出来ているか?」
「問題ない……」
「いつでもいいよぉ~」
「よし、ではドッキリスタートだ」
そして、彼らが遠隔ジャックした戦闘機は轟音を響かせながら目標のT市高層ビルへと向かう。
「いよいよ、目標の高層ビル上空まで~5秒前4、3、2、1!」
「よし、ジダイ花火フレア発射だ!」
「花火フレア発射ぁ~!……あ?」
直後戦闘機より爆弾が投下。目標の高層ビルの一部を吹き飛ばす。
「これはまずいぞ!ドッキリ失敗だ!負傷者、損傷状況を直ちに確認せよ!」
「了解……。損傷状況確認。高層ビルの1室のみ崩壊を確認。それ以外に被害なし……」
「……」
「ジダイ!負傷者はどうなんだ!」
「え、あ……」
「いいかジダイ。失敗は反省して同じ過ちを繰り返さぬように努力をしろ」
「はっ……」
「お前が今するべきことはなんだ!ジダイ!」
「負傷者確認!この被害による負傷者は0名だよ!」
「そうだ、それでいいんだ」
「おい、誰かが現場に接近している……」
「なに!?」
「どうやら、家主のようだ……」
「……絶対悲しんでいるよね。僕のミスだ。謝りに行ってくるよ……」
「いや、まて……。あいつ、笑っている……」
「えぇぇぇぇぇぇ!?」
その後、自身のミスで部屋を破壊したことを深く反省した彼らは、費用を全てモパン持ちでリフォーム業者を手配したのだった。
そして、同時刻ホニャ国。
「ゼコウ!大変よ!」
「どうしたフミネ!?」
突然のフミネからの通信。フミネはゆっくりとゼコウに伝える。
「日本のT市にて、モパンによってビルが爆破されたわ……」
「な……なんだと……。守れなかったのか……」
ゼコウの体は怒りで震えていた。
――モパン……貴様らを絶対に許さんッ!
その後、ゼコウをはじめとするホニャイヤダ本隊は日本へ活動拠点を移すことになったのであった。
これにて第8話、おしまい。